アメリカのベストセラー・ランキング

7月19日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING                       Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 3. 28 SUMMERS    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 4. SEX AND VANITY                   New!

Kevin Kwan ケビン・クワン

中国人の血を引く令嬢ルーシーの前に、数年前イタリア旅行で出会った青年ジョージが現れ、婚約者とジョージの間でルーシーの心は揺れる。E・M・フォースターの小説で、映画でも有名な『眺めのいい部屋』のコミカルなオマージュ作品。

 

  1. 5. CAMINO WINDS                     Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 6. THE GUEST LIST    Stay   

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

7.THE SUMMER HOUSE    Down
James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

ジョージア州の湖畔の町に建つサマー・ハウスと呼ばれる屋敷で、子どもを含む7人が殺害され、アフガニスタン帰りの元レンジャー隊員4人に容疑がかけられた。元軍人でありニューヨーク市警察の元刑事でもあるジェレマイア・クックは陸軍から捜査を命じられ、優秀なチームとともに町へ赴き、隠された真実を見つけ出そうとする。

 

  1. 8. HOME BEFORE DARK                           New!

Riley Sager ライリー・セイジャー

マギーは父が遺した家を直して売ることにする。昔、その家でのホラー体験を父が実話として本に書き、ずいぶん有名になったものだ。幽霊など信じないマギーだったが、その空き家で実話本どおりの超常現象に襲われ、作り話ではなかったのかもしれないと考えはじめる。

 

  1. 9. MEXICAN GOTHIC                          New!

Silvia Moreno-Garcia シルヴィア・モレーノ=ガルシア

気丈で賢い令嬢ノエミは、従姉から「夫に毒殺される」という手紙を受け取り、すぐさま救出に向かう。そこは最近夢に現れるようになった不吉な屋敷で、昔繁栄した一族の暗い秘密が隠されていた。1950年代のメキシコを舞台にしたゴシック・ファンタジー。

 

  1. 10. FRIENDS AND STRANGERS                              New!
  2. Courtney Sullivan J・コートニー・サリバン

ニューヨークから小さな町へ移り、子育てをしながら仕事をするジャーナリストのエリザベス。エリザベスにベビーシッターとして雇われた、地元女子大の苦学生サム。ふたりの支え合いを通して、女性の生き方、格差社会、人間関係の複雑さがつづられていく。

 

【まとめ】

今週はあらたに4作がランクインしました。4位のケビン・クワンはアジア系の超セレブな世界のロマンスコメディを得意とするシンガポール生まれの作家で、邦訳作品に『クレイジー・リッチ・アジアンズ』(山縣みどり訳 竹書房)があり、〈クレイジー・リッチ〉のタイトルで映画化もされています。8位のライリー・セイジャーはホラー要素のあるサイコスリラー作品で国際スリラー賞を受賞した作家ですが、トッド・リッター名義で警察もののミステリーも書いています。9位のシルヴィア・モレーノ=ガルシアはメキシコ系カナダ人で、世界幻想文学大賞をアンソロジー部門で受賞し、メキシカン・ゴシックホラーのジャンルで活躍している作家です。10位のJ・コートニー・サリバンはニューヨークタイムズの元ライターで、小説は今回が5作目です。なお、今週の1位にオーエンズが返り咲いていますが、本コーナーがおやすみだった先週の1位はブリット・ベネットのTHE VANISHING HALFで、オーエンズは3位でした。

 

    1. 唐木田みゆき(からきだ みゆき)

      翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』など。