アメリカのベストセラー・ランキング

4月18日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE HILL WE CLIMB    New!

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

 

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 2. THE FOUR WINDS    Down

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 3. THE RED BOOK    New!

James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス

ビリー・ハーニー刑事の活躍を描くシリーズの2作目。シカゴ市の西側で、走行中の車から人が撃たれるという事件が起きるが、ビリーはいちはやく解決へと導く。しかし彼の本能は、被害者はほかにもいると告げていた。シカゴ市の内部に巣食う悪について調べるうち、ビリーは自身が撃たれた過去の事件へと引きもどされることになる。

 

  1. 4. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 5. KLARA AND THE SUN    Up

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

世界同時発売されたノーベル文学賞受賞作家の最新長篇。人工知能を搭載し、人間の子供の親友になるために作られたロボットである「人工親友」のクララは、ジョジーという病弱な少女と出会い、友情を育んでいく。邦題は『クララとお日さま』、土屋政雄訳、早川書房より刊行。

 

  1. 6. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 7. WIN    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

マイロン・ボライターの親友としてシリーズでも人気のキャラクター、ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世(通称ウィン)を主人公とする新シリーズ。NYCのペントハウスで殺人事件が起こり、部屋には過去に大富豪のロックウッド家から盗まれたフェルメールの絵と、ウィンのイニシャルが記されたスーツケースが残されていた。それは、おじが殺害され、従妹パトリシアが誘拐され5か月ものあいだ監禁された20年前の未解決事件とのつながりを示すものだった。

 

  1. 8. LIFE AFTER DEATH    Down

Sister Souljah シスター・ソウルジャ

1999年に刊行されてベストセラーとなった“THE COLDEST WINTER EVER”の続編。麻薬密売組織のボスの娘であるウィンターは、みずからの欲望のままに生きた結果、逮捕されて服役していた。15年後にようやく釈放されることとなり、リアリティ番組がその模様を撮影していたところ、カメラの目の前で思いがけない事件が起こる。

 

  1. 9. THE LOST APOTHECARY    Up

Sarah Penner サラ・ペナー

18世紀のロンドンに秘密の薬局があった。店主は男に暴力を振るわれている女のために毒薬を売っていたが、何者かに殺害されたという。歴史学者のキャロリンはみずからも夫の暴力に苦しめられていたが、200年前のこの殺人事件の謎を解き明かす手がかりを得る。

 

  1. 10. SUNFLOWER SISTERS    New!

Martha Hall Kelly マーサ・ホール・ケリー

南北戦争時のアメリカ。前線では女は厄介者だと思われるなか、献身的に負傷者たちの看護にあたったジョージーナとエライザの姉妹。プランテーションから逃げる機会を得たものの、愛する家族を残していくことに苦悩するジェマ。夫が北軍に、弟が連合軍に入隊した、プランテーションの非情な女主人アン・メイ。時代にほんろうされた女性たちの物語。

 

 

【まとめ】

今週は新作が3作ランクインしました。初登場で1位になったのは、バイデン大統領の就任式で詩を朗読した姿が記憶に新しい、アマンダ・ゴーマンです。最新号の『文学界』に、「わたしたちの登る丘」(鴻巣友季子訳)というタイトルで全文が掲載介されています。3位の“THE RED BOOK”は4年前に出た“THE BLACK BOOK”の続編で、今回もパタースンとエリスの共著です。10位の“SUNFLOWER SISTERS”はホールズの3作目の著作です。1作目の“LILAC GIRLS”、2作目の“LOST ROSES”と同じく、波乱の時代を生きる女性たちの姿を描いています。本コーナーがお休みだった先週、ランキングに4位で初登場していた“ETERNAL”(リサ・スコットライン)は、今週は11位でした。数々のリーガル・スリラーで知られる作者が長年温め続けてきたという初の歴史小説です。

 

 

吉野山早苗(よしのやま さなえ)

翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。