アメリカのベストセラー・ランキング
7月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. WHERE THE CRAWDADS SING Stay
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 2. THE VANISHING HALF Stay
Brit Bennett ブリット・ベネット
1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。
- 3. 28 SUMMERS Stay
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド
ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。
- 4. A BEAUTIFULLY FOOLISH ENDEAVOR New!
Hank Green ハンク・グリーン
世界各地に出現した謎の巨大ロボット像、カール。その正体に迫っていたエイプリルの非業の死とともに、数十体のカール像は忽然と姿を消した。数カ月後、残された友人たちのもとに、未来を予言する不思議な本が届く。エイプリルは生きているのかもしれない――ベストセラーSF“AN ABSOLUTELY REMARKABLE THING”続編。
- 5. CAMINO WINDS Stay
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。
- 6. THE GUEST LIST Stay
Lucy Foley ルーシー・フォーリー
アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。
- 7. SEX AND VANITY Down
Kevin Kwan ケビン・クワン
中国人の血を引く令嬢ルーシーの前に、数年前イタリア旅行で出会った青年ジョージが現れ、婚約者とジョージの間でルーシーの心は揺れる。E・M・フォースターの小説で、映画でも有名な『眺めのいい部屋』のコミカルなオマージュ作品。
- 8. AMERICAN DIRT Up
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ
アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。
- 9. THE SUMMER HOUSE Down
James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ
ジョージア州の湖畔の町に建つサマー・ハウスと呼ばれる屋敷で、子どもを含む7人が殺害され、アフガニスタン帰りの元レンジャー隊員4人に容疑がかけられた。元軍人でありニューヨーク市警察の元刑事でもあるジェレマイア・クックは陸軍から捜査を命じられ、優秀なチームとともに町へ赴き、隠された真実を見つけ出そうとする。
- 10. MEXICAN GOTHIC Down
Silvia Moreno-Garcia シルヴィア・モレーノ=ガルシア
気丈で賢い令嬢ノエミは、従姉から「夫に毒殺される」という手紙を受け取り、すぐさま救出に向かう。そこは最近夢に現れるようになった不吉な屋敷で、昔繁栄した一族の暗い秘密が隠されていた。1950年代のメキシコを舞台にしたゴシック・ファンタジー。
【まとめ】
先週1位に返り咲いたオーエンズが今週もその座をキープ。ザリガニ強いです。新作は4位の1作のみ。作者のハンク・グリーンは『ペーパータウン』『さよならを待つふたりのために』などで知られる作家ジョン・グリーンの弟で、兄弟コンビのビデオブロガーとしても人気を博しています。2年前のデビュー作“AN ABSOLUTELY REMARKABLE THING”は本リストで初登場1位に輝きました。ベストテン外では、ジム・キャリーの半自伝的小説“MEMOIRS AND MISINFORMATION”が14位にランクインしています。
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中谷友紀子(なかたに ゆきこ)
翻訳者。訳書にヨルン・リーエル・ホルスト『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』、ジェニファー・イーガン『マンハッタン・ビーチ』など。
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