アメリカのベストセラー・ランキング

1月30日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. TO PARADISE   New!

Hanya Yanagihara ハニヤ・ヤナギハラ

架空のニューヨークを舞台として、19、20、21世紀のそれぞれの世紀末に生きる人々が描かれる。ゲイ同士の結婚が一般的である一方、だれもが地上の楽園を願いながら疫病が蔓延し、社会では全体主義が横行していく。

 

  1. 2. THE MAID    Up

Nita Prose ニータ・プロウズ

他者とのコミュニケーションが苦手なモリーは、ずっと支えてくれた祖母が亡くなると、高級ホテルのメイドとして働くことになる。きれい好きで礼儀正しい彼女には、うってつけの仕事だ。しかしある日、評判の悪い富豪の客ブラック氏が、滞在中のスイートで死体で発見される。警察はモリーに疑いの目を向けるが、彼女は友人たちとともに真犯人を突き止めようとする。

 

  1. 3. SOMETHING TO HIDE   New!

Elizabeth George エリザベス・ジョージ

スコットランドヤードのリンリー警部とハヴァーズ巡査部長のコンビが活躍するシリーズの第21作。ある女性刑事が昏睡状態ののちに生命維持装置をはずされるが、検死解剖の結果、昏睡は襲撃によるものだと判明する。彼女はノース・ロンドンのナイジェリア人コミュニティー内で特殊任務についていた。事件解明にあたるリンリーはまったくなじみのない文化圏で犯人を追うことになる。

 

  1. 4. THE HORSEWOMAN   New!

James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ

マギーとベッキーの母娘はともに馬術競技の優勝者だが、同じ競技では互いに戦わないと誓い合っていた。しかし、パリ・オリンピックが近づくにつれ、世界一の女性騎手の座をめぐってすべてが劇的に変化し、緊張が高まっていく。

 

  1. 5. THE LINCOLN HIGHWAY    Down

Amor Towles エイモア・トールズ

1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。

 

  1. 6. THE LAST THING HE TOLD ME    Down

Laura Dave ローラ・デイヴ

結婚して1年の夫が失踪し、「娘を頼む」というメモとともに、夫の連れ子である16歳のベイリーと残されたハナ。ベイリーのロッカーから多額の現金が見つかると同時に、夫の会社にFBIの捜査が入ったことがわかる。ハナは夫が本当に会社で不正に手を染めていたのか調べようとするが、その過程で折り合いの悪かったベイリーとの関係も変化してゆく。

 

  1. 7. THE MIDNIGHT LIBRARY    Down

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 8. THE JUDGE’S LIST    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――

 

  1. 9. A FLICKER IN THE DARK   New!

 Stacy Willingham ステイシー・ウィリングハム

クロエは12歳のとき、父親が連続少女誘拐殺人の罪に問われたせいでつらい少女時代をすごし、精神分析医となった現在も薬やアルコールに頼りがちだ。そんなとき、過去の事件を模倣するかのように少女失踪事件が再発し、しかも少女を最後に目撃したのはクロエだけだった。犯人の正体を暴こうとしながらも過去の悪夢に翻弄され、クロエは自身をも信じられなくなっていく。

 

  1. 10. WISH YOU WERE HERE    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

29歳のダイアナは仕事も恋も順調で、恋人とガラパゴス諸島へ行く予定を立てていた。ところが未知のウイルスが流行の兆しを見せ、外科研修医である恋人は直前に出発を見送り、ダイアナひとりで旅に出ることに。到着した直後パンデミックにより国境が封鎖され、ダイアナはガラパゴス諸島に閉じこめられてしまう。

 

 

【まとめ】

今週は4作品がランクインしました。1位のハニヤ・ヤナギハラは日系と韓国系の両親を持つアメリカ人で、デビュー作The People in the Trees が『森の人々』(山田美明訳 2016年)として邦訳され、次作のA Little Life (2015)はブッカー賞の最終候補作に選ばれています。3位のエリザベス・ジョージのリンリー警部シリーズは、第8作の『消された子供』(天野淑子訳 1999年)まで邦訳されていますが、本シリーズはBBC制作でドラマ化され、日本ではAXNミステリーで放映されました。4位のパタースンは今回馬術競技の世界を取りあげていて、共著者のルピカはスポーツジャーナリスト出身の作家で、故ロバート・B・パーカーのシリーズを書き継いでいるひとりでもあります。9位のステイシー・ウィリングハムはコピーライター出身の作家で、この心理サスペンスがデビュー作です。

 

唐木田みゆき(からきだみゆき)

翻訳者です。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイシリーズ『森の捕食者』、『街の狩人』、サマンサ・ダウニングの『殺人記念日』、ルーシー・フォーリーの『ゲストリスト』など。