アメリカのベストセラー・ランキング

4月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE BLACK BOOK    New!

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

痴情絡みと思しき事件現場で警官パティが目にしたのは、女2人の死体とともに全裸で血を流した双子の兄ビリーだった。ビリーは一命をとりとめるが、過去2週間の記憶がもどらない。実直な同僚警官でもある彼の汚名を濯ごうとするパティらの捜査線上に、シカゴの高級娼館と黒表紙のアドレス帳の存在が浮かびあがる。

2. MISSISSIPPI BLOOD    Down

Greg Iles グレッグ・アイルズ

元検事で作家、現在はミシシッピ州の小さな町ナチェズの市長となったペン・ケイジは、アフリカ系アメリカ人看護師殺害容疑をかけられた敬愛する父の命を守るため、自分の家族とアメリカ南部の秘められた過去を探る。ペン・ケイジ・シリーズとしては6作目、ナチェズ3部作の完結編。

3. NORSE MYTHOLOGY    Up

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。

4. VICIOUS CIRCLE    Down

C. J. Box C・J・ボックス

ワイオミング州の州猟区管理官ジョー・ピケットを主人公にしたシリーズ最新作。ジョーの娘エイプリルの元恋人で刑務所を出たばかりのダラス・ケイツは、ジョーへの逆恨みから復讐を企てる。

5. IF NOT FOR YOU    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

“New Beginnings”シリーズ第3作。自分を縛る家族から離れ、ポートランドで友人や叔母に支えられながら高校の音楽教師としてスタートを切ったベス。ある日交通事故に遭い、タトゥーを入れた自動車修理工のサムに救われる。思いも寄らない出会いから惹かれあっていくふたりだが……

6. THE WOMEN IN THE CASTLE    New!

Jessica Shattuck ジェシカ・シャタック

1944年7月、ヒットラー暗殺計画の失敗により、関わったレジスタンスのメンバーは命を絶たれた。未亡人となったマリアンは終戦後、亡き夫の仲間との約束を果たすべく、彼らの妻だったベニータとアニアを見つけだす。バイエルンの寂れた古城に身を寄せた未亡人たちは、それぞれの過去を背負って三人三様の暮らしを生きはじめる。

7. DANGEROUS GAMES    Stay

Danielle Steel ダニエル・スティール

ジャーナリストのアリックスは元SEALs隊員のカメラマンと組んで強引な取材をおこない、これまでに何度もスクープをものにしていた。が、アメリカ合衆国副大統領もからんだ疑惑を調べはじめたために、かつてない危険なゲームに身を投じることになる。

8. THE CUTTHROAT    Down

Clive Cussler and Justin Scott クライブ・カッスラー、ジャスティン・スコット

私立探偵アイザック・ベル・シリーズの第10作。1911年、舞台女優を夢見て家出した富豪の娘の捜索を依頼されたヴァン・ドーン探偵社。だが、その娘が惨殺死体で見つかり、調べを進めるうちに「ジキル博士とハイド氏」の劇が上演されている各地で同様の手口による殺人が相次いでいたことが明らかになる。

9. LINCOLN IN THE BARDO    Up

George Saunders ジョージ・ソーンダーズ

南北戦争中の1862年、時のアメリカ大統領エイブラハム・リンカーンが、病死した幼い息子ウィリーが眠る墓地を訪れてみると、そこにはたくさんの幽霊たちが待ち受けていた。『短くて恐ろしいフィルの時代』のソーンダーズが放つ待望の初長編。

10. A GENTLEMAN IN MOSCOW    Up

Amor Towles エイモア・タウルズ

1922年、反体制的な詩を書いたとしてスターリン政権によりモスクワ中心部のメトロポール・ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。彼がそこで過ごした30年間を描く。2011年に“THE RULES OF CIVILITY”でデビューした著者の長篇第2作。

【まとめ】

今週のランキング初登場は2作品と、比較的変動の少ない週で、10位以下にも新作はありませんでした。1位をさらったのはヒット・メイカーのジェイムズ・パタースンと『覗く。』でエドガー賞をとったデイヴィッド・エリスの共著によるノンシリーズの警察小説。この2人がタッグを組むのは今作で5回目となります。6位に登場したのは米国ブルックリン在住の作家ジェシカ・シャタックによる3作目の小説で、シャタックは3月24日付けニューヨークタイムズのオピニオン欄にて、彼女の祖父母、とりわけ愛してやまない祖母がナチ党員だったことを明かし、現代に生きるドイツ人としての彼女自身の葛藤を克明に語る記事を寄せています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にグレッグ・ルッカ『回帰者』など。

4月後半は関西圏でのイベントが目白押し。皆さんのご参加をお待ちしております。

21日(金) 『『世界文学大図鑑』刊行記念 越前敏弥さんトーク&サイン会

22日(土) 翻訳ミス大賞・読者賞総まとめ&『おやすみ、リリー』発売記念イベント

28日(金) 『文芸翻訳入門』(フィルムアート社)刊行記念トークイベント

29日(土) 第10回神戸読書会『ずっとお城で暮らしてる』