アメリカのベストセラー・ランキング

10月30日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. SMALL GREAT THINGS    New!

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

2. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

3. VINCE FLYNN: ORDER TO KILL    New!

Kyle Mills カイル・ミルズ

テロリストの手から核兵器を守るべく奔走していたCIA諜報員ミッチ・ラップは、中東を凌駕するほどの破壊的な目論見がロシアで進行していると気づき、ISISのリクルーターを装ってモスクワに潜入する。ミッチ・ラップ・シリーズの第15作。原作者ヴィンス・フリンが他界し、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいる。

4. COMMONWEALTH    Down

Ann Patchett アン・パチェット

1960年代のロサンゼルスにはじまる、半世紀にわたる物語。バートは幼い子供3人と身重の妻がいる家に帰る気になれず、ほとんど見も知らぬ他人の娘の洗礼を祝うパーティに紛れこむ。そこでバートは娘の母親のベヴァリーにひと目で心を奪われてしまう。突然の出会いはふたつの家族を壊し、徐々に変形させてゆく

5. HOME    Stay

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライター・シリーズの第11作。2軒の裕福な家庭から、子供がひとりずつ誘拐される。身代金の要求はあったものの、その後犯人からの連絡は途絶える。10年の月日が流れたのち、マイロンと友人のウィンは子供のひとりを見つける。10年のあいだ、その子供はどこで何をしていたのか。もうひとりの子供はどうなったのか。

6. WOMAN OF GOD    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

初の女性教皇の誕生か。コンクラーベの行方を世界が固唾をのんで見守っていた——度重なる苦難や危険に信仰を試されながらも、医師から聖職者へと転身し、宗教改革運動に身を投じる女性の数奇な運命が描かれる。女性殺人捜査クラブ・シリーズで知られるコンビによる、スタンドアローンの異色スリラー。

7. PRECIOUS AND GRACE    New!

Alexander McCall Smith アレグザンダー・マコール・スミス

No.1レディーズ探偵社シリーズの第17作。ボツワナで探偵事務所を営むラモツエと、秘書から共同経営者に昇格したマクチ。そこに古い写真を手にしたカナダ人女性が訪れる。幼少期を過ごしたボツワナの家を、そして子守として可愛がってくれた人を探してほしい……過去の探訪に繰り出したラモツエたちは、掘り返してはいけない事柄に行きあたる。

8. TODAY WILL BE DIFFERENT    Down

Maria Semple マリア・センプル

駄目な自分を反省し、きょうはいつもと違う理想的な行動をしようと思い立ったエレナーに、想定外の出来事がつぎつぎと起こる。息子ティンビーは仮病で学校を抜け出し、職場にいるはずの外科医の夫ジョーは不可解な「休暇」中——2012年のベストセラーで映画化も予定されている“WHERE’D YOU GO, BERNADETTE”の著者による3作目の小説。

9.  CRIMSON DEATH    New!

Laurell K. Hamilton ローレル・K・ハミルトン

ヴァンパイア・ハンターのアニタに仕える召使ダミアンの様子がおかしくなった。陽が昇っても安らかな眠りは訪れず、悪夢にうなされ血の寝汗を流す日々。彼を生んだヴァンパイア一族の暴走が悪夢の源であると知り、殺戮の宴を止めようとアニタはアイルランドへ乗り込んでいく。都会のダーク・ファンタジー、アニタ・ブレイク・シリーズ第25作。

10. THE UNDERGROUND RAILROAD    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

【まとめ】

今週のトップには『わたしのなかのあなた』で知られるジョディ・ピコーの新作が登場。3位、7位、9位には、シリーズものが入ってきました。3位のミッチ・ラップ・シリーズを生んだヴィンス・フリンは2013年に亡くなりましたが、このほど若き日のミッチを描いた第11作“American Assassin”の映画化が決まったそうです。キャストはディラン・オブライエン、テイラー・キッチュなど。邦訳で読めるのは『謀略国家』『強権国家』の2作品のみ。7位のシリーズは『新参探偵、ボツワナを騒がす (ミス・ラモツエの事件簿4)』までの4作が、9位のシリーズは『漆黒の血のダンス』までの5作が、それぞれ邦訳刊行されています。ランク外ですが、当記事で先月も紹介のあったホガース・シェイクスピア企画の第4弾、マーガレット・アトウッドによる『テンペスト』の改作“HAG-SEED”が19位に挙がってきました。これからのラインナップも非常に楽しみな内容となっていますので、そちらをあわせて再度ご紹介を。 

《ホガース・シェイクスピア企画》

冬物語』改作“The Gap of Time”ジャネット・ウィンターソン(2015年10月刊行)

ベニスの商人』改作“Shylock Is My Name”ハワード・ジャコブソン(2016年2月刊行)

じゃじゃ馬ならし』改作“Vinegar Girl”アン・タイラー(2016年6月刊行)

テンペスト』改作“Hag-Seed”マーガレット・アトウッド(2016年10月刊行)

マクベス』改作      ジョー・ネスボ(2017年2月頃を予定)

オセロ』改作      トレイシー・シュヴァリエ(2017年6月頃を予定)

リア王』改作      エドワード・スト・オービン(2018年4月頃を予定)

ハムレット』改作      ギリアン・フリン(2021年1月頃を予定)

どれもぜひとも邦訳が読みたいですね。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にグレッグ・ルッカ『逸脱者』など。