アメリカのベストセラー・ランキング

9月4日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE UNDERGROUND RAILROAD    Stay

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

2. STING    New!

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

殺し屋のショーが生きたままジョーディーを拉致したのは彼女の兄が隠した3千万ドルが目的だった。だが、兄の元ボスやFBIもまた、同じものを追っていた。共通の敵を出し抜いて生き延びるため、2人は牽制しあいながらも寝食を共にし、たがいの存在に頼ることを余儀なくされる。ロマンティック・サスペンスのヒット・メイカーによる最新刊。

3. CURIOUS MINDS    New!

Janet Evanovich and Phoef Sutton ジャネット・イヴァノヴィッチ、フェフ・サットン

ハーバード卒のテキサス娘ライリー・ムーンは、メガバンクのアナリストという夢に描いたとおりの職を得る。ところが初仕事で任されたのは、社会常識ゼロのハンサムな大富豪エマーソン・ナイトのお守り役。おかしなコンビの行くところ、巨額の金が絡む陰謀が次々と降りかかってくることに。ムーン&ナイトの新シリーズ第1作。

4. THE WOMAN IN CABIN 10    Up

Ruth Ware ルース・ウェア

小型客船で北海をイギリスからノルウェーへ向かう途中、旅行雑誌の記者ローラは、深夜に人が海に落ちたような音を聞く。隣の10号室の女がいなくなっていたが、姿を見かけたのはローラだけで、船員も乗客も全員が10号室は空室だったと言う。自分を疑いながらも、ローラは独自に調査をはじめる。

5. TRULY MADLY GUILTY    Down

Liane Moriarty リアーン・モリアーティ

多忙ながらも充実した生活を送っていたサムとクレメンタインの夫婦は、友人に誘われてバーベキューに参加する。が、2か月後には、その誘いに応じたことをひどく後悔していた。バーベキューの際に何があったのか。彼らの罪悪感の正体が少しずつ明かされていく。

6. DAMAGED    New!

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

《女性だけの弁護士事務所ロザート・アンド・アソシエイツ》シリーズ第15作。失語症のハンデを抱える5年生のパトリックは、学校の補助教員に危害をくわえたとして訴訟を起こされる。弁護にあたるメアリー・ディナンツィオは、少年の葛藤に深く寄り添いながら正義を求めていく。

7. BULLSEYE    Down

James Patterson and Michael Ledwidge ジェイムズ・パタースン、マイクル・レドウィッジ

ニューヨーク市警刑事マイケル・ベネット・シリーズの第9作。アメリカとロシアの緊張関係が高まるなか、両国大統領がマンハッタンの国連本部で会談することに。だが、アメリカ大統領は夫婦二人組の殺し屋に命を狙われていた。はたして、ベネットは暗殺を阻止できるのか。

8. INSIDIOUS    Down

Catherine Coulter キャサリン・コールター

ロマンチック・スリラー、FBIシリーズの第20作。世界的なコングロマリットの女性経営者が命を狙われ、サビッチとシャーロックは捜査に乗りだした。また一方で、サビッチはハリウッド女優連続殺人事件の捜査協力のため、特別捜査官カムをロサンゼルスへ送りこむ。

9. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスより、8月26日に邦訳『すべての見えない光』(藤井光訳)が刊行。

10. THE BLACK WIDOW    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第16作。パリ・マレ地区のユダヤ人街でISISによる大規模な爆弾テロが発生。フランス政府より協力要請を受けたアロンは、次なる攻撃を阻止すべく、イスラエル人の女性医師をスパイとしてISISに潜入させる。

【まとめ】

2位、3位、6位と、3つの新作がランクインしました。2位のサンドラ・ブラウンは、ロマンティック・サスペンスの代表的作家として各社から多数の邦訳が出され、集英社文庫『さまよう記憶』が最新刊です。3位に入ったイヴァノヴィッチと「ボストンリーガル」の脚本家フェフ・サットンは、昨年ペイストリー・シェフのリジーと相棒ディーゼルのお宝ハンター・シリーズ3作目で初タッグを組みましたが、今回は新シリーズを打ち出しました。イヴァノヴィッチの邦訳はステファニー・プラム・シリーズ番外編の『勝手に来やがれ』まで出ています。6位は《女性だけの弁護士事務所ロザート・アンド・アソシエイツ》シリーズとして7作目『代理弁護』まで邦訳がありますが、本国では12作目で“Rosato & Associates”から“Rosato & DiNunzio”にシリーズ名が切り替わりました。そして、ランク外では15位にグレアム・ムーアの“THE LAST DAYS OF NIGHT”が登場しています。2010年“THE SHERLOCKIAN”で小説デビューと同時にベストセラー入りし、2015年アカデミー賞脚色賞を「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」で受賞。小説2作目の今回はライバルだった2人の発明家エジソンとウェスティングハウスの争いを描き、すでにエディ・レッドメイン主演で映画化も決定しているようです。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪読書会の世話人の1人。訳書にルッカ『逸脱者』など。

8月26日(金)の大阪『虚構の男』読書会は無事終了いたしました。ご参加いただいた皆さま、楽しいコメントや鋭いコメントの数々をありがとうございました。9月4日(日)は神戸『夜中に犬に起こった奇妙な事件』読書会の日です。こちらも大勢の方にお楽しみいただけますように。