アメリカのベストセラー・ランキング

8月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE CELLIST    New!

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第21作。パンデミックのさなか、夏のロンドンで、元ロシア新興財閥の一員で反体制メディアを運営する男が毒殺と見られる遺体で見つかった。ガブリエルはその死の真相を探るうち、アメリカの民主主義を揺るがしかねないある企てが進行していることを知る。

 

  1. 2. THE PAPER PALACE    Down

Miranda Cowley Heller ミランダ・カウリー・ヘラー

毎年夏に家族と訪れているケープ・コッドのキャビン〈ペーパー・パレス〉で、五十代のエルは母親の誕生パーティーを抜け出し、幼なじみのジョナスとはじめて関係を結ぶ。複雑な暗い過去を背負い心の闇を隠してきたエルは、愛する子どもたちの父親であり誠実な夫ピーターと初恋の人ジョナスとのあいだで激しく揺れる。

 

  1. 3. THE LAST THING HE TOLD ME    Up

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 4. IT’S BETTER THIS WAY    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

6年前、夫の浮気による家庭の崩壊を食い止めることができず、離婚したジュリア。移り住んだコンドミニアムで隣人たちとの温かな人間関係をはぐくみながら、ひとりの生活を楽しめるようになったころ、同じ離婚経験者のヒースと出会う。たがいによき理解者となり親しくなっていくが、関係を深めるにはそれぞれの過去と向き合わねばならなかった。

 

  1. 5. MALIBU RISING    Stay

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。

 

  1. 6. THE PRESIDENT’S DAUGHTER    Stay

Bill Clinton and James Patterson ビル・クリントン、ジェイムズ・パタースン

海軍特殊部隊員の経歴を持ち、元大統領であるマシュー・キーティングは、何よりも家族を大切にしていた。ところが、キーティングの十代の娘メラニーが何者かに誘拐されてしまう。国家を揺るがす大事件に、キーティングはリーダーとして、軍人として、そして父親として三つの役割を一人で担い、立ち向かっていく。

 

  1. 7. NINE LIVES    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

命知らずの空軍パイロットだった父を事故で亡くし、母からは無謀な男性を選んではいけないと言い聞かせられて成長したマギー。堅実な夫と幸福な人生を歩んできたが、安定した生活は突然終わりを迎えた。マギーは再出発のためヨーロッパへ旅に出て、十代の頃に心惹かれていた無謀な男性――いまや著名なレーシングドライバーとなったポールに、30年ぶりに再会する。

 

  1. 8. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 9. THE PERSONAL LIBRARIAN    Up

Marie Benedict and Victoria Christopher Murray マリー・ベネディクト、ヴィクトリア・クリストファー・マレー

銀行家J・P・モルガンの個人図書館であるモルガン・ライブラリーの司書を務めたベル・ダ・コスタ・グリーン。稀覯本や美術品の目利きとして知られた彼女は、ポルトガル系の白人を自称していたが、じつはアフリカ系の黒人だった――伝記小説の名手ベネディクトが黒人作家マレーとの共著で送る、実在の女性の物語。

 

  1. 10. FALLING    Down

T.J. Newman T・J・ニューマン

乗客144名と5名のクルーが搭乗し、ロサンゼルスからニューヨークへ向かう6時間のフライト。その出発30分前、機長の家族が誘拐された。離陸してまもなく、機長のビルは妻の電話番号からのビデオ通話で、妻子が縛られ、体に爆薬が装着されている画像を見せられる。犯人の要求は飛行機を墜落させることだった。

 

【まとめ】

今週は2作品がランクインしました。1位シルヴァのガブリエル・アロン・シリーズは、毎年夏に刊行され、ベストセラーリストをにぎわせている人気シリーズ。邦訳は、昨年8月2日付の本リストに1位で登場した前作“THE ORDER”が『教皇のスパイ』として3月20日にハーパーコリンズ・ジャパンより刊行されたところです。4位はシーダー・コーヴ・シリーズなどで知られる人気ロマンス作家マッコーマーによる単発作品です。

 

吉井智津(よしい ちづ)

翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。