アメリカのベストセラー・ランキング

8月22日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. BILLY SUMMERS    New!

Stephen King スティーヴン・キング

元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。

 

  1. 2. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 3. WE WERE NEVER HERE    New!

Andrea Bartz アンドレア・バーツ

エミリーは親友のクリステンとともに年に一度の旅行をしていた。最後の夜、クリステンは旅先で知りあった男性に襲われ、身を守ろうとして相手を殺害してしまう。エミリーは愕然とする。ちょうど一年前、似たような事件に巻きこまれたのだ。二度も同じことが起きるとは、にわかに信じがたい。ふたりの抱えている秘密がエミリーを追いつめていく。

 

  1. 4. THE PAPER PALACE    Down

Miranda Cowley Heller ミランダ・カウリー・ヘラー

毎年夏に家族と訪れているケープ・コッドのキャビン〈ペーパー・パレス〉で、五十代のエルは母親の誕生パーティーを抜け出し、幼なじみのジョナスとはじめて関係を結ぶ。複雑な暗い過去を背負い心の闇を隠してきたエルは、愛する子どもたちの父親であり誠実な夫ピーターと初恋の人ジョナスとのあいだで激しく揺れる。

 

  1. 5. BLIND TIGER    New!

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

1920年、禁酒法の時代。帰還兵のサッチャーはカウボーイとしての元の生活を取りもどそうとしていた。そして目指す町へ向かう途中で出会ったローレルに心惹かれる。その後サッチャーは目的地に着いたとたん、女性の失踪事件に関与した容疑で逮捕されてしまい、疑いを晴らすことに手を尽くす。一方ローレルは夫に去られ、やむを得ず酒の密造に手を染めていた。ローレルはその後、保安官となったサッチャーと敵対する立場となってしまう。

 

  1. 6. NOT A HAPPY FAMILY    Down

Shari Lapena  シャリ・ラペナ

資産家のマートン夫妻が成人した子供たちを招いて夕食会を開いた翌朝、夫妻は惨殺死体となって発見された。前夜、冷酷で強圧的な家長マートンが遺産相続の変更を発表し、子供たち全員に衝撃を与えたばかりだった。だれにも犯行の動機と機会があり、しかもだれもが秘密をかかえていて……。

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Stay

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. MALIBU RISING    Down

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

1980年代初期のカリフォルニアのマリブ。伝説的なシンガーを父に持つ4人の兄弟姉妹が、セレブを集めて華麗なパーティーを開く。4人ともサーフィン界の有名人で、世間では羨望の的だったが、パーティーが佳境を迎えるにつれ家族がかかえる暗い確執と秘密がしだいに明らかになる。

 

  1. 9. THE CELLIST    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第21作。パンデミックのさなか、夏のロンドンで、元ロシア新興財閥の一員で反体制メディアを運営する男が毒殺と見られる遺体で見つかった。ガブリエルはその死の真相を探るうち、アメリカの民主主義を揺るがしかねないある企てが進行していることを知る。

 

  1. 10. BLACK ICE    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第20作。ハーヴァスはノルウェイでゴーストを見た。数年まえ、彼が地球の反対側で殺した男だ。なぜ、まだ生きているのか? ノルウェイで何をしているのか? 北極圏を舞台に、ハーヴァスは想像もしなかった限界に挑むことになる。

 

【まとめ】

今週は3作品がランクインしました。初登場1位は殺し屋を主人公としたスティーヴン・キングの新作で、作中作も楽しめると話題になっています。3位のアンドレア・バーツはブルックリン在住のジャーナリスト、編集者兼作家で、これが3作目の著書とのことです。5位のサンドラ・ブラウンの新作は100年前の禁酒法時代が舞台で、これまの著書とは異なった趣の作品となっています。スペイン風邪のパンデミックなど、現代に通ずるものを感じてこの時代を選んだとのことでした。

なお11位以下にもミーガン・アボットの新作など、新たに4作品がランクインしています。

 

 

関 麻衣子(せき まいこ)

埼玉在住の翻訳者。訳書に『殺人ゲーム』レイチェル・アボット(角川文庫)、ジョン・ヴァーチャー『白が5なら、黒は3』、ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(いずれも早川書房)など。