アメリカのベストセラー・ランキング

2月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE FOUR WINDS    Stay

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 2. FAITHLESS IN DEATH            New!

J.D. Robb J.D.ロブ

イヴ&ローク・シリーズの52作目。ニューヨーク市警の警部補イヴは、女性彫刻家の殺害事件を担当することになる。被害者はハンマーで撲殺され、当初は嫉妬深い恋人の犯行と思われたが、白人至上主義と女性蔑視に染まった狂信的組織の関与がしだいに明らかになっていく。

 

 

  1. 3. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 4. THE SANATORIUM    Up

Sarah Pearse サラ・ピアース

エリン・ワーナーは、疎遠になっていた兄弟のアイザックから婚約パーティに招待された。会場は、かつてのサナトリウムを改装したアルプスにあるホテルだ。猛吹雪の中を到着したとたん、エリンはホテルの不穏な空気を感じる。そして翌日、アイザックの婚約者のロールが姿を消す。

 

  1. 5. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 6. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 7. THE RUSSIAN    Down

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第13作。ニューヨークで起きた連続殺人事件の捜査にあたっていたベネット。自身の結婚の予定を数週間後に控え、解決を急ぐが、酷似した手口の未解決事件が他都市で複数起きていたことが判明し捜査は難航する。

 

  1. 8. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 9. THE PARIS LIBRARY                New!

Janet Skeslien Charles ジャネット・スカスリーン・チャールズ

モンタナに住む孤独な女子高校生リリーは、近所の老婦人オディールと心を通わせる。オディールは半世紀前、ナチス占領下のパリでアメリカン・ライブラリーの図書館員だった。占領下の抑圧と緊張のなかで図書館と書籍を守るための抵抗運動がひそかにおこなわれていたことをリリーは知るが、やがてオディールの苦い後悔と秘密にまでふれることになる。

 

 

  1. 10. ANXIOUS PEOPLE    Up

Fredrik Backman フレドリック・バックマン

リック・バックマン

大晦日前のスウェーデン。子供の親権を失うまいと銀行を襲うも、あえなく失敗した犯人が、内覧会開催中のアパートメントへ逃げこむ。その場に居合わせた妊婦、老夫妻、銀行家など8人が人質に。警察の取り調べにより、その後の思いもよらない顛末が明らかになる。

 

 

【まとめ】

今週はあらたに2作ランクインしました。2位のJ.D.ロブはロマンス小説のベストセラー作家ノーラ・ロバーツの別名義のひとつで、イヴ&ローク・シリーズは21世紀半ばの近未来を舞台にしたロマンティック・サスペンスです。順調に邦訳が進み、現在48作目(日本のナンバリングでは第49巻)の『差し伸べた手の先に』(小林浩子訳 ヴィレッジブックス)まで出版、今月2月26日には第50巻『レディ・ジャスティスの裁き』(中谷ハルナ訳 ヴィレッジブックス)が刊行される予定です。9位ジャネット・スカスリーン・チャールズは初登場で、小説は2作目。ナチス占領下の図書館に光を当てた作品として注目されています。

 

 

唐木田みゆき(からきだ みゆき)

翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』など。3月17日にサマンサ・ダウニング著のドメスティック・スリラー『殺人記念日』が早川書房から刊行予定です。どうぞよろしくお願いします。