アメリカのベストセラー・ランキング

6月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. CAMINO WINDS    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 3. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 4. THE SUMMER HOUSE    New!

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

ジョージア州の湖畔の町に建つサマー・ハウスと呼ばれる屋敷で、子どもを含む7人が殺害され、アフガニスタン帰りの元レンジャー隊員4人に容疑がかけられた。元軍人でありニューヨーク市警察の元刑事でもあるジェレマイア・クックは陸軍から捜査を命じられ、優秀なチームとともに町へ赴き、隠された真実を見つけ出そうとする。

 

  1. 5. DADDY’S GIRLS    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

カリフォルニアの大牧場主だった父親が急死した。若いころテキサスの牧場で働いていた父は、妻を亡くしたあと娘たちを連れてカリフォルニアで再出発し、成功を収めた。早くに結婚していまはライターになった末娘、テレビタレントの次女、家に残りひたすら父のために働いてきた長女の三姉妹は、やがて思いがけない父親の過去を知ることになる。

 

  1. 6. FAIR WARNING    Stay

Michael Connelly マイクル・コナリー

ハリー・ボッシュ・シリーズのスピンオフで、ジャーナリストを主人公とするジャック・マカヴォイ・シリーズ第3作。マカヴォイが一夜だけの関係を持った女性が惨殺される。マカヴォイは調査に乗り出し、ほかにも不審な殺人事件が起こっていて、犯人が遺伝情報にもとづいて犠牲者を選び出し、殺害している可能性に気づく。

 

  1. 7. IF IT BLEEDS    Up

Stephen King スティーヴン・キング

巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。

 

  1. 8. TOM CLANCY: FIRING POINT    New!

Mike Maden マイク・メイデン

バルセロナのカフェが爆破され、偶然再会したばかりの大学時代のクラスメイト、ルネが命を落とした。彼女を救えなかったジャック・ライアン・ジュニアは、スペイン国家情報センターのエージェントであるライアとともに爆破事件の真相を探ろうとするが、実はルネは驚くべき数多の秘密を抱えていた。

 

  1. 9. HIDEAWAY    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ハリウッドの名家に生まれ、子役として活躍していたケイトは、9歳のときに誘拐されるが、機転を利かせて自力で脱出することに成功する。逃げこんだ家の家族は事情を知ってケイトを保護し、親身になって世話をしてくれるが、ケイトの試練はこれで終わったわけではなかった。

 

  1. 10. THE GUEST LIST    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、招待客のひとりが殺された。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

 

【まとめ】

今週はまたしてもディーリア・オーエンズが首位に返り咲き。そして3作品が新たにランクインしました。4位はジェイムズ・パタースンの新作スリラー。共著者のブレンダン・デュボイズは『合衆国復活の日』(扶桑社)などの邦訳があります。8位のジャック・ライアン・ジュニア・シリーズでは、マイク・メイデンの執筆作品は4作目。メイデンはテクノスリラーのドローン・シリーズで知られ、第3作の『ドローン・コマンド 尖閣激突!』(角川書店)が邦訳刊行されています。ベストテン外では、15位にピューリッツァー賞を受賞したジャーナリスト、コニー・シュルツによる初の小説“THE DAUGHTERS OF ERIETOWN”がはいりました。

 

 

    1. 佐藤桂(さとう けい)

      神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。