アメリカのベストセラー・ランキング

11月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

1.THE SENTINEL    New!

Lee Child and Andrew Child  リー・チャイルド、アンドリュー・チャイルド

ジャック・リーチャー・シリーズ第25作。テネシーの小さな町で、ジャックは暴漢に囲まれた男を助ける。それは失業したばかりのITマネージャーで、自分では気づかないまま大きな秘密を握っているらしい。ただならぬ陰謀と隠蔽のにおいを嗅ぎ取ったジャックは、巨大なサイバー犯罪の世界へと巻きこまれていく。

 

2.A TIME FOR MERCY    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

1990年、ミシシッピ州クラントン。弁護士のジェイク・ブリガンスは、地元の議員を殺した罪に問われた16歳の内気な少年、ドリューの弁護を引き受ける。人びとの多くは迅速な裁判と死刑判決を望んでいたが、事件について調べるうち、ブリガンスはそこに隠された真実をつきとめる。ブリガンスを主人公にしたシリーズの、6年ぶりの新作。

 

3.THE RETURN    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

4.THREE WOMEN DISAPPEAR    New!

James Patterson and Shan Serafin ジェイムズ・パタースン、シャン・セラフィン

マフィアの金庫番が自宅で殺され、家にいた3人の女、妻と料理人とメイドが姿を消した。事件を担当するのはショーン・ウォルシュ刑事、じつはショーンの妻がその家の料理人で、消えた女のひとりだった。そして、女たちが消えた深い事情がしだいに明らかになる。

 

5.THE WONDER BOY OF WHISTLE STOP    New!

Fannie Flagg ファニー・フラッグ

年老いたバディ・スレッドグッドは、生まれ育った町ホイッスルストップを最後に一度訪れることにする。駅は閉鎖され、町はゴーストタウンとなっていたが、昔いた懐かしい人たちの驚くべき人生を発見していくうちに、自分や家族の人生にも思いがけない変化が生じる。

 

6.THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

7.THE NOEL LETTERS    New!

Richard Paul Evans リチャード・ポール・エヴァンズ

ニューヨークの出版社で働く女性編集者ノエルは、生まれ故郷で亡き父が遺した書店を受け継ぐはめになる。暮らしの変化に翻弄されるなか、ノエルのもとに差出人不明の手紙が届きはじめ、やがてノエルはつらい過去やこれからの人生と向き合うことに……。心温まるクリスマス・ストーリー。

 

8.TRULY, MADLY, DEEPLY    New!

Karen Kingsbury カレン・キングズベリー

警察官を目指す18歳のトミー。彼にはアナリーという恋人がいるが、癌に侵されているとわかる。アナリーが病と闘う一方、トミーは自分の出生の秘密と警察官だった亡き祖父のことを知り、人生への決意をあらたにする。

 

9.THE EVENING AND THE MORNING    Down

Ken Follett ケン・フォレット

暗黒時代が終わりを迎えつつあった10世紀末のイングランド。ヴァイキングにさらわれた船大工、夫の故郷で暮らすために海を渡ったノルマン人の貴婦人、みずからの修道院をヨーロッパの学問の中心にしようと夢見る修道士らの波乱の人生を描く。世界的なベストセラーとなった『大聖堂』の前編にあたる物語。

 

10.THE SEARCHER    Down

Tana French タナ・フレンチ

都会の犯罪捜査と離婚のごたごたで疲れ果てた元刑事カル・フーパーは、25年務めたシカゴ警察を辞めてアイルランドの小さな村へと居を移す。だが、凶悪事件と無縁の土地で静かな暮らしを始めようとしていた矢先、行方不明になった兄弟を捜してほしいと助けを求める少年がカルのもとを訪れる。エドガー賞作家によるスタンドアロン・スリラー新作。

 

【まとめ】

本コーナーがお休みだった先週はランキングにあまり動きがありませんでしたが、今週は5作品がいっきに登場しました。1位のジャック・リーチャー・シリーズ最新作は、著者のリー・チャイルドが弟のアンドリュー・チャイルドと共同執筆をはじめたことで話題を呼んでいます。今後の引退を踏まえ、弟のアンドリューが徐々に執筆を引き継ぐとのこと。弟はもともとアンドリュー・グラントとして作家活動をしていましたが、本シリーズを書き継ぐにあたってチャイルドを名乗ることになりました。4位のパタースンとセラフィンは4度目の共作ですが、どれも苦境に立たされた強い女を題材にしています。5位は1987年に発表されたフラッグの小説Fried Green Tomatoes at the Whistle Stop Caféがもとになっています。5位は1987年に発表されたフラッグの小説Fried Green Tomatoes at the Whistle Stop Cafe(邦訳タイトル『フライド・グリーン・トマト』)がもとになっていて、映画化もされています。7位は『クリスマス・ボックス』の作者によるクリスマスシーズンにぴったりの作品。8位のキングズベリーについても、クリスマスの名作と言われる〈赤い手袋の奇跡シリーズ〉が邦訳されています。

 

    1. 唐木田みゆき(からきだ みゆき)

      翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』など。