アメリカのベストセラー・ランキング

10月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE LINCOLN HIGHWAY    New!

Amor Towles エイモア・トールズ

1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。

 

  1. 2. THE WISH    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。

 

  1. 3. CLOUD CUCKOO LAND    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

15世紀のコンスタンティノープル、戦時下を生きる十代のアンナとオミール。現代のアイダホ州の図書館で対峙する、老いたジーノと若きシーモア。そして数十年後の未来における宇宙船で孤独に生きるコンスタンス。3つの時代を生きる5人の登場人物が、1冊の本を軸にしてそれぞれの人生に翻弄される。

 

  1. 4. CROSSROADS    New!

Jonathan Franzen ジョナサン・フランゼン

1971年、イリノイ州。副牧師のラス・ヒルデブラントは夫を亡くした女性に恋慕して仕事に悩み、妻はトラウマによりセラピーを受け、大学生の長男は軍への入隊を考え、長女は宗教と恋とマリファナとロックにのめりこみ、頭脳明晰な高校生の次男はドラッグに慰めを見いだしている。ヒルデブラント家を描く3部作の第1作。

 

  1. 5. APPLES NEVER FALL    Down

Liane Moriarty リアーン・モリアーティ

スタンとジョイのデラネイ夫妻は、地元で名を馳せるテニス・スクールを経営していた。4人の子どもたちも、それぞれ順調な人生を送っている。結婚して50年を機に、夫妻はスクールを売って老後の人生を始めることにした。そんなある日、サヴァンナという女性が夫妻の前に現れる。ボーイフレンドと喧嘩をしたといって血を流す彼女を家に招き入れるが、のちにジョイが行方不明になり、サヴァンナの姿も見えなくなる。

 

  1. 6. HARLEM SHUFFLE    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

レイ・カーニーは、高額な家具を扱う正直者のセールスマン。妻のエリザベスとの間に2人目の子どもが生まれる予定で、つつましく暮らしている。しかし、生活は厳しかった。いとこのフレディから、高級ホテルで盗んだものを買い受けるよう頼まれたことをきっかけに、レイは怪しい警察官や地元のギャング、ポルノ製作者など、ハーレムの裏社会の面々と知り合うことになる。

 

  1. 7. THE BUTLER    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

ブエノスアイレスで生まれ育ったヨアヒムは、17歳のときにドイツ系の母とともにパリへ移り、8年後イギリスへ渡って執事になる。その後ヨアキムはふたたびパリへもどってオリヴィアという女性と知り合い、みずからの家族の歴史と、長年音信不通だった一卵性双生児の弟の消息を知る。

 

  1. 8. THE LAST THING HE TOLD ME    Up

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 9. BILLY SUMMERS    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。

 

  1. 10. THE JAILHOUSE LAWYER    Down

James Patterson and Nancy Allen ジェイムズ・パタースン、ナンシー・アレン

シングルマザーの弁護士マーサは、アラバマ州のある町に公選弁護人の職を得る。条件のいい高収入の仕事によろこんだのもつかのま、ひとりの判事が町を支配して堂々と不正をおこなっていることを知る。マーサは判事と対立するも、侮辱罪に問われて拘束されてしまう。表題作のほか、同じく女性が主人公のリーガルサスペンスPower of Attorneyも収録されている。

 

【まとめ】

新作が3つはいりました。1位のエイモア・トールズの作品は、4人の少年の10日にわたる旅の物語で、著者の長編3作目。前2作は『モスクワの伯爵』『賢者たちの街』として邦訳されています。4位のジョナサン・フランゼン“CROSSROADS”は、それぞれ岐路に立つヒルデブラント家の人々を描く作品で、“A Key to All Mythologies”と題した3部作になる予定。この1作目だけで600ページ近いボリュームです。なお、本書はジョナサン・フランゼンの長編6作目にあたり、これまでに『ピュリティ』『フリーダム』『コレクションズ』が邦訳されています。7位のダニエル・スティールの作品は、アルゼンチン、パリ、ニューヨーク、ロンドンへ舞台を移して展開されるロマンス小説です。12位にはヘザー・モリスの“THREE SISTERS”がランクインしています。これは『アウシュヴィッツのタトゥー係』シリーズの3作目です。

 

 

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

訳書に、アリー・レナルズ『寒慄【かんりつ】』、ローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』、ロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門 優れた文章を書きたいなら、まずは「愛しきものを殺せ!」』(越前敏弥さんとの共訳)、など。