アメリカのベストセラー・ランキング
9月27日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. ANXIOUS PEOPLE New!
Fredrik Backman フレドリック・バックマン
大晦日前のスウェーデン。子供の親権を失うまいと銀行を襲うも、あえなく失敗した犯人が、内覧会開催中のアパートメントへ逃げこむ。その場に居合わせた妊婦、老夫妻、銀行家など8人が人質に。警察の取り調べにより、その後の思いもよらない顛末が明らかになる。
- 2. SHADOWS IN DEATH New!
J.D. Robb J・D・ロブ
ワシントン・スクエア公園で若い女性が殺害され、イヴとロークは現場へ急ぐ。ロークは人だかりのなかに知った顔があるのに気づく。それは、二度と見たくないと思っていた顔、自分を狙う殺し屋の顔だった。イヴは殺人事件を捜査すると同時に、ロークの暗い過去へ踏みこんでゆく。イヴ&ローク・シリーズ第51作。
- 3. ONE BY ONE New!
Ruth Ware ルース・ウェア
ロンドンのIT企業の関係者9人がフレンチアルプスの豪華なスキーロッジを訪れる。ところがひとりの行方がわからなくなり、まもなく雪崩が起こる。脱出の手段はなく通信や電気も断たれ、管理人ふたりとともに一行は雪のなかに閉じこめられてしまう。パニックのなか、さらにひとりが殺され、ひとりまたひとりと犠牲者が増える。
- 4. ALL THE DEVILS ARE HERE Down
Louise Penny ルイーズ・ペニー
ガマシュ警部シリーズ第16作。パリでガマシュが家族とディナーをともにした帰り道、ガマシュのゴッドファーザーであり大富豪のホロヴィッツが襲撃されて重体となる。事件を追っていくうちに、ガマシュはホロヴィッツが数十年に渡って暗い秘密を抱えていたことを知る。嘘と欺瞞に翻弄されながら、ガマシュは真実を突きとめるため、過去と向き合っていく。
- 5. THE VANISHING HALF Down
Brit Bennett ブリット・ベネット
1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。
- 6. TRANSCENDENT KINGDOM Down
Yaa Gyasi ヤア・ジャシ
ギフティはスタンフォード大学医学部で博士課程に在籍し、鬱病や依存症の神経回路を研究している。将来有望なアスリートだった弟が薬物の過剰摂取で命を落とした上に、母親は鬱病でほとんどベッドから出られない生活を送っている。自分のまわりで人生に苦しむ者たちを科学的に救えないかと、日々奮闘しているのだった。研究にのめりこむ一方で、ギフティはガーナから移住してきた子供時代の自らの苦悩や、保守的な教会の価値観と対峙することになる。
- 7. THE HARBINGER II Down
Jonathan Cahn ジョナサン・カーン
2012年刊行のベストセラー“THE HARBINGER”の続編。古代イスラエルにおける9つの神秘がアメリカの未来(リーマンショック、911など)を予言しているという前作を経て、さらに近年の世界情勢が、古代イスラエルと同じ運命を辿りつつあるという事実を、三人の“預言者”を通して物語形式で解説していく。神の警告を無視し続ければ、アメリカや世界が裁きを受ける日も近いのか。
- 8. WHERE THE CRAWDADS SING Down
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 9. THE LYING LIFE OF ADULTS Down
Elena Ferrante エレナ・フェッランテ
ジョヴァンナはある日父親の言葉を立ち聞きしてショックを受ける。ジョヴァンナが日に日に醜くなってきていて、父親の憎んでいる伯母のヴィットーリアに似てきていると言うのだ。それが事実なのかどうか確かめようと、ジョヴァンナは伯母を訪ねていく。そこで聞かされた話は予想外のものだった。真実を求め、ジョヴァンナは対照的な二つの街を訪れるが、そのどちらでも答えは得られそうもなかった。
- 10. SQUEEZE ME Down
Carl Hiaasen カール・ハイアセン
大統領の別荘があるフロリダのパームビーチ。著名人が集う慈善パーティで、熱烈な大統領支持者の富豪女性が忽然と消えた。野生動物の専門家アンジーは、近くで発見された巨大ニシキヘビの腹が膨れているのを見て真相に気づくが、大統領は不法入国者による誘拐説を主張する。
【まとめ】
上位3作が初登場でした。1位は『幸せなひとりぼっち』で知られるフレドリック・バックマンのユーモアあふれる新作で、ファンからの評判も上々のようです。2018年に邦訳が刊行された著者の『ブリット=マリーはここにいた』は映画化され、『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』という邦題で今年7月に劇場公開されています。2位はイヴ&ローク・シリーズの第51作。邦訳は49作目の『差し伸べた手の先に』が8月末にヴィレッジブックスより刊行されたばかりです。3位のルース・ウェア作品の邦訳としては、『暗い暗い森の中で』と『第10客室の女』があります。今回の“ONE BY ONE”については「現代のアガサ・クリスティー」とも評されています。
トップテン外では、14位にアン・クリーヴスの新作“THE DARKEST EVENING”がはいりました。これはテレビドラマが制作されて人気を博しているヴェラ・スタンホープ・シリーズの第9作です。
-
-
国弘喜美代(くにひろ きみよ)
南東京読書会の世話人のひとり。訳書にロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ!」』(越前敏弥さんとの共訳)、ローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』など。
-