アメリカのベストセラー・ランキング

2月21日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE FOUR WINDS    New!

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 2. THE SURVIVORS    New!

Jane Harper ジェイン・ハーパー

キーラン・エリオットの人生は、不注意なミスを犯した日に永遠に変わってしまった。彼は罪悪感にさいなまれながら、海辺の小さな町に住む両親のもとを訪れる。しかし海岸で死体が見つかると、沈んだ船や行方不明の少女に関する、長く隠されてきた秘密が姿を現しはじめる。

 

  1. 3. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 4. THE RUSSIAN    Down

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第13作。ニューヨークで起きた連続殺人事件の捜査にあたっていたベネット。自身の結婚の予定を数週間後に控え、解決を急ぐが、酷似した手口の未解決事件が他都市で複数起きていたことが判明し捜査は難航する。

 

  1. 5. THE SANATORIUM    New!

Sarah Pearse サラ・ピアース

エリン・ワーナーは、疎遠になっていた兄弟のアイザックから婚約パーティに招待された。会場は、かつてのサナトリウムを改装したアルプスにあるホテルだ。猛吹雪の中を到着したとたん、エリンはホテルの不穏な空気を感じる。そして翌日、アイザックの婚約者のロールが姿を消す。

 

  1. 6. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

 

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 7. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 8. SEND FOR ME    New!

Lauren Fox ローレン・フォックス

ウィスコンシンに住むクレアは、祖母アネリスの書いた手紙の束を見つける。アネリスはユダヤ人で、第二次大戦に向かいつつあるドイツから、夫と娘とともになんとかアメリカに逃れていた。クレアは手紙を読み、家族が払ってきた犠牲を知る。3世代にわたって語られる、母と娘、義務と恩義、希望と赦しについての物語。

 

  1. 9. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 10. GIRL A    New!

Abigail Dean アビゲイル・ディーン

アレックス・グレイシーはかつて、兄弟姉妹とともにとある宗教の狂信的な信者だった両親のもとから逃げ出し、保護されて“ガールA”と呼ばれた。過去とは決別していた彼女だが、終身刑で刑務所に服役していた母親が死に、悲惨な子ども時代と向き合うことになる。それは兄弟姉妹との関係を見直し、それぞれの秘密が明かされることでもあった。

 

 

【まとめ】

新作が5作ランクインしました。1位のハナの邦訳作品には、ふたつの世界大戦下で懸命に生きる姉妹を描いた『ナイチンゲール(上)(下)』(加藤洋子訳/小学館文庫)があります。2位のハーパーは、オーストラリアを舞台にフォーク連邦警察官が活躍する『渇きと偽り』『潤みと翳り』(青木創訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)などで知られています。5位のピアースは、この“THE SANATORIUM”がデビュー作。スイスに住んでいたとき、余暇にアルプスの山々に登っていたことがインスピレーションになったということです。8位の“SEND FOR ME”は、著者フォックス自身の家族の手紙をもとに書かれた物語です。10位の“GIRL A”で作家としてデビューしたディーンは、Googleで弁護士をしながら2作目を執筆中とのこと。“GIRL A”はヨハン・レンク(ドラマ 『チェルノブイリ』など)を監督に迎え、ドラマ化の話が進んでいるようです。

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。