アメリカのベストセラー・ランキング

5月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. SOOLEY    New!

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 2. THE HILL WE CLIMB    Stay

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 3. FINDING ASHLEY    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

ベストセラー作家だったメリッサは、6年前に息子を亡くしたことがきっかけで夫と別れ、筆を折ってニューイングランドの片田舎に引きこもっていた。妹のハッティは姉のそんな様子に心を痛め、立ちなおらせようとある試みをはじめる。それはメリッサが16歳のときに産んで手放した子供を捜し出すことだった。

 

  1. 4. A GAMBLING MAN    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

退役軍人アロイシャス・アーチャー・シリーズの第2作。1949年、カリフォルニアへ向かう途中、ネヴァダ州リノのカジノに立ち寄ったアーチャーは、ハリウッドを目指すダンサーのリバティと知り合う。到着してすぐアーチャーは元FBI捜査官の探偵ダッシュのもとで働きはじめるが、街でたてつづけに殺人事件が起こる。

 

  1. 5. THE FOUR WINDS    Down

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 6. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 7. OCEAN PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第31作。海上に不審な船が現れ、漂流中のダイバーに接近しているという通報を受けて沿岸警備隊が急行したところ、三人の警備隊員が射殺されるという事件が起きる。FBIが捜査に着手したものの難航し、連邦保安官であるルーカスも捜査に加わることになったのだが……。

 

  1. 8. WHEREABOUTS    New!

Jhumpa Lahiri ジュンパ・ラヒリ

ピューリッツァー賞受賞作家が2018年にイタリア語で発表した長編小説の英語版。ローマとおぼしき町に暮らす45歳の独身女性である「わたし」の孤独を描く。すでに邦訳があり、邦題は『わたしのいるところ』、中嶋浩郎訳、新潮社より刊行。

 

 

  1. 9. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Down

V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディー・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために悪魔と取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の命とともに与えられたのは、誰と出会っても相手の記憶から消えてしまうという運命だった。孤独なアディーの人生に変化が訪れるのは300年が経ったころ、彼女を憶えていられる人物が現れたときだった。

 

  1. 10. THRAWN ASCENDANCY: GREATER GOOD    New!

Timothy Zahn ティモシイ・ザーン

『スター・ウォーズ』のスピンオフ小説「スローン」3部作の作者による、新たな「アセンダンシー」3部作の2作目。のちに銀河帝国軍の大提督となるスローンの若き日々を描く。未知領域の星間国家チス・アセンダンシーを勝利に導いたスローンだったが、敵の策略により有力者たちが内部分裂し、一族と国家のどちらを優先するかという決断を迫られる。

 

 

【まとめ】

新作が4つランクインしました。1位は常連のグリシャムですが、珍しくリーガル・サスペンスではなく、バスケットボールで家族を救おうとする若者を描いています。3位も常連のスティール。4位のバルダッチは、本コーナーがお休みだった先週に初登場で1位になりました。邦訳は〈完全記憶探偵〉シリーズが竹書房より刊行されています。8位のラヒリはインド系アメリカ人で、ほとんどの作品を英語で発表していますが、ローマに移住後にエッセイ集の『べつの言葉で』をはじめてイタリア語で発表しています。邦訳はほかに『停電の夜に』、映画化された『その名にちなんで』などがいずれも新潮社より刊行ずみ。10位の「スローン」3部作は2019年に講談社から新訳版が刊行されています。

 

 

青木創(あおき はじめ)

翻訳者。訳書にL・チャイルド『葬られた勲章』『ミッドナイト・ライン』、D・ワッツ『偶然の科学』など。