アメリカのベストセラー・ランキング

6月27日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE PRESIDENT’S DAUGHTER    New!

Bill Clinton and James Patterson ビル・クリントン、ジェイムズ・パタースン

海軍特殊部隊員の経歴を持ち、元大統領であるマシュー・キーティングは、何よりも家族を大切にしていた。ところが、キーティングの十代の娘メラニーが何者かに誘拐されてしまう。国家を揺るがす大事件に、キーティングはリーダーとして、軍人として、そして父親として三つの役割を一人で担い、立ち向かっていく。

 

  1. 2. GOLDEN GIRL    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダ―ブランド

小説家のビビアンはジョギング中に車に轢き逃げされ、帰らぬ人となる。自分が死んだあとの家族の行く末、小説に書いてしまった若き日の秘密など、心残りの多いビビアンだが、天国の控室から下界へ手出しをすることを3度だけ許される。

 

  1. 3. MALIBU RISING    Down

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。

 

  1. 4. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 5. SOOLEY    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 6. TOM CLANCY: TARGET ACQUIRED    New!

Don Bentley ドン・ベントレー

トム・クランシー没後、他作家によって書き継がれているジャック・ライアン・ジュニア・シリーズの第8作。ドン・ベントレーは初のシリーズ参加。イスラエルで旧友との待合せに急遽行けなくなった友人ディングの代理として、ジャックは町の市場に立っていた。そして近くにいた母親と幼い息子に手を貸そうとしたとき、何者かに襲撃され、丸腰で子どもの命を守らねばならなくなる。

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. PROJECT HAIL MARY    Stay

Andy Weir アンディ・ウィアー

宇宙船の中でひとり目覚めたライランド。そばにはふたりの宇宙飛行士の死体があり、自分がなぜここにいるのか記憶もはっきりしない。だが徐々に思い出してきたのは、数十年後にも迫る人類絶滅の危機を救うために送り出されたメンバーのひとりだったこと。はたして、人類最後の希望となったライランドの孤独なミッションのゆくえは――

 

  1. 9. LEGACY    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

エイドリアンは7歳のときにはじめて会った父親に殺されかけるが、すんでのところで母親のリナが現れて難を逃れた。その後、エイドリアンは祖父母の家に預けられ、一方でリナはフィットネスのブランドを起ちあげて巨万の富を得る。10年後、エイドリアンも独自のヨガのワークアウトビデオを作製して成功するが、殺害予告を受け取るようになる。リナは無視するものの、エイドリアンの周囲で次つぎに殺人が起こりはじめる。

 

  1. 10. THE FOUR WINDS    Up

Kristin Hanna クリスティン・ハナ

1921年のアメリカ。第一次世界大戦後の新しく楽観的な時代も、女性には結婚という選択肢しかない時代で、エルザ・ウェルコットはよく知らない相手と結婚する。1934年までに大恐慌で世界は一変し、さらに干ばつがエルザの農場を襲う。彼女は愛する土地を守るか、よりよい生活を求めて西に向かうか、苦渋の選択を迫られる。

 

【まとめ】

新たに2作がランクインしました。初登場1位のビル・クリントン、ジェイムズ・パタースンは、話題沸騰となった2018年発表の『The President is Missing』(『大統領失踪』越前敏弥・久野郁子訳、早川書房)が記憶に新しいところですが、今回は別の元大統領を主人公としたスリラー作品となっています。コロナ禍ではありますが、夏休み需要を狙った刊行といったところでしょうか。

6位のドン・ベントレーは米陸軍のヘリコプター操縦士としてアフガニスタンで従軍し、その後FBIの情報部やSWATチームに勤務した経歴を持つ作家です。今回のジャック・ライアン・ジュニア・シリーズの著作のほかに、マット・ドレイク・シリーズという軍事スリラーの長編を二作(未邦訳)発表しています。

10位圏外に目立った動きはありませんでした。

 

関 麻衣子(せき まいこ)

埼玉在住の翻訳者。7月16日に最新訳書『殺人ゲーム』レイチェル・アボット(角川文庫)が発売予定。イギリスのリゾート地を舞台としたサイコ・スリラー作品です。その他の訳書にジョン・ヴァーチャー『白が5なら、黒は3』、ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(いずれも早川書房)など。