アメリカのベストセラー・ランキング

6月6日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. SOOLEY    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 2. THE LAST THING HE TOLD ME    Up

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 3. PROJECT HAIL MARY    Up

Andy Weir アンディ・ウィアー

宇宙船の中でひとり目覚めたライランド。そばにはふたりの宇宙飛行士の死体があり、自分がなぜここにいるのか記憶もはっきりしない。だが徐々に思い出してきたのは、数十年後にも迫る人類絶滅の危機を救うために送り出されたメンバーのひとりだったこと。はたして、人類最後の希望となったライランドの孤独なミッションのゆくえは――

 

  1. 4. WHILE JUSTICE SLEEPS    Down

Stacey Abrams ステイシー・エイブラムズ

終身制であるアメリカ連邦最高裁判事のひとり、ハワード・ウィンが昏睡状態におちいった。法定代理権を有する後見人として指定されていたのは家族でもほかの判事でもなく、優秀な若い助手のエイヴリーだった。ウィン判事が最高裁判断の鍵を握っていた重要な案件をめぐり、エイヴリーは判事が密かにすすめていた調査を引き継ぎ、巧みに隠されていた真実を探っていく。

 

  1. 5. 21ST BIRTHDAY    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

21歳の誕生日を控えた娘タラが幼い孫娘とともに失踪した、と旧知の女性から相談を受けた新聞記者のシンディは、親友であるサンフランシスコ市警の刑事リンジーに捜査を頼む。妻はただの気まぐれでいなくなったのだとタラの夫は主張するが……4人の女性が活躍する女性殺人捜査クラブ・シリーズ第21作。

 

  1. 6. THE HILL WE CLIMB    Down

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. THAT SUMMER    Down

Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー

フィラデルフィア郊外に美しい家を持ち、事業も順調で、非の打ちどころのない人生を送っているように見えるデイジー。しかし仕事に没頭する夫やティーンエイジャーの娘には相手にされず、友人もおらず、人知れず不満と孤独を感じていた。ある日、ひと文字違いのアドレスの間違いメールを受け取ったことから、精力的で華やかな生活を送るシングル女性ダイアナと親しくなるが、その出会いは単なる偶然ではなかった。

 

  1. 9. THE FOUR WINDS    Up

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

  1. 10. A GAMBLING MAN    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

退役軍人アロイシャス・アーチャー・シリーズの第2作。1949年、カリフォルニアへ向かう途中、ネヴァダ州リノのカジノに立ち寄ったアーチャーは、ハリウッドを目指すダンサーのリバティと知り合う。到着してすぐアーチャーは元FBI捜査官の探偵ダッシュのもとで働きはじめるが、街でたてつづけに殺人事件が起こる。

 

 

【まとめ】

今週はトップ10内に初登場の新作はなく、大きな変動はありませんでした。11位以下では、13位にジーン・ハンフ・コレリッツの新作スリラー“THE PLOT”がランクインしています。コレリッツは、ニコール・キッドマン、ヒュー・グラント主演のHBOドラマ『フレイザー家の秘密』原作“YOU SHOULD HAVE KNOWN”の作者で、邦訳作品に『洗脳裁判』(法村里絵訳、角川文庫)があります。また、14位に『プラダを着た悪魔』(佐竹史子訳、早川書房)のローレン・ワイズバーガーの新作“WHERE THE GRASS IS GREEN AND THE GIRLS ARE PRETTY”が登場しています。

 

 

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。