アメリカのベストセラー・ランキング

3月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. LINCOLN IN THE BARDO    New!

George Saunders ジョージ・ソーンダーズ

南北戦争中の1862年、時のアメリカ大統領エイブラハム・リンカーンが、病死した幼い息子ウィリーが眠る墓地を訪れてみると、そこにはたくさんの幽霊たちが待ち受けていた。『短くて恐ろしいフィルの時代』のソーンダーズが放つ待望の初長編。

2. NORSE MYTHOLOGY    Down

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。

3. ECHOES IN DEATH    Down

J.D.Robb J・D・ロブ

ニューヨーク・タイムズのベストセラー常連作家によるイヴ&ローク・シリーズ最新作。ニューヨーク市警に勤めるイヴ・ダラスが富豪の夫ロークと車で帰宅している途中、全裸で血まみれの女性がふらふらと車の正面に飛び出してきた。ロークは慌ててブレーキを踏み、イヴはすぐさま女性を保護しようとするが——21世紀なかばの近未来を舞台にしたSFサスペンス・シリーズ第44作。

4. HEARTBREAK HOTEL    New!

Jonathan Kellerman ジョナサン・ケラーマン

ロサンゼルスの小児臨床心理医アレックス・デラウェア・シリーズの第32作。100歳になる高齢女性サライアから診療の相談を受け、専門外ではあるが、彼女が滞在するホテルのスイートルームに話を聞きにいったアレックス。翌朝、二度目のセッションのために再訪すると、室内でサライアが死んでいた。殺人課刑事のマイロ・スタージスとともに、アレックスはその死の真相を追う。

5. NEVER NEVER    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

シドニー警察の刑事ハリエット・ブルーは、兄が殺人容疑で逮捕されたことからシドニーを追われてパースへ異動、オーストラリア内陸部の荒野アウトバックで鉱山労働者の失踪事件の捜査にあたることになる。やがて鉱山では過去にも失踪者が出ていたことが明らかになり……

6. TWO BY TWO    Up

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

7. THE WHISTLER    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

8. THE GIRL BEFORE    Stay

J P Delaney J・P・ディレイニー

有名建築家エドワードが所有する、ロンドンのモダンなミニマリスト・アパートメント。つらい過去を乗り越え新しい生活をはじめようとこの部屋に住みはじめたジェインに、不可解な出来事が起こりはじめる。過去の住人エマ、現在の住人ジェインの語りから、部屋の恐ろしい秘密が明かされていく。ロン・ハワード監督で映画化の予定。

9. THE UNDERGROUND RAILROAD    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。早川書房より邦訳刊行予定。

10. RIGHT BEHIND YOU    Down

Lisa Gardner リサ・ガードナー

FBI犯罪心理捜査官を引退したクインシーと妻レイニーに里子として迎えられた少女シャーラ。彼女の兄は8年前、酔った父親をバットで殴り殺して妹の命を救ったが、目下は銃撃殺人事件の最有力容疑者として追われている。ヒーローだった兄はモンスターと化したのか。クインシー&レイニー・シリーズの第7作。

【まとめ】

今週は、1位と4位に新作がランクインしました。1位のジョージ・ソーンダーズは、中編『短くて恐ろしいフィルの時代』(角川書店)が日本でも注目を集めているほか、短編を多く手がけている作家で、著者名ジョージ・ソウンダース表記でも『パストラリア』(角川書店)などの邦訳が出版されています。4位のジョナサン・ケラーマンは、1985年から続く息の長い人気シリーズで、邦訳は14作目の『マーダー・プラン』(講談社文庫)まで出ています。トップ10外では、11位にマーク・グリーニーの『暗殺者グレイマン』シリーズ最新作“GUNMETAL GRAY”がランクインしています。こちらは前作の『暗殺者の反撃』まで、先行5作品すべて邦訳が出ています(すべてハヤカワ文庫NV)。

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にべリンダ・バウアー『生と死にまつわるいくつかの現実』(小学館文庫)など。

先日の大阪『深夜プラス1』読書会は、はじめての方にも多数ご参加いただき、にぎやかで楽しい読書会になりました。ご参加の皆様、ありがとうございました! 関西ではこのあと、3月20日に京都(課題書『傷だらけのカミーユ』)、4月に神戸(課題書『ずっとお城で暮らしてる』・日程未定)で読書会が予定されています。春は観光にもいい季節、お出かけの機会に読書会へもぜひどうぞ!