アメリカのベストセラー・ランキング

8月30日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. THE VANISHING HALF    Stay

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 3. A PRIVATE CATHEDRAL    New!

James Lee Burke ジェイムズ・リー・バーク

デイヴ・ロビショー・シリーズ第23作。ルイジアナ州ニュー・アイビーリアで古くから敵対しあうふたつのマフィアファミリーの犯罪行為に巻きこまれた刑事デイヴ・ロビショー。幻覚を見せ、時間をも操るような超人的な暗殺者に狙われ、自らの暗い過去とも対峙する。

 

  1. 4. 1ST CASE    Down

James Patterson and Chris Tebbetts ジェイムズ・パタースン、クリス・テベッツ

学友のコンピュータをハッキングしたことが問題になり、マサチューセッツ工科大の大学院を退学になったアンジェラ・フート。恩師の口利きでFBIボストン支局のインターンとなった彼女は、指導役の捜査官ウィリアム・キーツとともに、ITスキルを駆使して兄弟殺人犯を追うことになる。

 

  1. 5. THE ORDER    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第20作。教皇が心臓発作で急死し、ガブリエルは友人の枢機卿に呼ばれてローマへ向かう。「ヴァチカン秘密文書館で、驚くべき書物を見つけた」死の直前に教皇がそんな手紙を残していたことから、枢機卿は教皇が殺されたのではないかと考えていた。

 

  1. 6. CHOPPY WATER    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警の刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第54作。バリントンの恋人ホリーが大統領選挙で勝利をおさめるが、その就任を阻もうともくろむ極右派の敵に命を狙われる。バリントンはホリーを匿い、無事に大統領として就任するまで彼女を守ろうと奮闘する。

 

  1. 7. 28 SUMMERS    Up

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダービルド

ナンタケット島のコテージで、90年代のはじめに出会ったマロリーとジェイク。それぞれの家庭を築いたあとも、ふたりの関係はひそかに続いていた。1年に1度、週末だけのロマンス。時は過ぎて2020年、病に倒れたマロリーは自らの死を悟り、ジェイクは妻が大統領選挙に出馬し、それまでとはちがう28回目の夏を迎えていた。

 

  1. 8. THE GUEST LIST    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 9. NEAR DARK    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第19作。何者かに巨額の賞金をかけられ、命を狙われる身となったハーヴァス。生き延びるため、謎めいたノルウェー人の女スパイと手を組み、反撃を挑む。

 

  1. 10. AMERICAN DIRT    Up

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

 

【まとめ】

今週も“WHERE THE CRAWDADS SING”(邦訳『ザリガニの鳴くところ』)が1位をキープし、ベストテン内には新たに2作品が登場しました。3位のジェイムズ・リー・バークはエドガー賞を二度受賞。デイヴ・ロビショー・シリーズは30年余りつづく長寿シリーズ作品で、邦訳は第8作『燃える天使』まで刊行されています。6位のストーン・バリントン・シリーズも、年に4、5作というハイペースで刊行されている人気シリーズ。10位のジャニーン・カミンズは先週11位からの再浮上です。

 

    1. 佐藤桂(さとう けい)

      神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。