アメリカのベストセラー・ランキング

6月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. END OF WATCH    New!

Stephen King スティーヴン・キング

退職刑事ビル・ホッジズを主人公とした3部作の最終作。助手のホリーとともに探偵社を営むホッジズは、母親が四肢麻痺の娘を殺して自殺した事件に疑念を抱く。その娘は7年前の“ミスター・メルセデス”事件で重傷を負った被害者のひとりだった。

2. THE GIRL ON THE TRAIN    Up

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

3. THE EMPEROR’S REVENGE    Down

Clive Cussler and Boyd Morrison クライブ・カッスラー、ボイド・モリソン

オレゴン・ファイル・シリーズ第11作。モナコグランプリの最中に銀行が襲われ、秘密工作船オレゴン号の活動資金が奪われる。船長のファン・カブリーヨと仲間たちは犯人を追うが、やがて世界を揺るがす陰謀が明らかになる。ナポレオンのロシア侵攻の際に盗まれた文書とは。

4. AFTER YOU    Up

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

2012年発表(邦訳は2015年)のベストセラー『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』の続編。前作は半年限定で介護職についたルイーザと、四肢麻痺の青年実業家ウィルとの物語で、今回はその後、主人公ルーがもがきながら自分の道を探そうとする姿を描く。

5. BEFORE THE FALL    Down

Noah Hawley ノア・ホーリー

ある夏の夜、11人の男女を乗せたプライベートジェット機がマサチューセッツ州沖の島からニューヨークをめざして飛び立ち、16分後に墜落する。生存者は画家と男児のふたりだけだった。犠牲者の素性や境遇がわかるにつれ、事故は仕組まれたものではないかという疑惑が深まっていく。

6. THE HOUSE OF SECRETS    New!

Brad Meltzer and Tod Goldberg ブラッド・メルツァー、トッド・ゴールドバーグ

自動車事故で負傷し入院中のヘイゼルのもとにFBI捜査官が訪ねてくる。同じ事故で死亡した彼女の父が、死体で発見されたある男と死の直前に会っていたという。男の死体の胸には、米独立戦争の将軍ベネディクト・アーノルドのものとされる貴重な本が隠されていた。

7. DISHONORABLE INTENTIONS    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第38作。女性脚本家ガラと恋仲になったバリントンだが、ロシアンマフィアとのつながりを持つ彼女の元夫につけねらわれることになる。

8. ALL SUMMER LONG    Down

Dorothea Benton Frank ドロシア・ベントン・フランク

有名インテリアデザイナーのオリヴィアと大学教授のニコラス。ふたりは正反対の性格のように見えて、ニューヨークで14年間も夫婦として円満に暮らしていた。が、ニコラスが引退して田舎暮らしをはじめることを望んだために、ふたりのあいだに亀裂が生じる。

9. 15TH AFFAIR    Down

James Patterson & Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・パエトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第15弾。リンジー・ボクサーは結婚して母となり、幸せな家庭生活を送っている。ところが、ダウンタウンの高級ホテルの殺人現場からCIAと関わりのあるブロンドの美女が消えたことで、生活がほころびはじめ、彼女は女性殺人捜査クラブに助けを求める。

10. THE LAST MILE    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

20年前に自分の両親を殺害して服役していた死刑囚が、べつの人物の自供によって刑の執行を免れた。超記憶症候群のため驚異的な記憶力を持つデッカー刑事は、FBIの特別チームの一員として真相究明に乗りだす。シリーズ第2作。

【まとめ】

1位、6位、7位に新作が登場しました。初登場1位に輝いたのは“MR. MERCEDES”、“FINDERS KEEPERS”に続く3部作の完結編。キング初のハードボイルドとして話題を集め、2015年のエドガー賞を受賞したシリーズ第1作は『ミスター・メルセデス』として文藝春秋より今秋の邦訳刊行が予定されています。6位は『公文書館員ビーチャー』や『運命の書』等で知られるメルツァーがゴールドバーグとの共著で送る新シリーズの第1弾とのこと。またベストテン外では、映画化もされた代表作『ため息つかせて』などで知られる黒人女性作家テリー・マクミランの“I ALMOST FORGOT ABOUT YOU”が12位に、ガーナ系アメリカ人作家ヤア・ジャシ(Yaa Gyasi)のデビュー作“HOMEGOING”が15位に新たにランクインしています。

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書はバリー・ライガ『さよなら、シリアルキラー』、『殺人者たちの王』、『ラスト・ウィンター・マーダー』(いずれも創元推理文庫)、エミリー・セントジョン・マンデル『ステーション・イレブン』(小学館文庫)など。サッカー観戦が好きなのですが、目下開催中のヨーロッパ選手権(EURO)を連日朝6時ごろまで見ているため、寝不足ぎみの日々。それでも、ドイツやスペインといった強豪はもちろん、アップセットを狙う弱小国(失礼)ウェールズやアイスランドの奮闘からも目が離せません。