アメリカのベストセラー・ランキング

3月14日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE FOUR WINDS    Up

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 2. A COURT OF SILVER FLAMES    Down

Sarah J. Maas サラ・J・マース

〈A Court of Thorns and Roses〉シリーズ第5作。4作目までの主人公フェイアの姉、ネスタの物語。気性の荒いネスタは、民族間の争いの恐ろしさを忘れられず独りきりで過ごす日々を送っていた。そんな折、ネスタは元々そりの合わない兵士のカシアンと戦闘の訓練を一緒に受けねばならない事態に陥る。やがて、迫りくる敵と対峙のときが近づく。

 

  1. 3. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 4. THE SANATORIUM    Up

Sarah Pearse サラ・ピアース

エリン・ワーナーは、疎遠になっていた兄弟のアイザックから婚約パーティに招待された。会場は、かつてのサナトリウムを改装したアルプスにあるホテルだ。猛吹雪の中を到着したとたん、エリンはホテルの不穏な空気を感じる。そして翌日、アイザックの婚約者のロールが姿を消す。

 

  1. 5. THE VANISHING HALF    Down

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

  1. 6. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Stay

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 7. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 8. THE KAISER’S WEB    New!

Steve Berry スティーブ・ベリー

アメリカ合衆国司法省の元工作員が活躍するコットン・マローン・シリーズの第16作。1945年4月30日にベルリンの総統地下壕でほんとうは何があったのか。通説を覆し、きたるドイツの国政選挙を左右しかねない書類の存在が明らかになり、コットン・マローンは真相を突き止めるべくチリから南アフリカ、スイスへ向かう。

 

  1. 9. FAITHLESS IN DEATH    Stay

J.D. Robb J.D.ロブ

イヴ&ローク・シリーズの52作目。ニューヨーク市警の警部補イヴは、女性彫刻家の殺害事件を担当することになる。被害者はハンマーで撲殺され、当初は嫉妬深い恋人の犯行と思われたが、白人至上主義と女性蔑視に染まった狂信的組織の関与がしだいに明らかになっていく。

 

  1. 10. THE RUSSIAN    Down

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第13作。ニューヨークで起きた連続殺人事件の捜査にあたっていたベネット。自身の結婚の予定を数週間後に控え、解決を急ぐが、酷似した手口の未解決事件が他都市で複数起きていたことが判明し捜査は難航する。

 

【まとめ】

 今週の新作は、8位のスティーブ・ベリーによるシリーズ作品のみでした。コットン・マローン・シリーズは近年、1年に1冊のペースで刊行されています。シリーズの邦訳は第1作『テンプル騎士団の遺産』までですが、シリーズ以外の著者の作品としては『ファティマ 第三の予言』と『ロマノフの血脈』が邦訳されています。トップテン外では、11位にジョアン・フルークの“TRIPLE CHOCOLATE CHEESECAKE MURDER”、12位にカレー・マリン・モニング“KINGDOM OF SHADOW AND LIGHT”がはいりました。前者はお菓子探偵シリーズの第27作、後者はフィーバー・シリーズの第11作です。

 なお、このコーナーがお休みだった先週は、サラ・J・マースの異世界ファンタジー“A COURT OF SILVER FLAMES”が初登場で首位を奪取したほか(今週は2位)、10位にJ・A・ジャンスの保安官ジョアンナ・ブレイディ・シリーズ第19作“MISSING AND ENDANGERED”、11位にマーク・グリーニーのグレイマン・シリーズ第10作“RELENTLESS”がランクインしました(こちらの2作は、今週は15位までにはいりませんでした)。

 

 

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

訳書にロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ!」』(越前敏弥さんとの共訳)、ローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』など。