アメリカのベストセラー・ランキング

2月19日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. RIGHT BEHIND YOU    New!

Lisa Gardner リサ・ガードナー

FBI犯罪心理捜査官を引退したクインシーと妻レイニーに里子として迎えられた少女シャーラ。彼女の兄は8年前、酔った父親をバットで殴り殺して妹の命を救ったが、目下は銃撃殺人事件の最有力容疑者として追われている。ヒーローだった兄はモンスターと化したのか。クインシー&レイニー・シリーズの第7作。

2. NEVER NEVER    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

シドニー警察の刑事ハリエット・ブルーは、兄が殺人容疑で逮捕されたことからシドニーを追われてパースへ異動、オーストラリア内陸部の荒野アウトバックで鉱山労働者の失踪事件の捜査にあたることになる。やがて鉱山では過去にも失踪者が出ていたことが明らかになり……

3. THE GIRL BEFORE    Up

J P Delaney J・P・ディレイニー

有名建築家エドワードが所有する、ロンドンのモダンなミニマリスト・アパートメント。つらい過去を乗り越え新しい生活をはじめようとこの部屋に住みはじめたジェインに、不可解な出来事が起こりはじめる。過去の住人エマ、現在の住人ジェインの語りから、部屋の恐ろしい秘密が明かされていく。ロン・ハワード監督で映画化の予定。

4. THE UNDERGROUND RAILROAD    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。早川書房より邦訳刊行予定。

5. THE WHISTLER    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

6. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

7. SMALL GREAT THINGS    Up

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

8. THE PRISONER    New!

Alex Berenson アレックス・ベレンスン

CIA上層部にISISへ情報を流している者がいる—— スパイの正体を暴くべく、CIAの元工作員ジョン・ウェルズはアルカイダの戦士を装って捕虜となり、ブルガリアの秘密刑務所でISISメンバーの囚人と接触をはかる。元NYT記者である著者のシリーズ第10作。

9. THE MISTRESS    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

モスクワの路上で億万長者のウラジーミルに見いだされたナターシャは、贅沢な暮らしの代わりに、自由を制限されて生きてきた。ある日ふたりは、有名な画家を父に持つ若き芸術家テオに出会う。裏社会にも通じているウラジーミルはテオの父の絵に目をつけ、テオはナターシャの美しさに心を奪われる。

10. A GENTLEMAN IN MOSCOW    Up

Amor Towles エイモア・タウルズ

1922年、反体制的な詩を書いたとしてスターリン政権によりモスクワ中心部のメトロポール・ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。彼がそこで過ごした30年間を描く。2011年に“THE RULES OF CIVILITY”でデビューした著者の長篇第2作。

【まとめ】

今週は1位と8位に新作がランクインしました。1位は心理サスペンスの女王として安定の人気を誇るリサ・ガードナー。同シリーズは5作目『愛しき人は雨に消されて』まで邦訳が出され、さらに最新長編として当ランキングにも昨年登場していた“FIND HER”が『棺の女』で小学館から刊行されています。4位の全米図書賞受賞作“THE UNDERGROUND RAILROAD”は、早川書房から刊行予定との情報が入りました。8位のアレックス・ベレンスンは第2作『暗号名ゴースト』まで邦訳有り。そしてトップテン外にも3つの新作が並んでいます。13位“4 3 2 1”はポール・オースターによる7年ぶりの作品で、著者自身がモデルと思われる主人公が並行して4バージョンの人生を織りなす私小説の色合いが濃い物語。14位はイアン・ランキンのリーバス・シリーズ第21作“RATHER BE THE DEVIL”、15位はYA作家サラ・ピンバラによる心理スリラー“BEHIND HER EYES”です。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にルッカ『回帰者』など。今週の金曜は大阪で『深夜プラス1』の読書会。わたしもお気に入りの箇所に付箋などつけながら読み返し中です。関西での読書会はこのあと3月に京都、4月に神戸でそれぞれ企画が進んでいる模様ですので、みなさまkeep checking でどうぞよろしく。