アメリカのベストセラー・ランキング

11月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. A TIME FOR MERCY    New!

John Grisham ジョン・グリシャム

1990年、ミシシッピ州クラントン。弁護士のジェイク・ブリガンスは、地元の議員を殺した罪に問われた16歳の内気な少年、ドリューの弁護を引き受ける。人びとの多くは迅速な裁判と死刑判決を望んでいたが、事件について調べるうち、ブリガンスはそこに隠された真実をつきとめる。ブリガンスを主人公にしたシリーズの、6年ぶりの新作。

 

  1. 2. THE RETURN    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

  1. 3. THE SEARCHER    Up

Tana French タナ・フレンチ

都会の犯罪捜査と離婚のごたごたで疲れ果てた元刑事カル・フーパーは、25年務めたシカゴ警察を辞めてアイルランドの小さな村へと居を移す。だが、凶悪事件と無縁の土地で静かな暮らしを始めようとしていた矢先、行方不明になった兄弟を捜してほしいと助けを求める少年がカルのもとを訪れる。エドガー賞作家によるスタンドアロン・スリラー新作。

 

  1. 4. THE EVENING AND THE MORNING    Up

Ken Follett ケン・フォレット

暗黒時代が終わりを迎えつつあった10世紀末のイングランド。ヴァイキングにさらわれた船大工、夫の故郷で暮らすために海を渡ったノルマン人の貴婦人、みずからの修道院をヨーロッパの学問の中心にしようと夢見る修道士らの波乱の人生を描く。世界的なベストセラーとなった『大聖堂』の前編にあたる物語。

 

  1. 5. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 6. THE BOOK OF TWO WAYS    Up

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

大学院で古代エジプト学を研究していたドーンは、病気の母のために研究を諦めて帰郷し、やがて結婚して娘を出産、今はボストンの病院のホスピスで働いている。ある日、ドーンは乗っていた飛行機の事故で九死に一生を得たのち、ふと考える。自分の人生はこれでいいのだろうか、15年前に交際していた考古学研究者のワイアットは今どうしているのだろうか――

 

  1. 7. LEAVE THE WORLD BEHIND    Down

Rumaan Alam ルマーン・アラム

一週間の休暇をロングアイランドの別荘地で過ごそうと、豪奢な邸宅を借りてやってきた白人家族のもとに、物件の持ち主を名乗る黒人夫妻が突然現れた。夫妻はニューヨークじゅうが停電でどこへも行けないと言うが、テレビもインターネットも携帯電話も不通で街のようすはわからない。非日常の状況下で居合わせることになった2つの家族を通し、人種、階級、親子など現代の様相を描く。全米図書賞最終候補作。

 

  1. 8. TROUBLES IN PARADISE    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

事故死した夫ラスが生前家族に隠して二重生活を送っていたカリブの島へ移り住んだアイリーンは、突然やってきたFBI捜査官の話から、またも知らなかった夫の一面を知ることになる。ラスが乗っていたヘリコプターの墜落は事故ではなかったのか。“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家が2018年から毎年秋に発表しているウインター・イン・パラダイス3部作完結編。

 

  1. 9. THE VANISHING HALF    Up

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 10. JINGLE ALL THE WAY    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

不動産会社の最高幹部のエヴァリーは、仕事こそが人生であり、そこには何も、誰もはいりこむ余地はないと思っていた。しかし上司のアドバイスで、12月は丸々、休暇を取ることになり、気が進まないながらもアマゾンの密林クルーズに出かける。その船上でナチュラリストのアッシャーと出会った彼女は、このクルーズが忘れられないものになると思い知る。

 

 

【まとめ】

今週は新作が2作ランクインしました。初登場1位は、ジョン・グリシャムの“A TIME FOR MERCY”。“A TIME TO KILL”、“SYCAMORE ROW”につづく、弁護士ジェイク・ブリガンスの活躍を描いたシリーズの3作目です。シリーズ1作目の“A TIME TO KILL”はグリシャムのデビュー作で、マシュー・マコノヒー主演で映画化されました。日本では『評決のとき』というタイトルで公開されています。10位には、ホリデイ・シーズンを先取りしたタイトルが初登場しました。著者のデビー・マッコーマーは、テレビドラマ化もされているシーダー・コーヴ・シリーズなどで知られる人気作家です。

 

 

 

    1. 吉野山早苗(よしのやま さなえ)

      翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。