アメリカのベストセラー・ランキング

5月30日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHILE JUSTICE SLEEPS    New!

Stacey Abrams ステイシー・エイブラムズ

終身制であるアメリカ連邦最高裁判事のひとり、ハワード・ウィンが昏睡状態におちいった。法定代理権を有する後見人として指定されていたのは家族でもほかの判事でもなく、優秀な若い助手のエイヴリーだった。ウィン判事が最高裁判断の鍵を握っていた重要な案件をめぐり、エイヴリーは判事が密かにすすめていた調査を引き継ぎ、巧みに隠されていた真実を探っていく。

 

  1. 2. SOOLEY    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 3. 21ST BIRTHDAY    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

21歳の誕生日を控えた娘タラが幼い孫娘とともに失踪した、と旧知の女性から相談を受けた新聞記者のシンディは、親友であるサンフランシスコ市警の刑事リンジーに捜査を頼む。妻はただの気まぐれでいなくなったのだとタラの夫は主張するが……4人の女性が活躍する女性殺人捜査クラブ・シリーズ第21作。

 

  1. 4. THE HILL WE CLIMB    Up

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 5. THAT SUMMER    New!

Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー

フィラデルフィア郊外に美しい家を持ち、事業も順調で、非の打ちどころのない人生を送っているように見えるデイジー。しかし仕事に没頭する夫やティーンエイジャーの娘には相手にされず、友人もおらず、人知れず不満と孤独を感じていた。ある日、ひと文字違いのアドレスの間違いメールを受け取ったことから、精力的で華やかな生活を送るシングル女性ダイアナと親しくなるが、その出会いは単なる偶然ではなかった。

 

  1. 6. PROJECT HAIL MARY    Down

Andy Weir アンディ・ウィアー

宇宙船の中でひとり目覚めたライランド。そばにはふたりの宇宙飛行士の死体があり、自分がなぜここにいるのか記憶もはっきりしない。だが徐々に思い出してきたのは、数十年後にも迫る人類絶滅の危機を救うために送り出されたメンバーのひとりだったこと。はたして、人類最後の希望となったライランドの孤独なミッションのゆくえは――

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 9. A GAMBLING MAN    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

退役軍人アロイシャス・アーチャー・シリーズの第2作。1949年、カリフォルニアへ向かう途中、ネヴァダ州リノのカジノに立ち寄ったアーチャーは、ハリウッドを目指すダンサーのリバティと知り合う。到着してすぐアーチャーは元FBI捜査官の探偵ダッシュのもとで働きはじめるが、街でたてつづけに殺人事件が起こる。

 

  1. 10. THE FOUR WINDS    Down

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

 

【まとめ】

今週は2作品が新たにランクインしました。初登場1位は、連邦最高裁を舞台に政治や医療の問題を絡めたリーガル・スリラーです。著者は先の米大統領選の民主党勝利の立役者と評される黒人女性、ステイシー・エイブラムズ。ジョージア州の政治家・弁護士・実業家として活躍しながら、セレーナ・モントゴメリのペンネームでもフィクションの著作があります。5位のウェイナーはウィメンズ・フィクションの人気作家で、邦訳では『グッド・イン・ベッド』、『イン・ハー・シューズ』などが刊行されています。ベストテン外では、11位にCNNのアンカーをつとめる政治記者ジェイク・タッパーの“THE DEVIL MAY DANCE”、14位に人気ロマンス作家メアリー・アリス・モンローの“THE SUMMER OF LOST AND FOUND”がはいりました。

 

 

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。