アメリカのベストセラー・ランキング

2月12日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. NEVER NEVER    Stay

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

シドニー警察の刑事ハリエット・ブルーは、兄が殺人容疑で逮捕されたことからシドニーを追われてパースへ異動、オーストラリア内陸部の荒野アウトバックで鉱山労働者の失踪事件の捜査にあたることになる。やがて鉱山では過去にも失踪者が出ていたことが明らかになり……

2. THE UNDERGROUND RAILROAD    Stay

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。

3. THE WHISTLER    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

4. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

5. THE GIRL BEFORE    New!

J P Delaney J・P・ディレイニー

有名建築家エドワードが所有する、ロンドンのモダンなミニマリスト・アパートメント。つらい過去を乗り越え新しい生活をはじめようとこの部屋に住みはじめたジェインに、不可解な出来事が起こりはじめる。過去の住人エマ、現在の住人ジェインの語りから、部屋の恐ろしい秘密が明かされていく。ロン・ハワード監督で映画化の予定。

6. THE MISTRESS    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

モスクワの路上で億万長者のウラジーミルに見いだされたナターシャは、贅沢な暮らしの代わりに、自由を制限されて生きてきた。ある日ふたりは、有名な画家を父に持つ若き芸術家テオに出会う。裏社会にも通じているウラジーミルはテオの父の絵に目をつけ、テオはナターシャの美しさに心を奪われる。

7. THE CHEMIST    Up

Stephanie Meyer ステファニー・メイヤー

トワイライト・シリーズの著者によるスパイスリラー。米国政府の組織下でテロ容疑者の尋問に使う薬を調合していた女性工作員は、秘密を知りすぎたために命を狙われている。そんなとき、最後にあと一度だけ仕事をすれば逃がしてやるとかつての上司からメールが届く。

8. SMALL GREAT THINGS    Stay

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

9. POWER GAME    New!

Christine Feehan クリスティン・フィーハン

政府の秘密実験で生みだされた特殊能力者“ゴーストウォーカーズ”のチームを率いるジークと、やはりDNA操作で特殊能力を与えられたスパイのベラが巡り合う。闇の一族カルパチアン・シリーズで知られる著者によるパラノーマル・ロマンス、ゴーストウォーカーズ・シリーズ第13作。

10. DEATH’S MISTRESS    New!

Terry Goodkind テリー・グッドカインド

長編ファンタジー真実の剣シリーズの登場人物ニッキを中心に描かれる、ニッキ・クロニクルズの第1作。かつては悪の皇帝ジャガンに仕えて死の女王と呼ばれ、探求者リチャードにより改心したニッキ。予見師ネイサンとともに新たな冒険をはじめる。

【まとめ】

今週は3作品が新たにベストテン入りしました。5位に登場した“THE GIRL BEFORE”は、『美しき囮』などサスペンスの著書があるトニー・ストロングが別名で書いたサイコ・スリラー。話題作らしく特設サイトを公開していたり、著者がインタビューで“こんまり流”ミニマリズムの限界について語っていたりと、作品や映画への期待を膨らませてくれます。10位のテリー・グッドカインドは新シリーズですが、この下敷きとなる真実の剣シリーズは第17作“WARHEART”(2015)まで発表されています。日本では第8作“NAKED EMPIRE”(第8部“魔宮の凶鳥”として全5巻に分冊)まで刊行。トップテン外では、14位にジョン・レスクワのスリラー、“FATAL”がはいりました。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)など。