アメリカのベストセラー・ランキング

10月18日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE RETURN    New!

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

  1. 2. BATTLE GROUND    New!

Jim Butcher ジム・ブッチャー

シカゴでただひとりの「プロの」魔法使いハリー・ドレスデンが活躍する、ドレスデン・ファイル・シリーズ第17作。強大な敵・最後のティタンことエスニウが率いる魔の軍団を迎え討つハリーは、シカゴの街を守れるのか。

 

  1. 3. VIOLET BENT BACKWARDS OVER THE GRASS    New!

Lana Del Rey ラナ・デル・レイ

ニューヨーク州出身のシンガーソングライター、ラナ・デル・レイによる初の詩集。30篇以上を収録し、タイプライターで綴った作品やオリジナル写真も掲載。また本人朗読によるオーディオブックやアルバムもリリースされている。

 

  1. 4. THE EVENING AND THE MORNING    Down

Ken Follett ケン・フォレット

暗黒時代が終わりを迎えつつあった10世紀末のイングランド。ヴァイキングにさらわれた船大工、夫の故郷で暮らすために海を渡ったノルマン人の貴婦人、みずからの修道院をヨーロッパの学問の中心にしようと夢見る修道士らの波乱の人生を描く。世界的なベストセラーとなった『大聖堂』の前編にあたる物語。

 

  1. 5. THE BOOK OF TWO WAYS    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

大学院で古代エジプト学を研究していたドーンは、病気の母のために研究を諦めて帰郷し、やがて結婚して娘を出産、今はボストンの病院のホスピスで働いている。ある日、ドーンは乗っていた飛行機の事故で九死に一生を得たのち、ふと考える。自分の人生はこれでいいのだろうか、15年前に交際していた考古学研究者のワイアットは今どうしているのだろうか――

 

  1. 6. THE COAST-TO-COAST MURDERS    Down

James Patterson and J.D. Barker ジェイムズ・パタースン、J・D・バーカー

ロス市警のドブズとFBI捜査官のギンブルはロサンゼルスで起きた殺人事件の容疑者を逮捕する。だが、同様の手口の殺人が次々に発生。西海岸のロサンゼルスから東海岸のニューヨークまでの大陸横断殺人ツアーをもくろむ犯人を止めることはできるのか。

 

  1. 7. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 8. ANXIOUS PEOPLE    Up

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

大晦日前のスウェーデン。子供の親権を失うまいと銀行を襲うも、あえなく失敗した犯人が、内覧会開催中のアパートメントへ逃げこむ。その場に居合わせた妊婦、老夫妻、銀行家など8人が人質に。警察の取り調べにより、その後の思いもよらない顛末が明らかになる。

 

  1. 9. VINCE FLYNN: TOTAL POWER    Down

Kyle Mills カイル・ミルズ

原作者ヴィンス・フリンの他界後、カイル・ミルズが第14作から書き継いでいるミッチ・ラップ・シリーズの第19作。アメリカの電力網を壊滅させるテロがおこなわれる。いかにしてこの未曾有のテロを実行できたのか、その方法がわからなければ復旧には果てしない時間がかかる。CIAのラップはコンピュータも通信ネットワークも使えない状況で実行犯を追う。

 

  1. 10. JACK    New!

Marilynne Robinson マリリン・ロビンソン

長老派牧師の息子でありながら問題児だったジャック・ボートンは、故郷の田舎町アイオワ州ギリアドを離れ、セントルイスで暮らしていた。そこで同じ牧師の娘であり教師をしている黒人女性デラと出会い、当時まだ根強かった人種差別という障壁を越えて愛を育む。

 

 

【まとめ】

今週は4作品が新たにランクインし、トップ3をいずれも新作が占めています。2位にはいったドレスデン・ファイル・シリーズ“BATTLE GROUND”は、本年夏に刊行された前作“PEACE TALKS”の続編的なストーリーとのこと。同シリーズの邦訳は第3作『ドレスデン・ファイル3―血塗られた墓―』(ハヤカワ文庫)まで出ています。10位に登場したマリリン・ロビンソンはピューリッツァー賞、全米批評家賞などを受賞している作家で、本作品はアイオワ州ギレアドという架空の田舎町を舞台にした『ギレアド』(新教出版社)、“HOME” 、“LILA”の3作品の続編にあたります。また、今週5位は当コーナーがお休みだった先週に初登場1位を獲得したジョディ・ピコーの新作。ピコーは『私の中のあなた』(ハヤカワ文庫)などで知られ、邦訳では昨年5月に刊行された『SMALL GREAT THINGS 小さくても偉大なこと』(上・下/ポプラ文庫)が最新作です。6位の “THE COAST-TO-COAST MURDERS”は先週3位で初登場。共著者のJ・D・バーカーは、『悪の猿』、『嗤う猿』につづく〈四猿〉三部作の完結編『猿の罰』が、10月16日にハーパーBOOKSより刊行予定です。そして、先週5位に初登場していたクレイグ・ジョンソンのウォルト・ロングマイヤ・シリーズ最新作“NEXT TO LAST STAND”は、今週早くもランク外へ。さらにあのロングセラー“WHERE THE CRAWDADS SING”(『ザリガニの鳴くところ』)が11位と、惜しくもトップテンからはずれています。

 

    1. 佐藤桂(さとう けい)

      神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。