アメリカのベストセラー・ランキング

7月4日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE PRESIDENT’S DAUGHTER    Stay

Bill Clinton and James Patterson ビル・クリントン、ジェイムズ・パタースン

海軍特殊部隊員の経歴を持ち、元大統領であるマシュー・キーティングは、何よりも家族を大切にしていた。ところが、キーティングの十代の娘メラニーが何者かに誘拐されてしまう。国家を揺るがす大事件に、キーティングはリーダーとして、軍人として、そして父親として三つの役割を一人で担い、立ち向かっていく。

 

  1. 2. THE MAIDENS    New!

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

心理療法士のマリアナは、姪のゾーイの親友が殺されたと聞き、事件現場であり自身の母校でもあるケンブリッジ大学へ向かう。ゾーイはギリシア悲劇の研究者のエドワード教授を疑っていた。マリアナが事件について調べるうちに、大学でまた女子学生が殺害される。

 

  1. 3. THE LAST THING HE TOLD ME    Up

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 4. SOOLEY    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

南スーダンで生まれ育ったスーリーはバスケットボールに青春を捧げていたが、17歳のとき、アメリカで開催される大会に出場する機会を得る。活躍すればアメリカの大学にスカウトされるかもしれないと意気ごんで渡米するものの、大会中に故郷で内戦が勃発し、父は死に、母や弟たちは難民キャンプでの生活を強いられてしまう。

 

  1. 5. GOLDEN GIRL    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダ―ブランド

小説家のビビアンはジョギング中に車に轢き逃げされ、帰らぬ人となる。自分が死んだあとの家族の行く末、小説に書いてしまった若き日の秘密など、心残りの多いビビアンだが、天国の控室から下界へ手出しをすることを3度だけ許される。

 

  1. 6. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 7. MALIBU RISING    Down

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。

 

  1. 8. PROJECT HAIL MARY    Stay

Andy Weir アンディ・ウィアー

宇宙船の中でひとり目覚めたライランド。そばにはふたりの宇宙飛行士の死体があり、自分がなぜここにいるのか記憶もはっきりしない。だが徐々に思い出してきたのは、数十年後にも迫る人類絶滅の危機を救うために送り出されたメンバーのひとりだったこと。はたして、人類最後の希望となったライランドの孤独なミッションのゆくえは――

 

  1. 9. THE OTHER BLACK GIRL    Up

Zakiya Dalila Harris ザキヤ・ダリラ・ハリス

出版社の編集助手ネッラは、職場で唯一の黒人女性で、周囲の無自覚な差別に悩まされている。そこへあらたな黒人女性ヘイゼルが採用されてよろこんだのも束の間、ヘイゼルだけがなぜか上司たちに気に入られ、一方ネッラのもとには“さっさと辞めろ”というメモが届く。ヘイゼルのいやがらせ? それとも、もっと途方もないことが起こっている?

 

  1. 10. TOM CLANCY: TARGET ACQUIRED    Down

Don Bentley ドン・ベントレー

トム・クランシー没後、他作家によって書き継がれているジャック・ライアン・ジュニア・シリーズの第8作。ドン・ベントレーは初のシリーズ参加。イスラエルで旧友との待合せに急遽行けなくなった友人ディングの代理として、ジャックは町の市場に立っていた。そして近くにいた母親と幼い息子に手を貸そうとしたとき、何者かに襲撃され、丸腰で子どもの命を守らねばならなくなる。

 

 

【まとめ】

新たにランクインしたのは、2位の1作のみでした。著者のアレックス・マイクリーディーズはキプロス生まれの作家で、自身初の小説“THE SIILENT PATIENT”が世界的ベストセラーになり、日本でも2019年に『サイコセラピスト』(坂本あおい訳、早川書房)として刊行されました。“THE MAIDENS”はテレビドラマ化が予定されています。

10位圏外では、12位にネイサン・ハリスの“THE SWEETNESS OF WATER”がはいりました。南北戦争末期のジョージア州、オールドオックスという架空の町を舞台に、奴隷解放宣言によって自由になった兄弟と、ふたりを受け入れ、あるいは拒む町の人々の姿を描いているとのこと。29歳の著者のデビュー作で、オプラズ・ブッククラブをはじめ、大手メディアでとりあげられて話題になっています。

 

 

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

6月2日に訳書、アリー・レナルズ『寒慄【かんりつ】』(早川書房)が発売されました。10年ぶりに再会した元スノーボーダーたちが雪山のホステルに閉じこめられて、不可解な出来事に見舞われます。アスリートの生々しい心理戦も楽しめるミステリ小説です。そのほかの訳書に、ロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ!」』(越前敏弥さんとの共訳)、ローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』など。