アメリカのベストセラー・ランキング

8月23日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. THE VANISHING HALF    Stay

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 3. 1ST CASE    Stay

James Patterson and Chris Tebbetts ジェイムズ・パタースン、クリス・テベッツ

学友のコンピュータをハッキングしたことが問題になり、マサチューセッツ工科大の大学院を退学になったアンジェラ・フート。恩師の口利きでFBIボストン支局のインターンとなった彼女は、指導役の捜査官ウィリアム・キーツとともに、ITスキルを駆使して兄弟殺人犯を追うことになる。

 

  1. 4. THE ORDER    Stay

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第20作。教皇が心臓発作で急死し、ガブリエルは友人の枢機卿に呼ばれてローマへ向かう。「ヴァチカン秘密文書館で、驚くべき書物を見つけた」死の直前に教皇がそんな手紙を残していたことから、枢機卿は教皇が殺されたのではないかと考えていた。

 

  1. 5. THE GUEST LIST    Up

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 6. NEAR DARK    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第19作。何者かに巨額の賞金をかけられ、命を狙われる身となったハーヴァス。生き延びるため、謎めいたノルウェー人の女スパイと手を組み、反撃を挑む。

 

  1. 7. SUCKER PUNCH    New!

Laurell K. Hamilton ローレル・K・ハミルトン

ヴァンパイア・ハンター、アニタ・ブレイク・シリーズの第27作。ミシガン州アッパー半島の小さなコミュニティーで、おじを惨殺した罪で若い人豹がとらえられ、死刑が予定されていた。しかし、仲間の連邦保安官から要請を受けて現地に急行したアニタは、犯行を裏づけるとされるいくつもの証拠の矛盾に気づく。

 

  1. 8. 28 SUMMERS    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 9. HARROW THE NINTH    New!

Tamsyn Muir タムシン・ミュアー

皇帝の召喚に応じて第一の惑星を訪れたハロウを待っていたのは、廃墟のように荒れ果てた宮殿だった。レズビアンのネクロマンサー、ハロウと護衛の剣術士ギデオンがともに宇宙で戦うサイエンス・ファンタジー。2020年度ローカス賞(第一長編部門)受賞のデビュー作“GIDEON THE NINTH”に続く3部作の2作目。

 

  1. 10. THE SILENT WIFE    New!

Karin Slaughter カリン・スローター

ジョージア州捜査局の特別捜査官ウィル・トレントが活躍するシリーズの第10作。州刑務所で暴動が起き、混乱のさなかに服役中の男が殺害された。捜査のために相棒のフェイスと現場にかけつけたウィルは、そこで8年前の暴行致死事件の冤罪を訴える男と出会い、過去の事件の調査に乗りだす。

 

【まとめ】

1位から6位までの順位にほとんど動きはなく、今週もディーリア・オーエンズが首位を継続するなか、7位以下のリストに新作が3つ入りました。7位のローレル・K・ハミルトンは、蘇生師でヴァンパイア・ハンターのアニタ・ブレイクが活躍するダーク・ファンタジーのシリーズ。5作目の『漆黒の血のダンス』までヴィレッジブックスより邦訳が刊行されています。9位のタムシン・ミュアーはニュージーランド出身の作家で、昨年刊行されたデビュー作“GIDEON THE NINTH”が2020年のローカス賞(第一長編部門)受賞、ネビュラ賞、ヒューゴー賞の最終候補作にも選ばれ、注目をあつめています。10位には、今年6月にウィル・トレント・シリーズ第9作の『破滅のループ』がハーパーBOOKSから翻訳刊行されたばかりのカリン・スローターがランクインしました。

    1. 吉井智津(よしい ちづ)

      翻訳者。訳書に、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)、アラベラ・カーター・ジョンソン『小さなモネ―アイリス・グレース―自閉症の少女と子猫の奇跡』(辰巳出版)など。