アメリカのベストセラー・ランキング
10月17日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE WISH New!
Nicholas Sparks ニコラス・スパークス
マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。
- 2. CLOUD CUCKOO LAND New!
Anthony Doerr アンソニー・ドーア
15世紀のコンスタンティノープル、戦時下を生きる十代のアンナとオミール。現代のアイダホ州の図書館で対峙する、老いたジーノと若きシーモア。そして数十年後の未来における宇宙船で孤独に生きるコンスタンス。3つの時代を生きる5人の登場人物が、1冊の本を軸にしてそれぞれの人生に翻弄される。
- 3. APPLES NEVER FALL Down
Liane Moriarty リアーン・モリアーティ
スタンとジョイのデラネイ夫妻は、地元で名を馳せるテニス・スクールを経営していた。4人の子どもたちも、それぞれ順調な人生を送っている。結婚して50年を機に、夫妻はスクールを売って老後の人生を始めることにした。そんなある日、サヴァンナという女性が夫妻の前に現れる。ボーイフレンドと喧嘩をしたといって血を流す彼女を家に招き入れるが、のちにジョイが行方不明になり、サヴァンナの姿も見えなくなる。
- 4. HARLEM SHUFFLE Down
Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド
レイ・カーニーは、高額な家具を扱う正直者のセールスマン。妻のエリザベスとの間に2人目の子どもが生まれる予定で、つつましく暮らしている。しかし、生活は厳しかった。いとこのフレディから、高級ホテルで盗んだものを買い受けるよう頼まれたことをきっかけに、レイは怪しい警察官や地元のギャング、ポルノ製作者など、ハーレムの裏社会の面々と知り合うことになる。
- 5. THE LAST GRADUATE New!
Naomi Novik ナオミ・ノヴィク
スコロマンス魔法学院シリーズ第2作。主人公ガラドリエルは魔物と戦う学校生活を経て最終学年となり、仲間との絆も深まっていた。しかし卒業に向けて課された恐ろしい試練により、生きてこの学校を出ることすら危ぶまれる状況となる。それでもガラドリエルは運命に屈することに抗い、戦いを挑んでいく。
- 6. THE JAILHOUSE LAWYER Down
James Patterson and Nancy Allen ジェイムズ・パタースン、ナンシー・アレン
シングルマザーの弁護士マーサは、アラバマ州のある町に公選弁護人の職を得る。条件のいい高収入の仕事によろこんだのもつかのま、ひとりの判事が町を支配して堂々と不正をおこなっていることを知る。マーサは判事と対立するも、侮辱罪に問われて拘束されてしまう。表題作のほか、同じく女性が主人公のリーガルサスペンスPower of Attorneyも収録されている。
- 7. BEWILDERMENT Up
Richard Powers リチャード・パワーズ
宇宙生物学者セオの息子ロビンは、自然や動物を愛する夢見がちな少年だが、学校では暴力をふるうなどの問題行動が多く、父親は息子が別の惑星か仮想世界でしか生きられないのではと思い悩む。そんなとき、息子のための行動療法で過激な実験プログラムがあることを知るが、結果がどう出るかはわからなかった。
- 8. THE MAN WHO DIED TWICE New!
Richard Osman リチャード・オスマン
木曜殺人クラブシリーズ、第2作。イギリスの引退者用施設、クーパーズ・チェイスで未解決事件の調査を趣味とする老人グループ、その名も〈木曜殺人クラブ〉。ある日、メンバーのひとりエリザベスの旧友が窃盗の疑いをかけられ、助けを求めにやって来る。そこから一連の殺人事件が始まるのだった。
- 9. BILLY SUMMERS Down
Stephen King スティーヴン・キング
元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。
- 10. THE SANTA SUIT New!
Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ
離婚して新たな人生を始めようと思ったアイヴィは、古い農場を買い取ってそこで暮らしはじめる。そして、かつて住んでいた家族が残していったサンタクロースの衣装のなかに、クリスマスの願いが書かれたメモを見つける。「戦争から父親が帰ってきてほしい」という子どもの願いは叶ったのか。アイヴィはそれを調べようと思いたち、町の人々と関わりはじめる。
【まとめ】
今週も新作が5作品と豊富です。1位のニコラス・スパークスは、2018年後半に本ランキング1位を獲得している”EVERY BREATH”が昨年11月に邦訳出版されています(『きみと息をするたびに』雨沢泰訳/アチーブメント出版)。2位のアンソニー・ドーアはピューリッツァー賞を受賞している『すべての見えない光』(藤井光訳/新潮社)が代表作で、長編小説してはこれが3作目となります。5位のナオミ・ノヴィクはテレメア戦記シリーズを代表とするネビュラ賞受賞歴のあるファンタジー作家で、シリーズ1作目『闇の魔法学校 (死のエデュケーション)』(井上里訳/静山社)が今年8月に邦訳出版されています。8位のリチャード・オスマンも、シリーズ1作目の邦訳が今年9月に刊行されました(『木曜殺人クラブ』羽田詩津子訳/早川書房)。
本連載がお休みの先週も4作品が新たにランクインし、今週6位のパタースン&アレン、7位のパワーズの作品が残っています。
関 麻衣子(せき まいこ) |
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埼玉在住の翻訳者。訳書に『殺人ゲーム』レイチェル・アボット(角川文庫)、ジョン・ヴァーチャー『白が5なら、黒は3』、ヴィクター・メソス『弁護士ダニエル・ローリンズ』(いずれも早川書房)など。 |