アメリカのベストセラー・ランキング

5月14日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. GOLDEN PREY    New!

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第27作。米国連邦保安局へ移ったルーカスは強盗事件を手がけることに。犯人は麻薬カルテルを襲って売人4人を殺し、居合わせた幼い少女の命まで奪って、大金を持ち去っていた。金を取りもどそうと麻薬組織が追手を差し向けるなか、ルーカスはいち早く犯人にたどりつこうと捜査を急ぐ。

2. THE FIX    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

3. THE BLACK BOOK    Down

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

痴情絡みと思しき事件現場で警官パティが目にしたのは、女2人の死体とともに全裸で血を流した双子の兄ビリーだった。ビリーは一命をとりとめるが、過去2週間の記憶がもどらない。実直な同僚警官でもある彼の汚名を濯ごうとするパティらの捜査線上に、シカゴの高級娼館と黒表紙のアドレス帳の存在が浮かびあがる。

4. ANYTHING IS POSSIBLE    New!

Elizabeth Strout エリザベス・ストラウト

オリーヴ・キタリッジの生活』でピュリッツァー賞を受賞した著者の6作目の小説。『私の名前はルーシー・バートン』のルーシーの故郷、イリノイ州の架空の町を舞台にした9つの作品からなる連作短篇。

5. BEARTOWN    New!

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

雪と森に閉ざされたスウェーデンの小さな町ベアタウン。人口が減って廃れつつある町の唯一の自慢は、ジュニアのアイスホッケーチームで、人々はチームの活躍にすべての希望を託していた。ところが、町の日常を揺るがす事件が起こる。『幸せなひとりぼっち』で知られるスウェーデン人作家の最新刊。

6. ALL BY MYSELF, ALONE    Down

Mary Higgins Clark メアリ・ヒギンズ・クラーク

宝飾品の専門家であるセリア・キルブライドは結婚式を目前に控えていたが、式の前日、夫になるはずだった男が逮捕されてしまう。世間の関心から逃れようと豪華客船に乗り込んだセリアは、船上でレディ・エミリー・ヘイウッドという女性と知り合いになる。出航から3日後、レディ・ヘイウッドは死体になって発見され、彼女が所有していた貴重なエメラルドのネックレスもなくなっていた。

7. A GENTLEMAN IN MOSCOW    Up

Amor Towles エイモア・タウルズ

1922年、反体制的な詩を書いたとしてスターリン政権によりモスクワ中心部のメトロポール・ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。彼がそこで過ごした30年間を描く。2011年に“THE RULES OF CIVILITY”でデビューした著者の長篇第2作。

8. ONE PERFECT LIE    Up

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

ペンシルヴァニアの小さな町に引っ越してきたばかりの男は、クリス・ブレナンという偽名と申し分のない偽の経歴で、教師兼野球チームのコーチとして町の高校に職を得た。そして、ある計画を実行に移すため、野球チームに所属する生徒のひとりに近づいていく。リーガル・サスペンスの名手が、郊外の小さな町を舞台に描く新作スリラー。

9. NORSE MYTHOLOGY    Down

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。

10. THE WOMEN IN THE CASTLE    Down

Jessica Shattuck ジェシカ・シャタック

1944年7月、ヒットラー暗殺計画の失敗により、関わったレジスタンスのメンバーは命を絶たれた。未亡人となったマリアンは終戦後、亡き夫の仲間との約束を果たすべく、彼らの妻だったベニータとアニアを見つけだす。バイエルンの寂れた古城に身を寄せた未亡人たちは、それぞれの過去を背負って三人三様の暮らしを生きはじめる。

【まとめ】

新作が3つランクインしています。初登場で首位を獲得したのは、ジョン・サンドフォードの獲物シリーズ第27作。1989年からほぼ1年に1作のペースで刊行されている息の長いシリーズで、今作から主人公が米国連邦保安局へ移りましたが、ファンの評価は変わらず高いようです。4位には、ピュリッツァー賞作家エリザベス・ストラウトの作品がはいりました。ブッカー賞候補となった著者の第5長篇の邦訳『私の名前はルーシー・バートン』が、あす(5月9日)早川書房より発売されます。今作はその続編ではないものの、ルーシー・バートンにゆかりのある人々について描かれた連作短篇なので、前作を読んでからのほうがより楽しめるとの意見がレビューに多く見受けられます。5位は、スウェーデンの作家フレドリック・バックマン。デビュー作『幸せなひとりぼっち』が全世界で250万部を超えるベストセラーとなり、映画化されて、2016年アカデミー賞外国語映画賞の候補となりました。

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

東京在住の翻訳者、南東京読書会の世話人のひとり。5月9日にノンフィクションの訳書『スパイの血脈——父子はなぜアメリカを売ったのか?』が早川書房より刊行されます。先月開催された翻訳ミステリー大賞授賞式にわたしも参加しました。早くから準備し、運営してくださったかたがたに、改めてお礼を申しあげます。