アメリカのベストセラー・ランキング
11月14日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE JUDGE’S LIST Stay
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――
- 2. BETTER OFF DEAD New!
Lee Child and Andrew Child リー・チャイルド、アンドリュー・チャイルド
リー・チャイルドと弟アンドリューの共同執筆による、ジャック・リーチャー・シリーズ第26作。ジャックはアリゾナ州のメキシコ国境のとある町で、不可解な交通事故から元軍人のFBI女性捜査官ミカエラを救う。ミカエラは危険な悪の組織から双子の弟を救い出そうとしていた。ジャックは組織の謎めいたリーダー、デンドンケルと対決する。
- 3. THE WISH Stay
Nicholas Sparks ニコラス・スパークス
マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。
- 4. THE LINCOLN HIGHWAY Down
Amor Towles エイモア・トールズ
1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。
- 5. STATE OF TERROR Down
Hillary Rodham Clinton and Louise Penny ヒラリー・ロダム・クリントン、ルイーズ・ペニー
政敵だった大統領から指名され、国務長官に就任したエレン・アダムズ。新政権は前政権の外交政策によって失われたアメリカのリーダーシップを取りもどそうとするが、テロ攻撃や敵性国家の核開発疑惑に悩まされる。アダムズはアメリカを衰退させようとする陰謀に立ち向かう。
- 6. CLOUD CUCKOO LAND Down
Anthony Doerr アンソニー・ドーア
15世紀のコンスタンティノープル、戦時下を生きる十代のアンナとオミール。現代のアイダホ州の図書館で対峙する、老いたジーノと若きシーモア。そして数十年後の未来における宇宙船で孤独に生きるコンスタンス。3つの時代を生きる5人の登場人物が、1冊の本を軸にしてそれぞれの人生に翻弄される。
- 7. APPLES NEVER FALL Stay
Liane Moriarty リアーン・モリアーティ
スタンとジョイのデラネイ夫妻は、地元で名を馳せるテニス・スクールを経営していた。4人の子どもたちも、それぞれ順調な人生を送っている。結婚して50年を機に、夫妻はスクールを売って老後の人生を始めることにした。そんなある日、サヴァンナという女性が夫妻の前に現れる。ボーイフレンドと喧嘩をしたといって血を流す彼女を家に招き入れるが、のちにジョイが行方不明になり、サヴァンナの姿も見えなくなる。
- 8. THE LAST THING HE TOLD ME Up
Laura Dave ローラ・デイヴ
結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。
- 9. BILLY SUMMERS Up
Stephen King スティーヴン・キング
元軍人で凄腕のスナイパーである殺し屋ビリー・サマーズは、ターゲットが真の悪人である場合だけに手を下すと決めていた。そしてビリーは現在の仕事を最後に引退しようと考え、ターゲットのいる新たな町へと向かう。そこでビリーは自身の半生を振りかえりながら書き綴っているうちに小説執筆に目覚め、作家のふりをして任務遂行の時機を待つことにする。
- 10. THE MIDNIGHT LIBRARY Up
Matt Haig マット・ヘイグ
仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。
【まとめ】
本コーナーがお休みだった先週に初登場1位を獲得したジョン・グリシャムが、首位を守りました。ジョン・グリシャムの邦訳作品は、『「グレート・ギャツビー」を追え』(村上春樹訳、中央公論新社)の続編である『狙われた楽園』(星野真理訳、中央公論新社)が、2021年9月に刊行されています。今週新たにランクインしたのは、2位のジャック・リーチャー・シリーズ最新作のみでした。ベストテン外では、カレン・キングズベリーの“FORGIVING PARIS”が11位に初登場、先週6位だったデビー・マッコーマーのクリスマスシーズン向け小説“DEAR SANTA”が13位、また先週8位のエリザベス・ストラウト“OH WILLIAM!”が14位にはいっています。ストラウトのこの作品は『私の名前はルーシー・バートン』、『何があってもおかしくない』(ともに小川高義訳、早川書房)につづく物語です。
佐藤桂(さとう けい) |
---|
神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。 |