アメリカのベストセラー・ランキング
3月21日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. LIFE AFTER DEATH New!
Sister Souljah シスター・ソウルジャ
1999年に刊行されてベストセラーとなった“THE COLDEST WINTER EVER”の続編。麻薬密売組織のボスの娘であるウィンターは、みずからの欲望のままに生きた結果、逮捕されて服役していた。15年後にようやく釈放されることとなり、リアリティ番組がその模様を撮影していたところ、カメラの目の前で思いがけない事件が起こる。
- 2. THE FOUR WINDS Down
Kristin Hanna クリスティン・ハナ
1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。
- 3. KLARA AND THE SUN New!
Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ
世界同時発売されたノーベル文学賞受賞作家の最新長篇。人工知能を搭載し、人間の子供の親友になるために作られたロボットである「人工親友」のクララは、ジョジーという病弱な少女と出会い、友情を育んでいく。邦題は『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房より刊行。
- 4. DARK SKY New!
C.J. Box C・J・ボックス
ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズの第21作。シリコンバレーのCEOのエルク狩りに同行することになったピケット。森を進むうちにCEOへの復讐をもくろむ何者かに追跡されていることがわかり、武器や通信手段を失いながらも、機転と知識を駆使して立ち向かう。
- 5. THE AFFAIR New!
Danielle Steel ダニエル・スティール
インテリアデザイナーのナディアは、ベストセラー作家の夫ニコラスが浮気していることを知る。相手はハリウッドの若手女優で、ニコラスの子供を身ごもっているらしい。ナディアの三人の姉妹は家族の力になろうとして善意から口を出すが、それぞれの結婚に対する考え方は大きく異なっていた。
- 6. THE MIDNIGHT LIBRARY Down
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
- 7. THE LOST APOTHECARY New!
Sarah Penner サラ・ペナー
18世紀のロンドンに秘密の薬局があった。店主は男に暴力を振るわれている女のために毒薬を売っていたが、何者かに殺害されたという。歴史学者のキャロリンはみずからも夫の暴力に苦しめられていたが、200年前のこの殺人事件の謎を解き明かす手がかりを得る。
- 8. THE VANISHING HALF Down
Brit Bennett ブリット・ベネット
1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。
- 9. INFINITE COUNTRY New!
Patricia Engel パトリシア・エンゲル
内戦がつづくコロンビア。マウロとエレナの夫婦は長女を連れて母国を離れ、一時滞在ビザでアメリカに入国する。夫婦はアメリカでの生活をはじめ、さらに子供をふたりもうけるが、マウロが不法移民として強制送還され、家族は離れ離れになってしまう。
- 10. A COURT OF SILVER FLAMES Down
Sarah J. Maas サラ・J・マース
〈A Court of Thorns and Roses〉シリーズ第5作。4作目までの主人公フェイアの姉、ネスタの物語。気性の荒いネスタは、民族間の争いの恐ろしさを忘れられず独りきりで過ごす日々を送っていた。そんな折、ネスタは元々そりの合わない兵士のカシアンと戦闘の訓練を一緒に受けねばならない事態に陥る。やがて、迫りくる敵と対峙のときが近づく。
【まとめ】
10位以内に新作が6作登場する入れ替わりの激しい週となりました。1位のシスター・ソウルジャはアフリカ系アメリカ人の政治活動家で、人種差別に反対する運動をおこなっていることで知られています。3位はカズオ・イシグロの最新作。『わたしを離さないで』と『日の名残り』の流れを汲む作品であると著者はコメントしています。4位のジョー・ピケット・シリーズの邦訳は、第12作の『鷹の王』までが講談社から、第13作の『発火点』が東京創元社から刊行されています。5位は常連のスティール。7位のペナーはこれがデビュー作になります。9位のエンゲルは本ランキング初登場で、自身もコロンビア系移民の家に生まれたという経歴を持っています。
青木創(あおき はじめ) |
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翻訳者。 訳書にL・チャイルド『葬られた勲章』『ミッドナイト・ライン』、D・ワッツ『偶然の科学』など。 |