アメリカのベストセラー・ランキング

7月2日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. CAMINO ISLAND    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム 

プリンストン大学の図書館で厳重に保管されていた古い原稿が盗まれた。若い女性作家のマーサーは謎めいた女性から依頼を受け、フロリダの島で人気書店を営みながら裏では稀覯本の闇取引で儲けているというブルースを、秘密裏に調査することになる。

2. THE IDENTICALS    New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

恋も仕事も長つづきしない気まぐれなハーパー。完璧主義でやかまし屋のタビサ。両親の離婚後、長年のあいだナンタケット島とマーサズ・ヴィニヤード島に別れて暮らしてきた双子の姉妹は、行きづまった人生を立て直そうと、互いの家を交換することに決める。“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。

3. TOM CLANCY: POINT OF CONTACT    New!

Mike Maden マイク・メイデン

ジャック・ライアン・ジュニアを主人公としたスリラー第3作。ジャックの所属する“ザ・キャンパス”ことヘンドリー・アソシエイツ社は、軍需企業社長をつとめる元上院議員から依頼を受ける。表向きは買収を検討中のシンガポール企業の財務調査だったが、ジャックとともに財務アナリストとしてシンガポールへ飛んだ元CIA職員のブラウンは、ある密命を帯びていた。

4. INTO THE WATER    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

イギリスの小さな町を流れる川の底から、ネルという名のシングルマザーの死体が発見される。そのあたりは地元では“溺死の淵”と呼ばれ、かつての魔女狩りで魔女とされた女たちが命を絶った場所として知られていた。ネルは魔女に強い興味を持ち、淵の歴史を書き綴った手稿を遺していた。

5. DRAGON TEETH    Down

Michael Crichton マイクル・クライトン

1876年、未開の西部へと気軽な探検に繰り出したエール大の学生ウィリアムは、2人の古生物学者マーシュとコープによる「骨戦争」こと恐竜化石発掘の熾烈な競争に巻き込まれる。2008年に急死した著者による未発表作品で、綿密に描かれた史実の枠に『ジュラシック・パーク』を彷彿させる豊かな想像力を嵌め込んだ冒険フィクション。

6. COME SUNDOWN    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ボディーンはモンタナ州で、家族4世代でリゾート施設を備えた牧場を経営している。ある夜、家出したと聞かされていたおばのアリスが、牧場の近くで惨殺死体となって発見される。じつはアリスは家出をしたあと何者かに誘拐されており、その家から逃げ出していたのだった。この事件をきっかけに、ボディーンと彼女の家族の絆が試されることになる。

7. NO MIDDLE NAME    Down

Lee Child リー・チャイルド

ジャック・リーチャーを主人公とする、これまでに発表された短編11編に、新作中編“TOO MUCH TIME”を加えた中短編集。今年秋に本国で出版が予定されているシリーズ長編22作目の“THE MIDNIGHT LINE”は、メイン州で起きたひったくり事件を発端として展開する、前述の中編“TOO MUCH TIME”から続くストーリーとなるとのこと。

8. NIGHTHAWK    Stay

Clive Cussler and Graham Brown クライヴ・カッスラー、グレアム・ブラウン

カート・オースチンが活躍する、NUMAファイル・シリーズの14作目。最新鋭の技術でつくられた無人航空機ナイトホークが、時限爆弾を積んだまま南太平洋上で姿を消す。カートはNSAのエマ・タウンゼントとともに、爆発を止めるべく機体の所在の特定に乗りだす。一方ロシアと中国も、技術を得る目的でその行方を追っていた。やがて、ナイトホークには爆弾以外にも重大な秘密が積まれていたことが明らかになる。

9. THE FIX    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第3弾。FBI本部近くの路上で男が女を射殺し、直後に自殺する場面を目撃したデッカー。捜査に乗りだしたところ、国防情報局に手を引けと警告される。この事件の背後には重大な国家機密がかかわっているというのだが……

10. 16TH SEDUCTION    Up

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第16作。信じていた人物に裏切られ、心に深い傷を負ったリンジー・ボクサー。立ちなおろうともがいていたところへ、爆弾テロ事件が起こり、多数の死者が出る。リンジーは犯人の逮捕に成功するが、捜査の正当性に疑問を投げかけられてしまう。

【まとめ】

先週に引きつづき、グリシャムの最新作が1位を獲得しました。新たに登場したのは2作。2位のヒルダーブランドはベストテン常連の人気ロマンス作家で、住まいのあるナンタケット島周辺を舞台とした作品を書きつづけています。3位のジャック・ライアン・ジュニア・シリーズは、第1、2作をグラント・ブラックウッドが執筆していましたが、今作はマイク・メイデンが担当しています。メイデンはテクノスリラーのドローン・シリーズで知られ、第3作の『ドローン・コマンド 尖閣激突!』が昨年2月に角川書店より邦訳刊行されています。ベストテン外の11位には、『ダイヤモンド・エイジ』(早川書房)のニール・スティーヴンスンとヒストリカル・フィクション作家ニコル・ガランドの共著による近未来スリラー、“THE RISE AND FALL OF D. O. D. O.“がランクインしています。

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

訳書にサムエル・ビョルク『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』、ミシェル・ペイヴァー『神々と戦士たち IV 聖なるワニの棺』など。