アメリカのベストセラー・ランキング

5月7日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE FIX    New!

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

2. THE BLACK BOOK    Down

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

痴情絡みと思しき事件現場で警官パティが目にしたのは、女2人の死体とともに全裸で血を流した双子の兄ビリーだった。ビリーは一命をとりとめるが、過去2週間の記憶がもどらない。実直な同僚警官でもある彼の汚名を濯ごうとするパティらの捜査線上に、シカゴの高級娼館と黒表紙のアドレス帳の存在が浮かびあがる。

3. FAST AND LOOSE    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第41作。バリントンはヨットの衝突事故をきっかけに知りあった大病院グループの経営者カールソンから、病院が敵対的買収をしかけられていると相談を受ける。

4. THRAWN    Down

Timothy Zahn ティモシイ・ザーン

『スターウォーズ』初期のスピンオフ作品「スローン」3部作の作者による最新作。デス・スターの破壊と皇帝の死後、絶望的な状況に陥った帝国軍のあらたな指導者として突如現われた軍事的天才スローン大提督。未知領域チス出身の非人間種族である彼が大提督の座にのぼりつめるまでを描く。

5. ALL BY MYSELF, ALONE    Down

Mary Higgins Clark メアリ・ヒギンズ・クラーク

宝飾品の専門家であるセリア・キルブライドは結婚式を目前に控えていたが、式の前日、夫になるはずだった男が逮捕されてしまう。世間の関心から逃れようと豪華客船に乗り込んだセリアは、船上でレディ・エミリー・ヘイウッドという女性と知り合いになる。出航から3日後、レディ・ヘイウッドは死体になって発見され、彼女が所有していた貴重なエメラルドのネックレスもなくなっていた。

6. NORSE MYTHOLOGY    Up

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。

7. THE WOMEN IN THE CASTLE    Up

Jessica Shattuck ジェシカ・シャタック

1944年7月、ヒットラー暗殺計画の失敗により、関わったレジスタンスのメンバーは命を絶たれた。未亡人となったマリアンは終戦後、亡き夫の仲間との約束を果たすべく、彼らの妻だったベニータとアニアを見つけだす。バイエルンの寂れた古城に身を寄せた未亡人たちは、それぞれの過去を背負って三人三様の暮らしを生きはじめる。

8. TWO FROM THE HEART    Down

James Patterson and Frank Constantini, Emily Raymond and Brian Sitts ジェイムズ・パタースン&フランク・コンスタンティーニ、エミリー・レイモンド&ブライアン・シッツ

よいストーリーには、人生の可能性に目を開かせてくれる力がある。ジェイムズ・パタースンを含む2組の共作による、2つのストーリーを1冊に収録。

9. ONE PERFECT LIE    Down

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

ペンシルヴァニアの小さな町に引っ越してきたばかりの男は、クリス・ブレナンという偽名と申し分のない偽の経歴で、教師兼野球チームのコーチとして町の高校に職を得た。そして、ある計画を実行に移すため、野球チームに所属する生徒のひとりに近づいていく。リーガル・サスペンスの名手が、郊外の小さな町を舞台に描く新作スリラー。

10. A GENTLEMAN IN MOSCOW    Up

Amor Towles エイモア・タウルズ

1922年、反体制的な詩を書いたとしてスターリン政権によりモスクワ中心部のメトロポール・ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。彼がそこで過ごした30年間を描く。2011年に“THE RULES OF CIVILITY”でデビューした著者の長篇第2作。

【まとめ】

1位と3位に新作がランクインしました。初登場1位に輝いたのは、超記憶症候群の巨漢探偵(本作ではFBIの一員となっているので巨漢捜査官ですが)デッカーを主人公とするシリーズの第3弾。1作目の“MEMORY MAN”が『完全記憶探偵』として昨年末に竹書房より刊行(♪akiraさんによるレビューはこちら)されているこのシリーズは、第1作、第2作ともに本ランキングで初登場1位となっており、人気の高さがうかがえます。3位は当欄の常連ストーン・バリントン・シリーズの最新作。シリーズ第41作という長寿ぶりもさることながら、ほぼ3カ月おきというハイペースの刊行にも驚くばかりです。またベストテン外では、11位に『パイロットの妻』で知られるアニータ・シュリーヴの“THE STARS ARE FIRE”が、15位にサラ・パレツキーのウォーショースキー・シリーズ最新作“FALLOUT”が入りました。

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書はバリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)、リサ・ガードナー『棺の女』、ベリンダ・バウアー『視える女』(ともに小学館文庫)など。先日の第8回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンション、わたしも参加してきました。大賞&読者賞のダブル受賞に輝いた『その雪と血を』、おめでとうございます。ところで当日、会場の大田区産業プラザPiOではわんぱく相撲大会が開催されていて、たいへん盛りあがっていました。時間があれば観戦したかった……。