アメリカのベストセラー・ランキング

6月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. GOLDEN GIRL            New!

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダ―ブランド

小説家のビビアンはジョギング中に車に轢き逃げされ、帰らぬ人となる。自分が死んだあとの家族の行く末、小説に書いてしまった若き日の秘密など、心残りの多いビビアンだが、天国の控室から下界へ手出しをすることを3度だけ許される。

 

  1. 2. MALIBU RISING             New!

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。

 

  1. 3. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 4. SOOLEY    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 5. LEGACY    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

エイドリアンは7歳のときにはじめて会った父親に殺されかけるが、すんでのところで母親のリナが現れて難を逃れた。その後、エイドリアンは祖父母の家に預けられ、一方でリナはフィットネスのブランドを起ちあげて巨万の富を得る。10年後、エイドリアンも独自のヨガのワークアウトビデオを作製して成功するが、殺害予告を受け取るようになる。リナは無視するものの、エイドリアンの周囲で次つぎに殺人が起こりはじめる。

 

  1. 6. THE OTHER BLACK GIRL                     New!

Zakiya Dalila Harris ザキヤ・ダリラ・ハリス

出版社の編集助手ネッラは、職場で唯一の黒人女性で、周囲の無自覚な差別に悩まされている。そこへあらたな黒人女性ヘイゼルが採用されてよろこんだのも束の間、ヘイゼルだけがなぜか上司たちに気に入られ、一方ネッラのもとには“さっさと辞めろ”というメモが届く。ヘイゼルのいやがらせ? それとも、もっと途方もないことが起こっている?

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. PROJECT HAIL MARY    Down

Andy Weir アンディ・ウィアー

宇宙船の中でひとり目覚めたライランド。そばにはふたりの宇宙飛行士の死体があり、自分がなぜここにいるのか記憶もはっきりしない。だが徐々に思い出してきたのは、数十年後にも迫る人類絶滅の危機を救うために送り出されたメンバーのひとりだったこと。はたして、人類最後の希望となったライランドの孤独なミッションのゆくえは――

 

  1. 9. THE HILL WE CLIMB    Down

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

今年1月に行われたアメリカ第46代大統領の就任式で、詩を朗読したアマンダ・ゴーマン。史上最年少での抜擢だった。そのときの詩が収められた1冊。オプラ・ウィンフリーが序文を寄せている。

 

  1. 10. WHILE JUSTICE SLEEPS    Down

Stacey Abrams ステイシー・エイブラムズ

終身制であるアメリカ連邦最高裁判事のひとり、ハワード・ウィンが昏睡状態におちいった。法定代理権を有する後見人として指定されていたのは家族でもほかの判事でもなく、優秀な若い助手のエイヴリーだった。ウィン判事が最高裁判断の鍵を握っていた重要な案件をめぐり、エイヴリーは判事が密かにすすめていた調査を引き継ぎ、巧みに隠されていた真実を探っていく。

 

【まとめ】

今週は3作がランクインしました。1位のヒルダ―ブランドはベストセラーランキングの常連でサマー・ノベルの女王と呼ばれ、自宅があるマサチューセッツ州ナンタケット島を舞台にした小説を書きつづけています。2位のリードはスターやセレブリティの人生を描いた作品が有名で、前作のDaisy Jones & The Sixと同じく本作もドラマ化される予定です。6位のハリスはこれがデビュー作ですが、都会のオフィスを舞台に微妙な差別問題へ小気味よく切りこみ、映画〈プラダを着た悪魔〉と〈ゲット・アウト〉を合わせた面白さと評されて注目を集めています。

 

 

唐木田みゆき(からきだ みゆき)

翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』など。