アメリカのベストセラー・ランキング
5月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. CAMINO WINDS Stay
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。
- 2. WHERE THE CRAWDADS SING Up
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 3. IF IT BLEEDS Down
Stephen King スティーヴン・キング
巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。
- 4. THE 20TH VICTIM New!
James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ
LA、シカゴ、サンフランシスコの3都市でドラッグ・ディーラーを狙う狙撃事件が頻発し、背後にドラッグ撲滅を目指す自警団の存在が見え隠れする。狙撃犯は殺人鬼か、それとも英雄か、死傷者が増えるにつれ国中が沸き返る。女性4人が活躍するウィメンズ・マーダー・クラブ・シリーズの第20作。
- 5. ALL ADULTS HERE New!
Emma Straub エマ・ストラウブ
アストリッドは3人の子供たちを育てあげ、子供たちは大人になってそれぞれの人生を歩んでいるのだが、身内に言えない秘密はだれにでもあるものだ。ある日、好奇心の強すぎる孫を預かったばかりに、水面下の問題があれもこれも……。機知とユーモアで語られた、ある家族の物語。
6. WALK THE WIRE Down
David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ
“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第6作。石油ブームに沸くノースダコタの町で起きた殺人事件。被害者は若い女性で、空地に棄てられていた遺体には解剖の痕がのこされていた。デッカーとジェイミソンは調査にあたるが、事件は地域一帯で起こりつつあった不穏な出来事のほんの始まりでしかなかった。
- 7. BIG SUMMER New!
Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー
ぽっちゃり女子のインスタグラマーとして人気を博しはじめたダフネのもとへ、昔絶交した元親友のドルーが現れ、こともあろうに花嫁付添人になってくれと言う。ダフネは屈辱の思い出を噛み締めるものの、海辺の豪邸やハンサムな独身男性という誘い文句に心が揺れ動く。
8. THE BOOK OF LONGINGS Down
Sue Monk Kidd スー・モンク・キッド
1世紀のガリラヤ地方。裕福な家に生まれ、知的探求心の強い娘に育ったアナは、周囲に隠れて抑圧された女性たちの物語を書いていた。14歳のアナに家族が望んだのは年上の有力者に嫁ぐことのみだったが、ある日市場で18歳のイエスと出会い、人生が一変する。全米ベストセラー小説『リリィ、はちみつ色の夏』の作者が、歴史上の人物を題材に描く。
- 9. HELLO, SUMMER New!
Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ
大都市で夢破れたジャーナリストのコンリーは、フロリダの故郷へ帰り、実家が経営する地元紙のゴシップ欄を担当する。ある夜、町の有名議員の不審な事故死を目撃して調査に乗り出すが、探れば探るほど事態はきな臭くなり、小さな町は騒然としはじめる。
10. AMERICAN DIRT Down
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ
アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。
【まとめ】
今週あらたにランクインしたのは4作でした。4位のパタースンとペトロの共著は、2002年からつづいているシリーズで、邦訳では1作目『1番目に死がありき』と2作目『チャンスは2度めぐる』(いずれも羽田詩津子訳 角川文庫)が出ています。そして、グリシャム、オーエンズ、キングが上位を占めるなか、食いこんできた5位、7位、9位はいずれもビーチで読むのにぴったりと言われる肩の凝らない作品で、3名ともサマー・ノベルの女王として評判の高い作家です。ベストセラー・ランキングもいよいよ夏模様になった感がありますね。1位は先週にひきつづきグリシャムで、オーエンズが驚異の持続力を見せています。
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唐木田みゆき(からきだ みゆき)
翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』など。
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