アメリカのベストセラー・ランキング
10月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. APPLES NEVER FALL New!
Liane Moriarty リアーン・モリアーティ
スタンとジョイのデラネイ夫妻は、地元で名を馳せるテニス・スクールを経営していた。4人の子どもたちも、それぞれ順調な人生を送っている。結婚して50年を機に、夫妻はスクールを売って老後の人生を始めることにした。そんなある日、サヴァンナという女性が夫妻の前に現れる。ボーイフレンドと喧嘩をしたといって血を流す彼女を家に招き入れるが、のちにジョイが行方不明になり、サヴァンナの姿も見えなくなる。
- 2. HARLEM SHUFFLE New!
Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド
レイ・カーニーは、高額な家具を扱う正直者のセールスマン。妻のエリザベスとの間に2人目の子どもが生まれる予定で、つつましく暮らしている。しかし、生活は厳しかった。いとこのフレディから、高級ホテルで盗んだものを買い受けるよう頼まれたことをきっかけに、レイは怪しい警察官や地元のギャング、ポルノ製作者など、ハーレムの裏社会の面々と知り合うことになる。
- 3. VINCE FLYNN:ENEMY AT THE GATES New!
Kyle Mills カイル・ミルズ
原作者ヴィンス・フリンの他界後、カイル・ミルズが第14作から書き継いでいる、ミッチ・ラップを主人公にしたシリーズの第20作。CIA長官のケネディが、世界で初めて1兆ドルを超える資産を持ったニコラス・ウォードの情報を集めるスパイがいるという証拠をつかむ。ケネディは諜報員のラップにウォードの警護を依頼するが、あらゆることが混とんとする世界に、ラップもケネディも引きずり込まれていく。
- 4. BEAUTIFUL WORLD, WHERE ARE YOU Down
Sally Rooney サリー・ルーニー
29歳の作家アリスは、小説が売れて有名になるが、静かな生活をもとめて田舎町に移り住む。マッチングアプリで出会ったフェリックスは物流倉庫で働いている。アリスが日々メールを送りあう親友のアイリーンは、ダブリンで働く文芸誌の編集アシスタントで、5歳上の政治アドバイザー、サイモンを追いかけている。4人は若いが、彼らをとりまく世界は……? 世界が注目する新世代作家の長篇第3作。
- 5. BILLY SUMMERS Down
Stephen King スティーヴン・キング
元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。
- 6. THE LAST THING HE TOLD ME Up
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 7. A SLOW FIRE BURNING Down
Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ
ロンドンのハウスボートで若い男性が惨殺された。被害者ダニエルを知る3人の女性――ダニエルと一夜の関係を持ち、ボートを訪れていたローラ、数週間前に事故死したダニエルの母アンジェラの姉妹であるカーラ、そして警察に対し明らかに何かを隠している、近隣のボート住民ミリアム――が、疑惑を向けられる。
- 8. EMPIRE OF THE VAMPIRE New!
Jay Kristoff ジェイ・クリストフ
最後に太陽が昇ってから30年ちかく、不滅の帝国を築こうと、ヴァンパイアは人類との戦いをつづけていた。王国と教会を護ろうと〈シルバーオーダー〉は対抗するが、ヴァンパイアを止めることはできなかった。そしてメンバーのひとり、ガブリエル・デ・レオンだけが残された。
- 9. FORGOTTEN IN DEATH Down
J.D. Robb J.D.ロブ
イヴ&ローク・シリーズの53作目。建設現場の周辺で、警察にもよく知られたホームレスの女性が通りの大型ゴミ容器のなかで遺体となって発見された。その後、べつの建設現場で死後数十年が経過したべつの女性の遺体が発見された。ニューヨーク市警の警部補イヴが現場に呼ばれて行ってみると、そこは夫ロークの所有地だった。
- 10. THE MIDNIGHT LIBRARY Down
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
【まとめ】
今週も新作が多めで、4作がランクインしました。1位のリアーン・モリアーティはオーストラリアの作家ですが、アメリカでも大人気です。『ささやかで大きな嘘』(和邇桃子訳/創元推理文庫)と“NINE PERFECT STRANGERS”(未訳)がテレビドラマ化されました。日本では、2作ともアマゾン・プライムで観ることができます。『死後開封のこと』(和邇桃子訳/創元推理文庫)は、ブレイク・ライブリー主演で映画化されるとの話がありましたが、続報は聞こえてきません。本作も映像化されるか、気になります。2位には、コルソン・ホワイトヘッドの新作がランクインしました。1960年初めのマンハッタンの125丁目を舞台にした、ハーレムへのラブレターとのことです。8位にランクインしたジェイ・クリストフも、オーストラリアの作家。本作は、ボン・オースウィック(Instagramのアカウント)というイラストレーターのイラストも話題の、新シリーズの1作目です。
吉野山早苗(よしのやま さなえ) |
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翻訳者です。おもな訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。 |