アメリカのベストセラー・ランキング

8月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE UNDERGROUND RAILROAD    Up

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

2. INSIDIOUS    New!

Catherine Coulter キャサリン・コールター

ロマンチック・スリラー、FBIシリーズの第20作。世界的なコングロマリットの女性経営者が命を狙われ、サビッチとシャーロックは捜査に乗りだした。また一方で、サビッチはハリウッド女優連続殺人事件の捜査協力のため、特別捜査官カムをロサンゼルスへ送りこむ。

3. TRULY MADLY GUILTY    Stay

Liane Moriarty リアーン・モリアーティ

多忙ながらも充実した生活を送っていたサムとクレメンタインの夫婦は、友人に誘われてバーベキューに参加する。が、2か月後には、その誘いに応じたことをひどく後悔していた。バーベキューの際に何があったのか。彼らの罪悪感の正体が少しずつ明かされていく。

4. BULLSEYE    Down

James Patterson and Michael Ledwidge ジェイムズ・パタースン、マイクル・レドウィッジ

ニューヨーク市警刑事マイケル・ベネット・シリーズの第9作。アメリカとロシアの緊張関係が高まるなか、両国大統領がマンハッタンの国連本部で会談することに。だが、アメリカ大統領は夫婦二人組の殺し屋に命を狙われていた。はたして、ベネットは暗殺を阻止できるのか。

5. THREE SISTERS, THREE QUEENS    New!

Philippa Gregory フィリッパ・グレゴリー

『ブーリン家の姉妹』で知られるテューダー朝シリーズの第8作。ヘンリー8世の姉でありスコットランド王妃となるマーガレットを中心に、妹でフランス王妃となるメアリー、ヘンリーの最初の妻であるイングランド王妃キャサリン・オブ・アラゴンを加えたテューダー家の三人の女性たちを描く。

6. THE WOMAN IN CABIN 10    Stay

Ruth Ware ルース・ウェア

小型客船で北海をイギリスからノルウェーへ向かう途中、旅行雑誌の記者ローラは、深夜に人が海に落ちたような音を聞く。隣の10号室の女がいなくなっていたが、姿を見かけたのはローラだけで、船員も乗客も全員が10号室は空室だったと言う。自分を疑いながらも、ローラは独自に調査をはじめる。

7. SWEET TOMORROWS    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シーダー・コーヴ・シリーズのスピンオフ作品であるローズ・ハーバー・シリーズの第5作にして完結編。ジョー=マリーが女主人をつとめる海辺の町のB&Bに泊まりにやってきた教師のメアリー。心の傷を抱えてシーダー・コーヴに家を探しにきた彼女は、家主である孤独な男ニックと出会い、やがて距離を縮めていく。

8. THE BLACK WIDOW    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第16作。パリ・マレ地区のユダヤ人街でISISによる大規模な爆弾テロが発生。フランス政府より協力要請を受けたアロンは、次なる攻撃を阻止すべく、イスラエル人の女性医師をスパイとしてISISに潜入させる。

9. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスより邦訳『すべての見えない光』が近日刊行予定。

10. THE GIRLS    Down

Emma Cline エマ・クライン

1969年の夏、カリフォルニアの孤独な14歳の少女イーヴィは、自由奔放な19歳のスザンヌと出会い、ヒッピーのグループに強く惹かれていく。だが、ようやく見つけたその居場所は暴力的なカルト集団だった。

【まとめ】

今週は2作が新たにランクインしました。2位のキャサリン・コールターのFBI シリーズは、第16作(邦訳では第13作)の『代償』(二見書房)まで刊行ずみ。5位のフィリッパ・グレゴリーのテューダー朝シリーズは、ブーリン家の姉妹シリーズ(集英社)として4作品が邦訳されています。トップテン外では、13位にロマンス作家スーザン・ウィッグスの“FAMILY TREE”、15位には本作品がデビュー作だというB・A・パリスのスリラー“BEHIND CLOSED DOORS”、16位には児童文学で数々の賞を獲得してきたジャクリーン・ウッドソンによる小説“ANOTHER BROOKLYN”が登場しています。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)、『世界のEMOJIへ: 絵文字の成り立ちとグローバルな展開』(Amazon Kindle Singles)など。