アメリカのベストセラー・ランキング
7月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE PAPER PALACE New!
Miranda Cowley Heller ミランダ・カウリー・ヘラー
毎年夏に家族と訪れているケープ・コッドのキャビン〈ペーパー・パレス〉で、五十代のエルは母親の誕生パーティーを抜け出し、幼なじみのジョナスとはじめて関係を結ぶ。複雑な暗い過去を背負い心の闇を隠してきたエルは、愛する子どもたちの父親であり誠実な夫ピーターと初恋の人ジョナスとのあいだで激しく揺れる。
- 2. FALLING New!
T.J. Newman T・J・ニューマン
乗客144名と5名のクルーが搭乗し、ロサンゼルスからニューヨークへ向かう6時間のフライト。その出発30分前、機長の家族が誘拐された。離陸してまもなく、機長のビルは妻の電話番号からのビデオ通話で、妻子が縛られ、体に爆薬が装着されている画像を見せられる。犯人の要求は飛行機を墜落させることだった。
- 3. NINE LIVES New!
Danielle Steel ダニエル・スティール
命知らずの空軍パイロットだった父を事故で亡くし、母からは無謀な男性を選んではいけないと言い聞かせられて成長したマギー。堅実な夫と幸福な人生を歩んできたが、安定した生活は突然終わりを迎えた。マギーは再出発のためヨーロッパへ旅に出て、十代の頃に心惹かれていた無謀な男性――いまや著名なレーシングドライバーとなったポールに、30年ぶりに再会する。
- 4. THE LAST THING HE TOLD ME Down
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 5. MALIBU RISING Down
Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード
1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。
- 6. THE PRESIDENT’S DAUGHTER Down
Bill Clinton and James Patterson ビル・クリントン、ジェイムズ・パタースン
海軍特殊部隊員の経歴を持ち、元大統領であるマシュー・キーティングは、何よりも家族を大切にしていた。ところが、キーティングの十代の娘メラニーが何者かに誘拐されてしまう。国家を揺るがす大事件に、キーティングはリーダーとして、軍人として、そして父親として三つの役割を一人で担い、立ち向かっていく。
- 7. THE MIDNIGHT LIBRARY Down
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
- 8. GOLDEN GIRL Down
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダ―ブランド
小説家のビビアンはジョギング中に車に轢き逃げされ、帰らぬ人となる。自分が死んだあとの家族の行く末、小説に書いてしまった若き日の秘密など、心残りの多いビビアンだが、天国の控室から下界へ手出しをすることを3度だけ許される。
- 9. THE MAIDENS Down
Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ
心理療法士のマリアナは、姪のゾーイの親友が殺されたと聞き、事件現場であり自身の母校でもあるケンブリッジ大学へ向かう。ゾーイはギリシア悲劇の研究者のエドワード教授を疑っていた。マリアナが事件について調べるうちに、大学でまた女子学生が殺害される。
- 10. RAZORBLADE TEARS New!
S.A. Cosby S・A・コスビー
アイクの息子アイザイアと、バディ・リーの息子デリクが殺害された。息子たちはゲイであり、同性婚していた。黒人のアイクと白人のバディ・リーは、ともに前科者であるほかになんの共通点もなかったが、復讐のために手を組み、やがて息子たちへの偏見とわだかまりを解いていく。
【まとめ】
今週は新たに4作品がランクインしました。初登場1位のミランダ・カウリー・ヘラーは、米国のケーブルテレビ局HBOのドラマ部門の責任者をつとめる上級副社長であり、本作品が小説デビュー作です。2位のニューマンは10年のキャリアを持つ元客室乗務員で、デビュー作である本作品は深夜便の機内で業務の合間に執筆したとも。“FALLING”は「高度3万5千フィートの《スピード》」などと評され、出版前から映像化権をめぐる争奪戦が繰りひろげられて、ユニバーサル・ピクチャーズが権利を獲得したようです。10位のコスビーはバージニア州出身の作家。昨年7月出版の“BLACKTOP WASTELAND”はCWAゴールド・ダガー賞やアンソニー賞、レフティ賞など多くの賞にノミネートされており、ハーパーBOOKSより翻訳刊行予定です。
佐藤桂(さとう けい) |
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神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。 |