アメリカのベストセラー・ランキング

2月14日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE RUSSIAN    New!

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第13作。ニューヨークで起きた連続殺人事件の捜査にあたっていたベネット。自身の結婚の予定を数週間後に控え、解決を急ぐが、酷似した手口の未解決事件が他都市で複数起きていたことが判明し捜査は難航する。

 

  1. 2. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 3. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 4. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 5. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 6. THE PUSH    Down

Ashley Audrain アシュリー・オードレイン

幼いころに母親から虐待を受けていたブライスは、優しくあたたかい母親になろうと懸命に赤ん坊の世話をしていたが、娘のヴァイオレットの様子に違和感を覚える。だが夫には思いこみだと言われ、自分の正気を疑いはじめる。息子サムが生まれ、ようやく思い描いたとおりの母子の絆を築いていくが、思いもよらぬ悲劇に見舞われる。

 

  1. 7. THE RETURN    Up

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

医師として従軍したアフガニスタンで大怪我を負ったトレヴァーは、ノースカロライナ州へもどり、祖父が遺した小屋で蜂の世話をしながら暮らしはじめる。近隣のトレーラーハウスに住む10代の少女キャリーと知り合い、保安官代理のナタリーと恋に落ちて、ふたりとのかかわりから祖父の死にまつわる謎について知ることになる。

 

  1. 8. NEIGHBORS    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

ハリウッドの大物女優だったメレディスは、芸能活動を休止してサンフランシスコで孤独な生活を送っていた。そんなとき、カリフォルニア北部が大地震に襲われる。メレディスはほとんど被害のなかった自宅を避難場所として提供するが、やがて思いもよらない形で隣人たちとの絆が生まれていく。

 

  1. 9. READY PLAYER TWO    Stay

Ernest Cline アーネスト・クライン

ポップ・カルチャー満載の近未来SFアドベンチャー『ゲームウォーズ』(池田真紀子訳、SBクリエイティブ)の続編。前作はスピルバーグ監督により映画化されている(邦題『レディ・プレイヤー1』)。仮想空間〈オアシス〉の創始者ハリデーの遺産をめぐる“イースターエッグ”争奪戦を戦ったティーンエイジャーのウェイド・ワッツは、仮想世界にも現実世界にも大変革をもたらしかねないテクノロジーをハリデーが隠していたことを発見し、新たな冒険をはじめる。

 

  1. 10. ANXIOUS PEOPLE    Up

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

大晦日前のスウェーデン。子供の親権を失うまいと銀行を襲うも、あえなく失敗した犯人が、内覧会開催中のアパートメントへ逃げこむ。その場に居合わせた妊婦、老夫妻、銀行家など8人が人質に。警察の取り調べにより、その後の思いもよらない顛末が明らかになる。

 

【まとめ】

今週初登場の新作は1つ、ヒットメーカー、ジェイムズ・パタースンのシリーズ最新作が1位にランクインしました。6位のアシュリー・オードレインは本作が小説デビューとなるカナダ人作家で、本連載がお休みだった先週4位に初トップテン入りしていました。同じく先週、『無痛の子』、『棺の女』(小学館文庫、満園真木訳)などのリサ・ガードナーの新作“BEFORE SHE DISAPPEARED”が7位に登場していました。また、ペーパーバック・フィクション部門では、話題のNetflixドラマ『ブリジャートン家』原作シリーズ第1作“THE DUKE AND I”が1位を快走中。竹書房ラズベリーブックスより邦訳が刊行されているこのシリーズは、新装版となって第1作『ブリジャートン家1 恋のたくらみは公爵と』(村山美雪訳)が2月10日発売予定とのこと。

 

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。