アメリカのベストセラー・ランキング

1月31日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE VANISHING HALF    Up

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 2. THE SCORPION’S TAIL    New!

Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

考古学者ノーラ・ケリーを主人公とするシリーズの第2作。ニューメキシコ州の金鉱の跡地でミイラ化した男の死体が見つかる。新米FBI捜査官コリー・スワンソンの求めで捜査に協力することになったサンタフェ考古学研究所のケリーは、死体のそばから純金の十字架を発見。一帯に伝わる隠された財宝の伝説が男の死と関係しているらしいのだが――

 

  1. 3. NEIGHBORS    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

ハリウッドの大物女優だったメレディスは、芸能活動を休止してサンフランシスコで孤独な生活を送っていた。そんなとき、カリフォルニア北部が大地震に襲われる。メレディスはほとんど被害のなかった自宅を避難場所として提供するが、やがて思いもよらない形で隣人たちとの絆が生まれていく。

 

  1. 4. STAR WARS: LIGHT OF THE JEDI    Down

Charles Soule チャールズ・ソウル

スター・ウォーズ本編の200年前の世界を描くハイ・リパブリック・シリーズ第1作。元老院の善政とジェダイたちの守護によって銀河共和国は繁栄を謳歌していたが、独自のハイパースペース航行を駆使するナイルという海賊の侵略を受ける。

 

  1. 5. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 6. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 7. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 8. ANXIOUS PEOPLE    Up

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

大晦日前のスウェーデン。子供の親権を失うまいと銀行を襲うも、あえなく失敗した犯人が、内覧会開催中のアパートメントへ逃げこむ。その場に居合わせた妊婦、老夫妻、銀行家など8人が人質に。警察の取り調べにより、その後の思いもよらない顛末が明らかになる。

 

  1. 9. THE RETURN    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

  1. 10. A TIME FOR MERCY    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

1990年、ミシシッピ州クラントン。弁護士のジェイク・ブリガンスは、地元の議員を殺した罪に問われた16歳の内気な少年、ドリューの弁護を引き受ける。人びとの多くは迅速な裁判と死刑判決を望んでいたが、事件について調べるうち、ブリガンスはそこに隠された真実をつきとめる。ブリガンスを主人公にしたシリーズの、6年ぶりの新作。

 

【まとめ】

初登場の多かった先週から一転、今週新たにランクインしたのは2位の1作のみでした。FBI捜査官ペンダーガスト・シリーズで知られるプレストンとチャイルドのコンビによる、考古学者ノーラ・ケリー・シリーズの第2作です。ノーラ・ケリーはペンダーガスト・シリーズ第1作『殺人者の陳列棚』(二見文庫)にも登場するキャラクター。共著作品のほか、ダグラス・プレストンは『猿神のロスト・シティ 地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ』(NHK出版)、リンカーン・チャイルドは『第三の扉』(オークラ出版)などそれぞれの単著作品も邦訳出版されています。

 

    1. 満園真木(みつぞの まき)

      東京在住の翻訳者。2018年に単行本で刊行された『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル/東京創元社)が文庫化され、1/20に発売されました。先日、獄中での死亡が報じられた音楽プロデューサーのフィル・スペクターによる女優射殺事件や、BLM運動の先駆けとなったトレイヴォン・マーティン射殺事件、画家ゴッホの謎めいた自殺など、さまざまな死にまつわる真相にベテラン検死医が迫るノンフィクションです。訳書はほかに『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー/東京創元社)、『ハーフムーン街の殺人』(アレックス・リーヴ/小学館文庫)など。