アメリカのベストセラー・ランキング

9月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. ALL THE DEVILS ARE HERE    New!

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズ第16作。パリでガマシュが家族とディナーをともにした帰り道、ガマシュのゴッドファーザーであり大富豪のホロヴィッツが襲撃されて重体となる。事件を追っていくうちに、ガマシュはホロヴィッツが数十年に渡って暗い秘密を抱えていたことを知る。嘘と欺瞞に翻弄されながら、ガマシュは真実を突きとめるため、過去と向き合っていく。

 

  1. 2. THE LYING LIFE OF ADULTS    New!

Elena Ferrante エレナ・フェッランテ

ジョヴァンナはある日父親の言葉を立ち聞きしてショックを受ける。ジョヴァンナが日に日に醜くなってきていて、父親の憎んでいる伯母のヴィットーリアに似てきていると言うのだ。それが事実なのかどうか確かめようと、ジョヴァンナは伯母を訪ねていく。そこで聞かされた話は予想外のものだった。真実を求め、ジョヴァンナは対照的な二つの街を訪れるが、そのどちらでも答えは得られそうもなかった。

 

  1. 3. TRANSCENDENT KINGDOM    New!

Yaa Gyasi ヤア・ジャシ

ギフティはスタンフォード大学医学部で博士課程に在籍し、鬱病や依存症の神経回路を研究している。将来有望なアスリートだった弟が薬物の過剰摂取で命を落とした上に、母親は鬱病でほとんどベッドから出られない生活を送っている。自分のまわりで人生に苦しむ者たちを科学的に救えないかと、日々奮闘しているのだった。研究にのめりこむ一方で、ギフティはガーナから移住してきた子供時代の自らの苦悩や、保守的な教会の価値観と対峙することになる。

 

  1. 4. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 5. THE HARBINGER II    New!

Jonathan Cahn ジョナサン・カーン

2012年刊行のベストセラー“THE HARBINGER”の続編。古代イスラエルにおける9つの神秘がアメリカの未来(リーマンショック、911など)を予言しているという前作を経て、さらに近年の世界情勢が、古代イスラエルと同じ運命を辿りつつあるという事実を、三人の“預言者”を通して物語形式で解説していく。神の警告を無視し続ければ、アメリカや世界が裁きを受ける日も近いのか。

 

  1. 6. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 7. SQUEEZE ME    Down

Carl Hiaasen カール・ハイアセン

大統領の別荘があるフロリダのパームビーチ。著名人が集う慈善パーティで、熱烈な大統領支持者の富豪女性が忽然と消えた。野生動物の専門家アンジーは、近くで発見された巨大ニシキヘビの腹が膨れているのを見て真相に気づくが、大統領は不法入国者による誘拐説を主張する。

 

  1. 8. THE GUEST LIST    Down

Lucy Foley ルーシー・フォーリー

アイルランド沖の孤島に建つ屋敷で開かれたセレブなカップルの結婚パーティの最中、死体が発見される。新郎新婦とその家族や友人たち、それぞれに秘密の事情や恨みをかかえて島に集った人々の中で、犯人はいったい誰なのか。

 

  1. 9. THRAWN ASCENDANCY: CHAOS RISING    New!

Timothy Zahn ティモシー・ザーン

『スター・ウォーズ』のスピンオフ小説「スローン」3部作の作者による、新たな「アセンダンシー」3部作の1作目。スローン大提督の若き日々を描く。未知領域チス・アセンダンシーの首都が襲撃を受け、敵の正体を探るために無名の若き軍人が送りだされる――その名はスローン。しかし調査を進めるにつれ、任務は当初とは異なる様相を呈していく。

 

  1. 10. THICK AS THIEVES    Down

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

20年前、テキサスで4人の男が現金強奪をもくろみ、そのうちの1人が殺され、1人が現金を持って失踪した。失踪した男の娘アーデンは、故郷の町へ帰ってあらためて事件を振り返るが、事件に関与した残り2名の男たちの思わくがからみ、ふたたび事態が動きだす。

 

【まとめ】

今週は大きく順位が変動し、新たに5作がランクインしました。根強い人気を誇るガマシュ警部シリーズ最新作が、またしても初登場1位です。2位のエレナ・フェッランテは『リラとわたし』に始まる「ナポリの物語」四部作(早川書房刊)が世界的なベストセラーとなり、ノーベル賞候補との声も上がっているイタリア人作家です。3位のヤア・ジャシはガーナ系アメリカ人作家で、デビュー作“HOMEGOING”で数々の受賞歴があり、これが2作目となります。5位のジョナサン・カーンはユダヤ教のラビで、シュミータという7年に一度の安息年に大きな災害やテロ、事件などが起きているというテーマで著書を多数発表しています。9位にはスター・ウォーズのスピンオフの新たな3部作が入りました。

10位のサンドラ・ブラウン、7位のカール・ハイアセンは先週からランクインしています。

 

    1. 関 麻衣子(せき まいこ)

      埼玉在住の翻訳者。埼玉生活も15年となり、酷暑とゲリラ豪雨にも慣れつつある今日この頃です(あまり外出しませんが)。訳書にヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(早川書房)、デイヴィッド・バルダッチ〈完全記憶探偵〉シリーズ(竹書房)、アルビン・シュワルツ〈スケアリーストーリーズ 怖い本〉シリーズ(岩崎書店)など。