アメリカのベストセラー・ランキング

7月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. 28 SUMMERS    New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 2. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 3. CAMINO WINDS    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 4. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 5. THE SUMMER HOUSE    Down

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

ジョージア州の湖畔の町に建つサマー・ハウスと呼ばれる屋敷で、子どもを含む7人が殺害され、アフガニスタン帰りの元レンジャー隊員4人に容疑がかけられた。元軍人でありニューヨーク市警察の元刑事でもあるジェレマイア・クックは陸軍から捜査を命じられ、優秀なチームとともに町へ赴き、隠された真実を見つけ出そうとする。

 

  1. 6. IF IT BLEEDS    Up

Stephen King スティーヴン・キング

巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。

 

  1. 7. DEACON KING KONG    Up

James McBride ジェイムズ・マクブライド

1969年、サウス・ブルックリンの低所得者向け公営住宅で、年老いた教会の執事(ディーコン)がドラッグ・ディーラーの少年を銃で撃った。撃たれた少年と、引き金を引いた記憶もあいまいな飲んだくれの執事、そして事件を見ていた住民たちを通して浮かびあがるコミュニティーの姿を描く。

 

  1. 8. FAIR WARNING    Down

Michael Connelly マイクル・コナリー

ハリー・ボッシュ・シリーズのスピンオフで、ジャーナリストを主人公とするジャック・マカヴォイ・シリーズ第3作。マカヴォイが一夜だけの関係を持った女性が惨殺される。マカヴォイは調査に乗り出し、ほかにも不審な殺人事件が起こっていて、犯人が遺伝情報にもとづいて犠牲者を選び出し、殺害している可能性に気づく。

 

  1. 9. THE GUEST LIST    Up

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、招待客のひとりが殺された。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 10. DEVOLUTION    New!

Max Brooks マックス・ブルックス

アメリカ西海岸の火山、レーニア山が大噴火を起こし、灰に覆われたふもとの町で一冊の日記が発見される。そこに記されていたのは、伝説の未確認生物“ビッグフット”襲来の記録だった。『WORLD WAR Z』の作者によるサバイバル・スリラー。

 

 

【まとめ】

今週、新しくトップテン入りした作品は3つでした。1位のエリン・ヒルダービルドは“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家で、今年もナンタケット島を舞台にした新作でベストセラー・リストに戻ってきました。7位のジェイムズ・マクブライドは今年3月の刊行で、3月22日付リストでは14位(翌週15位)にランクインしていましたが、今週はじめて10位以内にランクインしました。2013年“THE GOOD LORD BIRD”で全米図書賞受賞、2015年には全米人文科学勲章を贈られたアフリカ系とユダヤ系にルーツをもつ作家で、今回作は“Black Lives Matter”の流れを受けてオプラ・ウィンフリーのOprah’s Book Clubでも取りあげられています。10位には、映画にもなったゾンビ・パンデミック小説『WORLD WAR Z』(浜野アキオ訳、文春文庫)で知られるマックス・ブルックスが登場しています。

 

 

    1. 吉井智津(よしい ちづ)

      翻訳者。訳書に、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)、アラベラ・カーター・ジョンソン『小さなモネ―アイリス・グレース―自閉症の少女と子猫の奇跡』(辰巳出版)など。