アメリカのベストセラー・ランキング

4月4日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WIN    New!

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライターの親友としてシリーズでも人気のキャラクター、ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世(通称ウィン)を主人公とする新シリーズ。NYCのペントハウスで殺人事件が起こり、部屋には過去に大富豪のロックウッド家から盗まれたフェルメールの絵と、ウィンのイニシャルが記されたスーツケースが残されていた。それは、おじが殺害され、従妹パトリシアが誘拐され5か月ものあいだ監禁された20年前の未解決事件とのつながりを示すものだった。

 

  1. 2. THE FOUR WINDS    Stay

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 3. LIFE AFTER DEATH    Down

Sister Souljah シスター・ソウルジャ

1999年に刊行されてベストセラーとなった“THE COLDEST WINTER EVER”の続編。麻薬密売組織のボスの娘であるウィンターは、みずからの欲望のままに生きた結果、逮捕されて服役していた。15年後にようやく釈放されることとなり、リアリティ番組がその模様を撮影していたところ、カメラの目の前で思いがけない事件が起こる。

 

  1. 4. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 5. KLARA AND THE SUN    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

世界同時発売されたノーベル文学賞受賞作家の最新長篇。人工知能を搭載し、人間の子供の親友になるために作られたロボットである「人工親友」のクララは、ジョジーという病弱な少女と出会い、友情を育んでいく。邦題は『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房より刊行。

 

  1. 6. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 7. DARK SKY    Down

C.J. Box  C・J・ボックス

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズの第21作。シリコンバレーのCEOのエルク狩りに同行することになったピケット。森を進むうちにCEOへの復讐をもくろむ何者かに追跡されていることがわかり、武器や通信手段を失いながらも、機転と知識を駆使して立ち向かう。

 

  1. 8. WE BEGIN AT THE END    Up

Chris Whitaker クリス・ウィタカー

カリフォルニア州の海辺の町で暮らす13歳のダッチェスは、精神的に不安定な母親スターにかわって5歳の弟の面倒を見ている。30年前、スターの妹を殺したヴィンセントが出所して町へ戻ってくることになったのをきっかけに、ダッチェスの家族を新たな悲劇が襲う。

 

  1. 9. WILD SIGN    New!

Patricia Briggs パトリシア・ブリッグズ

元人間の人狼アナと、人狼のリーダーであるチャーリーを主人公とするパラノーマル・ファンタジー、アルファ&オメガ・シリーズ第6作。カリフォルニア州北部山岳地帯の小さな町の住人たちが、忽然と姿を消した。アナとチャーリーはその理由を探る。

 

  1. 10. THE VANISHING HALF    Up

Brit Bennett ブリット・ベネット

1960年代、肌の色の薄い黒人だけが住むルイジアナ州の小さな町を16歳で飛びだした双子の姉妹デジレとステラ。デジレはより肌の色の濃い夫との間に生まれた娘を連れて故郷の町へ戻るが、一方のステラは「白人」として生きることを選び、ブロンドに青い目の娘を産む――双子の姉妹とその娘たち、ふたつの世代の目を通じて黒人にとっての肌の色とアイデンティティの問題を描く。

 

 

【まとめ】

今週は1位と9位に新作がランクイン。初登場首位のハーラン・コーベンの邦訳は、2020年12月に『ランナウェイ』(小学館)が刊行されています。また、Netflixではオリジナルドラマ『ザ・ストレンジャー』(原作は“THE STRANGER”、2015年)、ポーランド製作の『その森に』(“THE WOODS”、2007年)が昨年配信されており、今後も数々の作品を製作・配信予定だそうです。9位は、同様に人狼が活躍する人気作品マーシー・トンプソン・シリーズのスピンオフ。元のシリーズは1作目の『裏切りの月に抱かれて』(早川書房)のみ邦訳が出ています。

 

 

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK 答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。