アメリカのベストセラー・ランキング

12月27日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. READY PLAYER TWO    Stay

Ernest Cline アーネスト・クライン

ポップ・カルチャー満載の近未来SFアドベンチャー『ゲームウォーズ』(池田真紀子訳、SBクリエイティブ)の続編。前作はスピルバーグ監督により映画化されている(邦題『レディ・プレイヤー1』)。仮想空間〈オアシス〉の創始者ハリデーの遺産をめぐる“イースターエッグ”争奪戦を戦ったティーンエイジャーのウェイド・ワッツは、仮想世界にも現実世界にも大変革をもたらしかねないテクノロジーをハリデーが隠していたことを発見し、新たな冒険をはじめる。

 

  1. 2. A TIME FOR MERCY    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

1990年、ミシシッピ州クラントン。弁護士のジェイク・ブリガンスは、地元の議員を殺した罪に問われた16歳の内気な少年、ドリューの弁護を引き受ける。人びとの多くは迅速な裁判と死刑判決を望んでいたが、事件について調べるうち、ブリガンスはそこに隠された真実をつきとめる。ブリガンスを主人公にしたシリーズの、6年ぶりの新作。

 

  1. 3. DEADLY CROSS    Stay

James Patterson ジェイムズ・パタースン

刑事アレックス・クロス・シリーズ第27作。ワシントンDCの学校の駐車場にとめられたリムジンの車内で、学校長の男性と現職副大統領の元夫人が殺害された。華やかな暮らし向きだった元夫人ケイの過去を探るため、アレックスはFBI特別捜査官とともにアラバマへ向かう。

 

  1. 4. THE RETURN    Stay

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

  1. 5. THE VANISHING HALF    Up

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 6. DAYLIGHT    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

FBI捜査官アトリー・パイン・シリーズの第3作。30年前に誘拐された双子の姉妹マーシーの行方を追うアトリーは、ついに誘拐犯の素性をつきとめ、その人物を追う過程で陸軍の捜査官ジョン・プラーと出くわして協力しあう成りゆきに。著者の別シリーズの主人公ジョン・プラーが登場するクロスオーバー作品。

 

  1. 7. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 8. THE LAW OF INNOCENCE    Down

Michael Connelly マイクル・コナリー

リンカーン弁護士ことミッキー・ハラー・シリーズ第6作。リンカーンのトランクから死体が発見される。被害者はかつての依頼人で、ハラーは殺人の容疑で逮捕されてしまう。だれが自分を罠にかけたのか――異母兄ハリー・ボッシュらの手を借りて真犯人を捜しながら、ハラーは法廷で無罪を勝ちとろうと力を尽くす。

 

  1. 9. THE AWAKENING    Stay

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ドラゴン・ハート・レガシーと題する三部作の第1作。日々の生活に追われるばかりだった20代のブリーン・ケリーは、亡き父が自分名義の口座に遺してくれた大金を発見し、不思議な導きによってアイルランドへの旅に出る。妖精や人魚たちが棲むその国は、ブリーンの運命が待つ地でもあった。

 

  1. 10. THE SENTINEL    Down

Lee Child and Andrew Child リー・チャイルド、アンドリュー・チャイルド

ジャック・リーチャー・シリーズ第25作。テネシーの小さな町で、リーチャーは暴漢に囲まれた男を助ける。それは失業したばかりのITマネージャーで、自分では気づかないまま大きな秘密を握っているらしい。ただならぬ陰謀と隠蔽のにおいを嗅ぎ取ったリーチャーは、巨大なサイバー犯罪の世界へと巻きこまれていく。

 

【まとめ】

今週は1位から4位までの順位が先週と変わらず動きの少ない結果でしたが、『ザリガニの鳴くところ』が4週間ぶりにベストセラー・リストにもどってきました。これで119週にわたってランクインしていることになります。新作は10位内にはないものの、14位に“HAMNET”がはいりました。タイトルの“ハムネット”はシェイクスピアの息子の名前です。11歳のときに亡くなった彼については謎に包まれた部分も多く、それ故にか、さまざまな形で物語がつくられているようです。彼を主人公にした芝居もあり、イギリスやアイルランドでは頻繁に上演されています。2018年には、『麦の穂を揺らす風』(ケン・ローチ監督)や『ダンケルク』(クリストファー・ノーラン監督)などで知られるキリアン・マーフィの息子のアラン・マーフィを主演に迎え、イギリスをはじめ香港やアメリカでも幕をあけました。

 

 

    1. 吉野山早苗(よしのやま さなえ)

      翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。