アメリカのベストセラー・ランキング

3月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. LIFE AFTER DEATH    Stay

Sister Souljah シスター・ソウルジャ

1999年に刊行されてベストセラーとなった“THE COLDEST WINTER EVER”の続編。麻薬密売組織のボスの娘であるウィンターは、みずからの欲望のままに生きた結果、逮捕されて服役していた。15年後にようやく釈放されることとなり、リアリティ番組がその模様を撮影していたところ、カメラの目の前で思いがけない事件が起こる。

 

  1. 2. THE FOUR WINDS    Stay

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 3. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 4. KLARA AND THE SUN    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

世界同時発売されたノーベル文学賞受賞作家の最新長篇。人工知能を搭載し、人間の子供の親友になるために作られたロボットである「人工親友」のクララは、ジョジーという病弱な少女と出会い、友情を育んでいく。邦題は『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房より刊行。

 

  1. 5. DARK SKY    Down

C.J. Box  C・J・ボックス

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズの第21作。シリコンバレーのCEOのエルク狩りに同行することになったピケット。森を進むうちにCEOへの復讐をもくろむ何者かに追跡されていることがわかり、武器や通信手段を失いながらも、機転と知識を駆使して立ち向かう。

 

  1. 6. 2034    New!

Elliot Ackerman and James Stavridis エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス

2034年、南シナ海の南沙諸島付近を航行中のアメリカ海軍艦船が中国海軍によって沈没させられ、同日にアメリカ海兵隊の戦闘機がホルムズ海峡でイランに捕獲される。そこからインドやロシアをも巻きこんで事態はエスカレートの一途をたどる――元米海兵隊特殊部隊のアッカーマンと元米海軍大将のスタヴリディスがリアリティたっぷりに描く、来るべき次の世界大戦へのシナリオ。

 

  1. 7. FAST ICE    New!

Clive Cussler and Graham Brown クライブ・カッスラー、グラハム・ブラウン

NUMAファイル・シリーズの第18作。旧知の研究者から南極で発見した謎の水藻について知らされたカート・オースチン率いるNUMA(国立海中海洋機関)の面々は、南極へ向かう。そこで明らかになったのは、海水を急速に凍らせることのできる水藻と、その力を利用して氷河期の再到来をもくろむ悪の勢力の存在だった。

 

  1. 8. THE AFFAIR    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

インテリアデザイナーのナディアは、ベストセラー作家の夫ニコラスが浮気していることを知る。相手はハリウッドの若手女優で、ニコラスの子供を身ごもっているらしい。ナディアの三人の姉妹は家族の力になろうとして善意から口を出すが、それぞれの結婚に対する考え方は大きく異なっていた。

 

  1. 9. WE BEGIN AT THE END    Up

Chris Whitaker クリス・ウィタカー

カリフォルニア州の海辺の町で暮らす13歳のダッチェスは、精神的に不安定な母親スターにかわって5歳の弟の面倒を見ている。30年前、スターの妹を殺したヴィンセントが出所して町へ戻ってくることになったのをきっかけに、ダッチェスの家族を新たな悲劇が襲う。

 

  1. 10. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

【まとめ】

6位と7位に新作が初登場しました。6位は米軍出身のふたりの共著によるスペキュレイティブ・フィクション。元米海軍大将にしてNATO欧州連合軍最高司令官を務めたジェイムズ・スタヴリディスは、『海の地政学 海軍提督が語る歴史と戦略』というノンフィクションの著書が早川書房より邦訳刊行されています。7位は昨年2月に死去したクライブ・カッスラーのNUMAファイル・シリーズの新作。同シリーズは、10作目にあたる『気象兵器の嵐を打ち払え』が昨年3月に扶桑社から出ています。また9位の“WE BEGIN AT THE END”は先週14位で初登場後、2週目でトップテン入りを果たしました。著者クリス・ウィタカーはイギリス人作家で、デビュー作『消えた子供――トールオークスの秘密』(集英社文庫)でCWA新人賞を受賞しています。長編3作目にあたる今作は昨年4月のイギリスでの出版から約1年遅れてアメリカで刊行され、今回のランクインとなりました。

 

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書は『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル/東京創元社)、『アメリカン・プリズン――潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』(シェーン・バウアー/東京創元社)、『ハーフムーン街の殺人』(アレックス・リーヴ/小学館文庫)など。