アメリカのベストセラー・ランキング

4月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. AS TIME GOES BY    New!

Mary Higgins Clark メアリ・ヒギンズ・クラーク

アルツハイマー病の夫を殺害した容疑で妻が逮捕される。妻は弁護士がすすめる司法取引を拒み、法廷でみずからの無実を証明しようとする。裁判の模様を伝えるリポーターは、幼いころに生き別れになった母をずっと捜しつづけていた。やがてふたりの物語が重なり合う。

2. THE BEAST    New!

J. R. Ward J・R・ウォード

〈黒き剣兄弟団〉に属するヴァンパイアの戦士たちの生きざまを描くパラノーマル・ロマンス、ブラック・ダガー・ブラザーフッド・シリーズの第14作。第2作で主人公をつとめたレイジの苦悩が描かれる。

3. THE NEST    Down

Cynthia D’Aprix Sweeney シンシア・ダプリ・スウィーニー

ニューヨークに暮らすプラム家の4人きょうだいには、末妹のメロディが40歳になったときに受け取れる多額の信託財産があった。だが長兄のレオが交通事故を起こし、その大半が失われてしまう。長年反目しあい、それぞれに問題を抱えた4人の運命は……。コピーライター、エッセイストとして活躍してきた著者の小説デビュー作。

4. FOOL ME ONCE    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

元特殊部隊パイロットのマヤは、ベビーモニターで留守宅の娘の様子を確認中、ありえない光景を目にする。そこには娘を抱きあげる夫の姿があった。2週間前、強盗に襲われて死んだはずの夫がなぜ……。マイロン・ボライター・シリーズの著者による、スタンドアローンの新作スリラー。

5. THE 14TH COLONY    New!

Steve Berry スティーブ・ベリー

アメリカ合衆国司法省の元工作員が活躍するコットン・マローン・シリーズの第11作。アメリカへの復讐をもくろむ元KGBの男に、マローンが立ち向かう。カナダを侵略してアメリカの14番目の植民地にしようとした秘密結社とは。

6. MILLER’S VALLEY    New!

Anna Quindlen アナ・クィンドレン

ミラーの谷で代々農園を営むミラー家。政府は治水のためにダムの建造計画を進めるが、実現すれば農園は水没してしまう。ミラー家の娘ミミの目を通して、家族の絆と反目、葛藤、故郷の意味を描く。

7. FAMILY JEWELS    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第37作。今度のクライアントは裕福な婦人で、しつこく迫ってくる男を追い払うよう依頼する。ストーンが依頼どおりにしたところ、クライアントは命を狙われる。

8. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。小学館から『ナイチンゲール(上・下)』(加藤洋子訳)として邦訳刊行予定。

9. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

10. THE SUMMER BEFORE THE WAR    Down

Helen Simonson ヘレン・サイモンスン

1914年、イーストサセックス州の田舎町に新任のラテン語教師としてやってきたベアトリスは、狭い人間関係や偏見と格闘しながらも居場所を見つけていく。だが、のどかな町の生活にも戦争が暗い影を落としはじめていた。21カ国で刊行されたデビュー作“MAJOR PETTIGREW’S LAST STAND”の著者が6年ぶりに発表したヒストリカル・フィクション。

【まとめ】

新たに5作がトップテン入りを果たしました。1位はサスペンスの女王ことメアリ・H・クラークの新作。御年88歳ですが、さすがの人気です。2位のブラック・ダガー・ブラザーフッド・シリーズの邦訳は第5作『情熱の炎に抱かれて』までが二見書房から、5位のコットン・マローン・シリーズの邦訳は第1作『テンプル騎士団の遺産』のみがエンターブレインから刊行されています。6位のクィンドレンはピューリッツァー賞を受賞したコラムニスト兼作家で、新潮社から邦訳が出た『母の眠り』はメリル・ストリープとレニー・ゼルウィガーの共演で映画化されました。7位のウッズは多作で知られ、1月にシリーズ第36作を出したばかりですが、根強い人気を誇っています。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。5月にハヤカワ文庫NVから『黄金の時間』が刊行される予定です。著者のトッド・モスはアメリカの元国務次官補代理。アフリカのマリを舞台にした異色のスパイ・スリラーです。