アメリカのベストセラー・ランキング
12月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE JUDGE’S LIST Up
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――
- 2. MERCY New!
David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ
FBI捜査官アトリー・パインシリーズの第4作。アトリーは30年前に誘拐された双子の姉マーシーの行方を追うなかで、誘拐事件の裏に隠された家族の秘密を突き止め、ついにマーシー生存の手がかりをつかむ。一方マーシーは誘拐犯のもとから脱出後、ひとりで凄惨な環境を生き抜き、ただ者ではない女になっていた。
- 3. THE STRANGER IN THE LIFEBOAT Down
Mitch Albom ミッチ・アルボム
船舶の爆発事故が起き、生存者9名がボートで漂流しながら三日間救助を待っていた。あきらめの雰囲気が漂うなか、波間にひとりの男が浮かんでいる姿が見え、助けだしてボートに乗せることになる。その男はなんと、自分が神であると名乗り、信じる者のみが生きのびられると言うのだった。神の助けを待つ者たちの前に本物の神があらわれたのだろうか、それとも――
- 4. THE WISH Stay
Nicholas Sparks ニコラス・スパークス
マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。
- 5. THE LINCOLN HIGHWAY Up
Amor Towles エイモア・トールズ
1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。
- 6. THE DARK HOURS Down
Michael Connelly マイクル・コナリー
大みそかのカウントダウンで賑わうハリウッド。年明け早々、伝統行事として街中で浮かれ騒ぐ人たちが空に向けて撃った銃弾に当たって死んだと思われる、自動車修理工場のオーナーの死体が見つかる。現場に駆けつけたLA市警のレネーは、彼の死は喧騒のなかで撃たれた銃弾のせいではないと判断、さらに、未解決殺人事件との関連に気づく。
- 7. BETTER OFF DEAD Down
Lee Child and Andrew Child リー・チャイルド、アンドリュー・チャイルド
リー・チャイルドと弟アンドリューの共同執筆による、ジャック・リーチャー・シリーズ第26作。ジャックはアリゾナ州のメキシコ国境のとある町で、不可解な交通事故から元軍人のFBI女性捜査官ミカエラを救う。ミカエラは危険な悪の組織から双子の弟を救い出そうとしていた。ジャックは組織の謎めいたリーダー、デンドンケルと対決する。
- 8. GAME ON Down
Janet Evanovich ジャネット・イヴァノヴィッチ
ステファニー・プラム・シリーズ第28作。元同僚であるディーゼルと再会したステファニーは、偶然にもふたりが同じ指名手配犯、オズワルド・ウェンズデーを追っていることを知る。オズワルドは国際的なハッカーで、テクノロジーに詳しいとは言えないステファニーは自身の経験や捜査の手腕を頼りに犯人を追っていく。
- 9. CLIVE CUSSLER’S THE DEVIL’S SEA New!
Dirk Cussler ダーク・カッスラー
1959年のチベット動乱のさなか、隕石から彫られた至高の仏像が持ち出されて紛失する。NUMA(国立海中海洋機関)のダーク・ピットたちは、それが数十年前にフィリピン海に沈んだ飛行機の中にあるとにらむが、一方中国軍が最新鋭ミサイルの開発に役立てるべく、仏像の素材である隕石を狙っていた。
- 10. CLOUD CUCKOO LAND Up
Anthony Doerr アンソニー・ドーア
15世紀のコンスタンティノープル、戦時下を生きる十代のアンナとオミール。現代のアイダホ州の図書館で対峙する、老いたジーノと若きシーモア。そして数十年後の未来における宇宙船で孤独に生きるコンスタンス。3つの時代を生きる5人の登場人物が、1冊の本を軸にしてそれぞれの人生に翻弄される。
【まとめ】
あらたなランクインは2位と9位の2作品でした。2位のデイヴィッド・バルダッチのアトリー・パインシリーズはおそらく本作で終わりと言われていますが、マーシーという強烈なキャラクターを迎えて新しいストーリーを期待する声もあがっています。バルダッチの最近の邦訳では『完全記憶探偵』『完全記憶探偵エイモス・デッカー ラストマイル』(ともに関麻衣子訳 竹書房)があります。9位のダーク・カッスラーは2020年に亡くなった冒険小説家クライブ・カッスラーの息子で、ダーク・ピットシリーズでは長年にわたって父親の共著者をつとめ、本作はあとを継いで発表した第1作目となります。シリーズ最新の邦訳では『ケルト帝国の秘薬を追え』(中山善之訳 扶桑社)が刊行されています。
唐木田みゆき(からきだ みゆき) |
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翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイシリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』など。今月ルーシー・フォーリーの『ゲストリスト』が刊行されました。ケルトの風が感じられる孤島ミステリです。いずれも早川書房より。 |