アメリカのベストセラー・ランキング

6月18日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. COME SUNDOWN    New!

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ボディーンはモンタナ州で、家族4世代でリゾート施設を備えた牧場を経営している。ある夜、家出したと聞かされていたおばのアリスが、牧場の近くで惨殺死体となって発見される。じつはアリスは家出をしたあと何者かに誘拐されており、その家から逃げ出していたのだった。この事件をきっかけに、ボディーンと彼女の家族の絆が試されることになる。

2. INTO THE WATER    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。

3. DRAGON TEETH    Down

Michael Crichton マイクル・クライトン

1876年、未開の西部へと気軽な探検に繰り出したエール大の学生ウィリアムは、2人の古生物学者マーシュとコープによる「骨戦争」こと恐竜化石発掘の熾烈な競争に巻き込まれる。2008年に急死した著者による未発表作品で、綿密に描かれた史実の枠に『ジュラシック・パーク』を彷彿させる豊かな想像力を嵌め込んだ冒険フィクション。

4. NIGHTHAWK    New!

Clive Cussler and Graham Brown クライヴ・カッスラー、グレアム・ブラウン

カート・オースチンが活躍する、NUMAファイル・シリーズの14作目。最新鋭の技術でつくられた無人航空機ナイトホークが、時限爆弾を積んだまま南太平洋上で姿を消す。カートはNSAのエマ・タウンゼントとともに、爆発を止めるべく機体の所在の特定に乗りだす。一方ロシアと中国も、技術を得る目的でその行方を追っていた。やがて、ナイトホークには爆弾以外にも重大な秘密が積まれていたことが明らかになる。

5. NO MIDDLE NAME    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャーを主人公とする、これまでに発表された短編11編に、新作中編“TOO MUCH TIME”を加えた中短編集。今年秋に本国で出版が予定されているシリーズ長編22作目の“THE MIDNIGHT LINE”は、メイン州で起きたひったくり事件を発端として展開する、前述の中編“TOO MUCH TIME”から続くストーリーとなるとのこと。

6. BEREN AND LÚTHIEN    New!

J.R.R.Tolkien J・R・R・トールキン

『指輪物語』の前史に当たる。中つ国(ミドルアース)を舞台に人間の男のベレンと、不死のエルフ族の姫ルーシエンの恋を物語の中心に据え、人間とエルフの関係や、貴重な宝石を巡る悪の冥王との戦いが描かれる。着想から100年の時を経て刊行された、トールキンの新作。

7. 16TH SEDUCTION    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第16作。信じていた人物に裏切られ、心に深い傷を負ったリンジー・ボクサー。立ちなおろうともがいていたところへ、爆弾テロ事件が起こり、多数の死者が出る。リンジーは犯人の逮捕に成功するが、捜査の正当性に疑問を投げかけられてしまう。

8. THE FIX    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

9. SAME BEACH, NEXT YEAR    Down

Dorothea Benton Frank ドロシア・ベントン・フランク

かつて恋人同士だったアダム・スタンリーとイヴ・ランダースは、それぞれの結婚相手イライザ、カールと訪れたチャールストンのビーチで偶然再会する。それからの20数年、夏ごとに顔を合わせるようになった2組の夫婦は、さまざまな感情と人生の局面を通り抜けながら新たな関係を築いていく。

10. TESTIMONY    Down

Scott Turow スコット・トゥロー

パートナーを務める法律事務所を辞め、妻とも別れ、50歳にして人生の再出発を決意したキンドル郡の元地方検事ビル・テン・ブーム。オランダに移り住んだ彼は、ハーグにある国際刑事裁判所の検察官として、ボスニア紛争時の難民キャンプで起きたとされる非人道的犯罪に挑む。

【まとめ】

今週は3作が新たにランクインしました。ノーラ・ロバーツは安定の強さで、初登場1位です。4位にはいったのは、やはり根強い人気を保つクライヴ・カッスラーのNUMAファイル(カート・オースチン)・シリーズの新作。9作目からコンビを組む、グレアム・ブラウンとの共著です。日本では、彼の前任のポール・ケンプレコスとの共著で、8作目の『パンデミックを阻止せよ』までが刊行されていて、以降の作品の翻訳が待たれます。そして6位には、J・R・R・トールキンの新作がはいりました。”THE HISTORY OF MIDDLE-EARTH(中つ国の歴史)” に収録されているバージョンを元に息子のクリストファーがさまざまな草稿を編纂したもので、1917年に第1次世界大戦から帰還したトールキンが執筆をはじめて以来、じつに100年(!)の歳月を経ての出版です。挿絵は、トールキン作品の挿絵画家で、映画「ロード・オブ・ザ・リング」にも参加したアラン・リーが担当しています。先週2位に初登場し、今週も3位につけているマイクル・クライトンにつづき、著者の死後にも新作が読めるのはうれしいですね。

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

今回から、NY Timesベストセラー速報の執筆陣に加わることになりました。よろしくお願いいたします。拙訳書『お嬢さま学校にはふさわしくない死体‐英国少女探偵の事件簿1』がコージー・ブックスより発売中です。1934年のイギリスの寄宿学校を舞台に、貴族の娘のデイジーと香港からやってきたデイジーが、消えた死体の謎に挑みます。キュートな、でも、それだけではない少女探偵ふたりの活躍をお愉しみください。